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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
全ては二人のために
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第二エピローグ26


「裏ロンドンを代表してご挨拶に参りました。アシュリー=メイザースでございます。今夜は妹の師に拝謁できて恐縮の至り」


「お前が気にすることでも無いな」


 水月はどこまでもマイペース。


 敵わない相手から逃げるのを恥とは思わないが、敵う相手から逃げるのは損気だとも思っている。


 とはいえ面倒事も、嫌う一角ではあるのだが。


「結界は張らないのか?」


 水月が問うた。


「張っていますよ」


 世界の反転は感知していない。


「ということは……」


「ええ。人払いの結界を」


 暗示と結界の複合魔術。


 フィクションではよく見る魔術だが、近代現代魔術に於いては難しいとされている。


 とはいえ魔術の都ロンドン。


 その先兵である裏ロンドンにおける新古典魔術師の集団だ。


 使える人間がいても決して不思議ではない。


「で、裏ロンドンを代表して何の用だ?」


 コキと首を鳴らして水月が問う。


「役先生」


「へぇへ」


「第二魔王として君臨するとあらゆる予知が叫んでおります。事実でしょうか?」


「どうだろうな」


 水月としては自身を演出担当だと思っている。


 宇宙の破滅と再構築。


 要するにその上で演出を変える。


 映像作品に例えるのが順当であろうか。


 ある種の映像作品があるとして、その展開に修正を加えたい場合、映像を巻き戻す必要が生じる。


 では現実世界で映像を巻き戻して映像内の時間が巻き戻って……それは世界の時間が巻き戻ったことになるのか。


 ナインである。


 映像をいくら逆再生しても、それはあくまで映像に対する干渉でしかなく、映像の巻き戻しに世界が付き合う必要はない。


 水月の目的はそれに相似する。


 結果論として世界は滅ぼすが、辻褄を合わせるための手段も用いているため正確には第五魔王に分類されるのだが、


「そっちで勝手に解釈してくれ」


 説得する気はサラサラ無かった。


 元より機嫌を取ったところで、これから起きる事象が変わる訳でも無い……その意味では水月の無精主義も有益に働く。


「役先生……」


 アシュリーの妹……アシュレイが水月を呼ぶ。


 どこか懇願するような悲痛さだ。


「先生が世界を滅ぼすなんて嘘ですよね?」


「そっちで勝手に解釈してくれ」


 口調を同一の物として再度繰り返す。


 アシュリーに対してもアシュレイに対してもコレは変わらない。


「人類の鏖殺が可能だと?」


 これはリザ。


「不可能だ」


 少なくとも殺したくても殺せない人間という奴は何処にでもいる。


 現世に干渉する気が無いから大人しくしているだけであって、不死身にも色んな形があるのだ。


 であれば水月とて人類の鏖殺は出来ると思っていない。


 そもそも不死身の魔術師を人間と捉えるかは議論の余地もあろうが。


「不可能と知って何故?」


「ここがロドスだ。ここで跳べ」


「?」


 リザが眉を寄せた。


 困惑の表情だが、


「蒙昧に現代魔術を説いてもな」


 水月としては別に誠意を持って説得する必要を感じない。


「で?」


 とリザからアシュリーに視線を向け直す。


「この五十人ばっかりの新古典魔術師は何だ?」


「魔王討伐のスペシャリストです」


「勇者が魔王を倒すにしても五十人ではドラマ性が無いが?」


「効率を取っただけなので」


「納得」


 不遜。


 そしてこの間にも五十の精鋭は全く動こうとしない。


 その理由は水月の隣に立っているが、説明してやる義理も無い。


「アースセーフティはどうするんですの?」


「理解は得られたしなぁ」


「えぇ?」


 アシュレイが困惑した。


 まさかアースセーフティが水月の隣に立っているとは認識の埒外だろう。


「先生は人類を滅ぼしてどうしたいんですの?」


「魔王として君臨」


 その気も無いのに言ってのける。


「出来れば穏便に事を済ませたいのですけど」


 アシュリーが言った。


「まぁそうなるよな」


 とは水月の言。


「で、敵対するのか?」


「説得にしましょう」


 暗示にかかっているとは夢にも思っていまい。


「いいんだがな」


 嘆息。


 疲労を覚える。


 新古典魔術師とのやりとりは大体疲れる水月である。


 中華を指して著作権のブラックホールとはよく言うが、こと魔術面においては裏ロンドンがその筆頭だろう。


 付き合う方が馬鹿を見る。


 それを思っても口にしないのは水月もその範疇に入るからだ。


 自分をこきおろすことに疑念は覚えないが、別段テンションを下げることもない。


 そんな感じ。


「えーと」


 とここで黙っていた赫夜。


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