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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
全ては二人のために
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第二エピローグ10


 ともあれマジックトリガーが必要とはいえ忍の思考は速さの極地だ。


 集中に時間を割く真理の魔術と同程度の時間で顕現できるのはソコに集約される。


 が、真理も然る者。


 千引之岩でブレンドブレードを防いで反撃のチャンスを待つ。


 四方八方自在に剣を振るう忍に、


「っ!」


 と押され気味の真理ではあるが、「まぁ後れはとらんだろ」が水月の結論だ。


 実際その通りだった。


 こと防御にさえ集中すれば真理は忍に渡り合える。


 ブレンドブレードさえ見切れば後は防御するだけだ。


「問題は」


 と水月。


「時間だな」


 そんな結論。


「――委細承知――」


 暗示。


「――大和――」


 演算。


 そして出力。


 ブースター付きの三角柱と呼べる巨剣が握られる。


 忍の魔剣だ。


 が、やはり大振りだ。


 真理の千引之岩がソレを防ぐ。


「水月と違い私には遠慮無しですね」


「殺しても死なんしな」


 皮肉を言う忍。


 ここで、


「俺も不死身だ」


 とは言わないのが水月でもある。


 らしいと言えばこの上なく。


 ともあれ、


「ふむ」


 水月が見るに拮抗状態だった。


 忍の攻撃と真理の防御。


 上手い具合に重なっているため発展が無い。


 ので、


「一石投じるか」


 水月はそう判断した。


「――迦楼羅焔――」


 思考のリミッターは外していない。


 単なる炎弾。


 一種のファイヤーボール。


 それを忍に撃った。


 大和が切り裂く。


 地面が爆砕する。


 なるほど。


 結界内でしか出来ない所業だ。


 基準世界では強制検閲の対象だろう。


「二人同時か!」


 戦慄する忍。


「そうじゃないとは言っていない」


 ぬけぬけと水月。


 そしてその間に真理が呪文を唱えていた。


「――迦楼羅焔――」


 神鳥を象った灼熱の炎。


 そが大気を翼で打ち風より速く忍に襲いかかる。


「ほう」


 と水月。


 春までの三ヶ月間を真理がどう過ごしたのかは知らないが、「何かしらの益になったのだろう」とは察し得る。


「うっぜえ!」


 大和を振るう忍だったが、その途中で大和が止まる。


 こっそり千引之岩を展開していた真理であった。


「ちぃ!」


 大和のブースターを全開。


 千引之岩を基点にテコの原理で円周上に回避する忍。


 が、


「これでわかったでしょう?」


 真理は言った。


「今のあなたでは水月には勝てませんよ」


 真理相手に苦戦している以上、それは当然の帰結だ。


「ぐ……!」


 忍としてもソレは受け入れがたいが理解も出来るらしい。


「まして私と水月を両方相手取りますか?」


 物事には相性という物があるが、「忍」にとって、「水月と真理」がソレにあたる。


 無論ネガティブな意味で。


「真理は世界が滅んでも良いって言うのか!」


 攻撃が通じない以上感情論に訴えるのは必然だが、


「良いですとも」


 真理は躊躇なく断言した。


 一瞬すら絶句がない。


 世界を滅ぼす魔王……今の水月はそんな存在で、文明どころか人類そのものに反逆してはいても……味方がいないわけではない。


 真理は、そんな存在になりたかった。


「少なくとも自身の損得勘定を捨ててまで世界を滅ぼす水月ではありません」


 真理は決定的に言った。


「だから心の底から信じられるんです」


 恋する乙女の口調で。


「仮に水月が滅ぼした世界があっても、そこに幸福が一切無いわけではない……と」


「兄貴が……」


「過大評価だ」


 水月も憎まれ口を叩いたが、


「だって水月は……実は誰より純情ですし」


 乙女の笑顔でニコリと真理は破顔した。


「どの口が」


 と水月は口をへの字に歪める。


「まぁ確かに水月は不安定です」


「おい」


 ツッコむ水月だったが今更畏れ入る真理でもない。


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