死と不死04
そんな水月に視線をやって真理は、
「私……魔術師になります……」
そう宣言した。
「ん。いいこといいこと」
気楽に頷く水月。
「そして水月の隣に立ちます」
「それは同情かい?」
「同情です」
「ふぅん。そ……」
どこまでも淡泊な水月だった。
「私も……!」
とこれはラーラ。
「私も正式な魔術師になって先輩と並び立てる人間になります!」
「頑張れー……」
「ハートが入ってないですよぉ」
「入れる必要もないしな」
やはりどこまでも淡泊な水月だった。
そして、
「うむ。魔術師となる心構え……あっぱれである」
そんな声がコンスタン研究室に朗々と響いた。
「…………」
「…………」
「…………」
三つの沈黙が生まれ、コンスタン研究室の人間三人は声のした方を……研究室の扉へと目をやった。
そこにいたのはブロンドの髪と、挑戦的な瞳と、豊満な胸を持つ美少女だった。
「ケイオス……ローレンツ……」
水月がその美少女の名前を呼ぶ。
「ローレンツ先生……」
ラーラがその美少女の名前を呼ぶ。
「ローレンツ先生……」
真理がその美少女の名前を呼ぶ。
「ふむ。役君にも心許せる友人が出来たということか。けっこうけっこう」
うんうんと頷くケイオスに、
「おい……、まさかそんなことのためにアンデッドたる只野真理の監視対象に俺を選んだのか……?」
「まさか」
ケイオスはくつくつと笑う。
「単に役君なら抑止力足りえるだろうという判断だ。私情は挟まないさ」
「いい迷惑だ」
うんざりと言う水月に、
「私……迷惑ですか……?」
表情をクシャッと歪めて真理。
「いや……」
水月はコーヒーを飲んで、
「別に真理が迷惑ってわけじゃない」
そう言葉を続ける。
「本当ですか?」
「ノーコメントで」
「ふえ……」
泣きそうになる真理に、
「いや……だからさ。別に真理の存在を否定しているわけじゃないんだ。ただお前がアンデッドじゃなけりゃもっと他の付き合い方があったってだけで……」
言い訳を続ける水月だった。
「じゃあ真理のこと……迷惑じゃないんですか?」
問うラーラに、
「迷惑だなんてありえない」
躊躇なく答える水月だった。
「……よかった」
安堵してそう呟く真理。
そして皮肉気にケイオスが言う。
「大変そうだな……役君?」
「別に。慣れっこだ」
水月は肩をすくめてみせる。
「慣れざるをえないってところか」
「まぁそんなところだ」
そう言って水月はコーヒーカップを傾ける。
「ふん……」
と唸ってコンスタン研究室の余っている椅子に座るとケイオスは、
「ラーラ、私にもコーヒーを願う」
ラーラにそう注文する。
「あ、はい」
多少なりとも狼狽えながらラーラはコーヒーを作る。
とは言ってもインスタントコーヒーにお湯を注ぐだけだが。
「ローレンツ先生……どうぞ」
とラーラがコーヒーを差し出す。
「うむ。感謝だ」
ケイオスは頷いてそう謝辞を述べる。
「役君……」
「なんでがしょ?」
「コンスタン教授からは教職に関わるよう言われているんだろう?」
「言われてはいるな」
「貴様の能力をもってすれば当然のことだ」
「否定はしない」
「貴様ならイクスカレッジの教授になれるだろう。しかもカリスマを備えた。お前の研究室を作れば望む生徒であふれるはずだ」
「嫌だよ。無能の教育なんて。俺は子供でいたいんだ」
「その辺りが折り合わないな。コンスタン教授とは」
「コンスタン教授には感謝してるよ。生粋の魔術師である俺を受け入れて、なおかつ生徒としての面目を保ってくれて」
「まぁ魔術師を擁護すればそれだけ研究室の格が上がるからな」
シニカルにそう言ってケイオスはコーヒーカップを傾ける。
「しかし惜しい存在だよ……。核兵器と同義の存在でありながら冷静でいられる魔術師という奴は」
「俺が望んだことじゃないがな」
皮肉って言う水月。
「それで? ただ俺に嫌味を言いにきたのかケイオス」
「ああ、そうだ……。本来の目的を忘れていた」
「訓練には付き合わんぞ」
「よくわかったな。その通りだとも」
「だから付き合わねーって」
そんなコーヒーカップを傾ける水月の襟をつかんでケイオスはズリズリと軽快かつ軽やかに水月の体を引きずった。
「ははは、ここのところ警察が切り裂きジャックの被害にあっているのだ。警察の意識を引き締めるためにも役君には協力してもらうぞ」
「だから嫌だって言ってるだろうが……。はーなーせー!」
無駄な抵抗をする水月に、
「先輩……」
「水月……」
ラーラと真理が哀れな目をむけた。




