死と不死05
(……で……こうなるのね)
うんざりと吐息をつく水月だった。
お馴染みイクスカレッジの多目的ホールである。
水月はケイオスを睨みつける。
だがケイオスはその挑戦的な双眸に怯みを一切見せずに、水月にブツを手渡す。
それは、
「日本刀……?」
水月が呟いた通り、日本刀だった。
「刃引きはされてるがな」
ケイオスがそう付け加える。
水月は心底不思議そうに言った。
「別に武器なんていらんぞ? お前も知っての通り俺は素手の方が強いんだ」
「そうはいかん。イクスカレッジの此度の切り裂きジャックは日本刀を使う。これは……」
そんなケイオスの言葉を水月が引き継いだ。
「つまり俺に切り裂きジャックの代わりの訓練相手になれってことね……」
「そういうことだ」
然りと頷くケイオス。
「ちなみに状況は?」
「昨夜もまた死体が見つかった。痕跡もまた無し。警察も躍起になっているが、警察の被害者も二人に増えた。正直鮮やかだよ。警察はスリーマンセルで事に当たることに決定した。それで……だ……」
「警察三人で切り裂きジャックを制圧できるか俺で試そうってわけね」
「そういうことだ」
然りと頷くケイオス。
「水月は剣が使えるのですか?」
と、これは真理。
「幼いころから鞍馬の御大から叩き込まれてな……」
「でもそれって魔術と二足のわらじじゃないのですか?」
「魔術がいくら強かろうと駆動させるのに時間がかかる。だから遠近の戦力のバランスを取るためには武術も覚えなきゃいけないって寸法」
「なるほど……」
納得する真理。
そして、
「でも……」
と言葉を続ける。
「三人を相手に勝てるんですか?」
「余裕だな」
淡泊に水月。
「先輩の剣術すごいんだよ真理。三人なんて簡単にあしらうんだから」
とこれはラーラ。
「それは……すごいですね……」
「然り然り」
と真理とラーラは水月を称える。
閑話休題。
「で? 相手の武装は?」
「銃と警棒。銃はペイント弾だが当たれば結構痛いぞ」
「そりゃ音速を超えりゃな」
いささかも気後れしない水月だった。
「でも切り裂きジャックが夜に動くなら視界が悪いだろう? こんな日の高い時間の訓練じゃ想定される現場と違うんじゃないかと……」
「そこは……ほら……貴様には視界を遮る魔術があるだろう?」
「……なるほど」
やはりうんざりとそう言う水月。
ケイオスは、
「ではこれより訓練を開始する!」
そう叫んだ。
同時に水月は刃引きされた日本刀を無構えに構えて、三人の警察官と対峙する。
「頑張ってください水月……!」
「先輩頑張れー」
真理とラーラの応援を背にして、
「はいはい」
と事務的に答える水月。
「「「……っ!」」」
三人の警察官が拳銃を握って気を引き締める。
そして、
「始め!」
ケイオスが訓練の開始を宣言した。
同時に水月が、
「――現世に示現せよ――」
魔力の入力を行ない、
「――木花開耶――」
魔力の演算を行なう。
そして出力。
指数関数的に桜の花びらが発現し、視界を悪くする。
次の瞬間、
「……っ!」
水月が駆け出して、
「「「……っ!」」」
三人の警官が思い思いに銃のトリガーを引く。
しかして……桜吹雪の視界の悪さと水月の心眼と水月の機動力の前には無駄な結末に終わった。
水月は警察三人の真横から桜吹雪をおしのけて現れた。
それに警察が気付いた時にはもう遅かった。
「縮地……」
ポツリと呟いた水月の……神速の前にはどんな反応も無反応と変わらない。
水月は一番近い警察に向かって一瞬で近づき……握った銃を日本刀で弾き……その首筋に日本刀の刃をそっと当てた。
「はい一人目」
それは死の宣言。
「「フリーズ!」」
と、もう二人の警察が銃を水月に向ける。
二人の警察が水月に銃を撃つのと同時に水月はリタイアした警察の体を引っ張って弾丸に対する盾にした。
水月に代わってペイント弾を受けた警察は、
「……っ!」
痛みに表情を歪める。
次の瞬間、水月の姿は警察達の視界から消えた。
「「な……!」」
狼狽える警察の内の一人の背後をとる水月。
そして背中から心臓めがけて寝かせた刃を突き刺す。
無論刃引きされた日本刀であるから実際には制服を少し押したくらいで止まりはしたが。
「これで二人目」
「……っ!」
残り一人の警察は銃を捨てて警棒を握り、水月に襲いかかってきた。
「その判断やよし……だが……」
水月は持った日本刀で警察の振るう警棒を弾いて弾いて弾き返した。
「未熟なのがなぁ……」
ついには水月は警察の振るう警棒を強く弾いて警察の手から取りこぼさせた。
「……まさか!」
「遅い」
水月は最後の警察の首筋に日本刀を当てた。




