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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
全ては二人のために
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第二エピローグ05


「これ以降は剣で語ろう」


 抜いた日本刀を正眼に構える義経。


 裂帛の武威がプレッシャーの熱風となって水月を叩く。


「くる……!」


 水月がそう思った瞬間、


「――空翔――」


 コマ落としのようにフツリと義経が消えた。


 感知。


 側面。


 水月は縦に振られた斬撃を体を捻ることで避ける。


「真理!」


「何でしょう?」


「鴉天狗の方をよろしく!」


「私がですか?」


 無茶は十全承知しているが、義経相手に意識のトラフィックを集中させねば勝てるものも勝てない。


 であれば鴉天狗の相手は必然真理となる。


「――千引之岩――」


 足場を作って空中へ。


 義経も天翔で後を追う。


「オンマユラキランデイソワカ」


 思考のリミッターを外す。


「――迦楼羅焔――」


 神鳥を象った灼熱を義経目掛けて撃ち出す。


「――空翔――」


 義経は一瞬で水月の目の前に現われた。


「っ!」


 ある種不意を突かれ、避けられた迦楼羅焔の爆発で我に返ると、予備に作っておいた足場へと水月は回避する。


 ちなみに全力の迦楼羅焔は鴉天狗並びに真理をまとめて吹っ飛ばす。


 一応真理の援護のつもりではあったが。


「――七星――」


 義経が早くも奥義を繰り出してきた。


 七星。


 刀の斬撃一つと、幻覚の斬撃六つの、計七つの斬撃を同時に放つ絶技。


 幻覚の斬撃も敵の脳に、「本物の斬撃だ」と誤認させるため、斬られたときの代償は察するにあまりある。


 実質的には七つの斬撃を同時に放つようなものだ。


 対する水月は、


「――千引之岩――」


 と空間隔絶で防ぐ。


 余裕はない。


 むしろギリギリだ。


 前回。


 裏ロンドンで戦った時、義経はエクスカリバー……即ち西洋の剣で戦っていた。


 が、今その聖剣はビレッジワンである鞘に収まり、代わりに日本刀を手にしている。


 ただ得物が変わっただけなのに体感で五割増しの速度上昇を思わされる水月。


 水月も修めているからわかるが京八流は日本刀の技術だ。


 当然、聖剣であろうと両刃の剣では不慣れにもなる。


 そう云う意味では前回はハンデ戦と云えた。


 で、今回に至るというわけだ。


「御大の使者か?」


「然りだよ」


「さいか」


 御大自身に影響がないと言うことは……。


 ふとそんなことを考える。


 結論は簡単だった。


「多分爆笑しているな」


 だいたい正答している。


「――前鬼戦斧――」


 魔術の斬撃。


 躱される。


 代わりに延長線上にいた鴉天狗が数羽斬り殺されたが。


「さてどうしたものかな」


 考えながら千引之岩で足場を作り天を翔る。


 その跳躍たるや、天狗ですら驚くほどで……なお水月の欲するところでもある。その点を加味して、それでも水月は格別を思えない。


「――空翔――」


 一瞬で距離を詰められる。


 水平に振るわれた日本刀をリンボーダンスの要領で躱し、同時に片足を跳ね上げる。


 股間を蹴り上げるつもりだったが、天翔で避けられた。


「――後鬼霊水、秋水――」


 水の斬撃。


「――空翔――」


 義経は背後。


「――七星――」


 絶技が水月を襲う。


 だが背後を警戒して張っていた千引之岩が斬撃を止めた。


 千引之岩を一部解除。


「――迦楼羅焔――」


 灼熱。


 躱せるタイミングでは無かった。


 正に絶妙と言って良い。


 七つの斬撃を発現者の義経ごと纏めて爆砕する。


 ビルすら粉砕する爆発だ。


 個人が耐えられる物ではない。


 エクスカリバー自身は無事だったが義経は一時的に肉体の修復へ終始せねばならなかった。


 無論のこと黙ってみている水月でもない。


 エクスカリバーが義経を修復しているところに手を差し出す。


 唱えたマジックトリガーは最悪のソレ。


「――金剛夜叉――」


 思考のリミッターを外した明王の具現だ。


 迦楼羅焔すら比較対象として軽すぎる熱量が水月から義経目掛けて撃たれた。


 一応撃つに際して義経より上位を取ってはいる。


 なお落下するエクスカリバーが義経というマスターを修復しているのだから高低差は決定的だ。


「お前の元居た場所へと帰れ」


 縮小した太陽の顕現。


 金剛夜叉。


 そは義経をエクスカリバーごと焼き尽くし、地面を貫いて奥深くへと消えていく。


 地中に埋まった金剛夜叉を外に逃がさないために、


「――千引之岩――」


 と蓋をする。


「うわぁ」


 真理はドン引きしていた。


 鴉天狗たちも首魁を失ったことで統率が乱れる。


 後はゆっくり駆逐していくだけだ。


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