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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
全ては二人のために
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第二エピローグ15


 次の日。


「あー……と」


 水月がプライベートジェットの利用を具申し、色々と便宜をはかった。


 一応のところ役一族と浅間一族の金看板は伊達では無い。


 殺人を犯しても免責で済んだりもする。


 水月にしろ赫夜にしろ快楽殺人者というわけでも無いが。


 とりあえずペコペコと恐縮するカウンターにヒラヒラと手を振ってエンジンを暖めて貰うことになった。


 その間は無聊を慰める必要がある。


「さすが赫夜」


 とは水月の言。


 ここに来るまで安全安心を約束していた。


 ちなみに赫夜と合流する前は義経、魔法メジャーの暗殺者、布都忍と立て続けに襲われている。


 そを顧みれば、なるほど無敵である。


「さて……」


 と水月が真理とアンネと赫夜の座っている椅子の近くに腰掛けると、


「…………」


 世界が反転した。


 結界。


 これで都合四度目。


 赫夜の無敵はあくまで赫夜自身への敵対因果を封じる聖術だ。


 仮に水月個人を狙うのならばソレは赫夜の聖術の関知するところでは無い。


 それを、


「無情だ」


 とは思わない水月でもあるのだが。


「ふえー?」


 とアンネ。


「人気者ですね」


 と真理。


「頑張れ」


 と赫夜。


「応援のこと有り難く」


 口をへの字に歪めて水月は返した。


 待っていたのは鬼女。


 ソレに相違ない。


 サラサラの黒髪。


 これは宜しい。


 だが額の角が人外を主張していた。


 爪は殺意にギラギラと光る。


 瞳は流した血に値する朱いソレ。


 来ているのは和服。


 唇には紅をつけている。


 まるで過去の日本美女をコピペして現代に貼り付けたような風体。


 三大大鬼が一角……温羅。


 その娘である姫路だった。


 女子の鬼は日本神秘に則って得も言われぬ美少女であったが、


「あー」


 水月のテンションは駄々下がり。


 日本の魔法界が黙っていないのは承知しているが、


「よりにもよって」


 と十字を切りたい気持ちである。


 鬼女、姫路が言葉を紡ぐ。


「旦那様……」


 軽やかで静謐な声だった。


 静の美を持つ鈴振るソレ。


「うわぁ」


 とは真理。


「誰ー?」


 とアンネ。


「あっはっは」


 と赫夜。


 真理は事情があって知っている。


 赫夜も同様だろう。


 アンネは知らないらしいが、とりあえず脅威では無い。


 それは水月にも云えることだが、


「お前がねぇ」


 やるせないのも事実。


 さくらに、


「生きることを大事にして欲しい」


 と(一字一句正確ではないが)言われたため、自己観測者に甘えず生きることを大事にしている水月であるから余計な力も入る。


 そも、それ故に渡辺椿と戦った際も強制終了に対抗してのけたのだから。


「旦那様。嘘ですよね?」


「何がよ?」


 わかってはいるが問わざるを得ない。


「旦那様が世界を滅ぼそうとするなんて」


「ああ、嘘だ」


 爽やかに嘘をつく水月だった。


 ほとんど呼吸と同義だ。


「誰から聞いたんだ?」


「土御門の一族から」


「まったく風説の流布に値するな」


 うんうんと頷く。


「故に殺せと賜りましたが……」


「お前は俺を殺すのか?」


 これは皮肉と言うには辛すぎる。


 少なくとも姫路が水月をどう想っているかは水月とて把握しているのだから。


「…………」


 姫路の両手の爪が伸びた。


 元よりアークティア。


 この程度はやってのける。


「殺す気か?」


「ええ」


「罪状は?」


「人類掃滅」


「ふむ」


 水月は顎に手を添えて考える。


 嘘が見抜かれていることについては弁解する気も無い。


 であれば姫路との衝突も免れ得ない。


 ではどうするか?


 決まっている。


「殺し返されて文句言うなよ……」


 嘆息しながら水月は言った。


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