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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
冬のある日の唄
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流星ミラクル08


 水月には業がある。


 今でこそ桜を見ながら酒を飲んでいるが、


「行動に移す日も遠くない」


 そんな確信もある。


 解決すべき問題が二つ有った。


 一つは既に解決している。


 問題はもう一つ。


 こちらの折り合いがどうしても付かない。


 水月としての最大級の難問だ。


 別段軽やかに望みを叶えることは出来る状況だ。


 が、


「中途半端さがな」


 と水月は言う。


 基本的に水月にとって世界とは特に気にする事でも無い。


 滅んだところで一向に構わない。


 単に、「生きているなら生きている分だけ有益に」を思考しているだけである。


 それがままならないのも自覚はしているが、


「まぁ一歩だよな」


 酒を飲みながらそう思う。


 それは困惑と呼ばれる感情。


 とても恣意的な一つの解答にして……そのあまりの独善は終に甘美で心地よく、夢魔の如く水月を誘惑する。


 その気……には水月もなっているし、躊躇のブレーキも壊れているが、在る意味で一番の矛盾が彼自身だった。


「水月!」


 そんな彼に、酒に呑まれた真理が言う。


「とりあえず一季節の過ちを犯しましょう!」


「そういうのは好きな奴とやれ」


「水月が好きなんだ!」


 ああぁん?


 そんなメンチを切る真理。


 酒を呑ませればこうなることは分かってはいたが。


「まだまだ修行が足りんな」


「水月が?」


「お前が」


「足りてるもん」


「酒は呑んでも呑まれない」


 少なくとも水月は酒の飲み方を心得ている。


 神酒を飲んで舌を焼く。


 そのほろ苦さが何とも言えない。


「水月は~!」


「何だよ?」


「私をもっと見て!」


「光学的ならな」


「形而上で」


「光は形而下にしかないが?」


「想いを乗せて見て」


「無茶言うな」


「うー!」


 ガルル。


 そう唸るワンコ真理だった。


 特に気にする水月でもないが。


「そんなに葛城先生が良いの?」


「当たり前だ」


 そうらしい。


「死者は生き返らない!」


「まぁなぁ」


 ぼんやりと水月。


 至極道理だ。


 魔術が梵我誤差を含む以上、死者の完全蘇生は夢のまた夢だ。


 もちろんだが方法は無いでも無い。


 魔法メジャーを通して葛城さくらのニューロンマップを提供して貰えば、疑似さくらの肉体にインストールして再現することは出来る。


 水月にする意思がないだけで。


 その上で水月はさくらを想う。


 これはもうレゾンデートルだ。


 水月という装置の理想型。


 あるいは終着点。


 その様に開始する。


 その様に運営する。


 そして、


「その様に正常終了する……か」


 クイと酒を呑む。


 ほろ苦い。


「失恋とは酒の味」


 酒と詩を愛する仙人のように論評する水月だった。


「験なきものを思はずは一杯の濁れる酒を飲むべくあるらし……だな」


「何ソレ?」


「ぐだぐだ悩むより濁り酒の一杯でも飲んで想う方が良いってことだ」


「私のこと?」


「違う」


 即断。


「さくらのことさ」


 クイと酒を飲む。


「おかわり」


「へぇへ」


 水月は真理の盃に酒を注ぐ。


 二人して縁側で桜を見ながら酒盛り。


 ちなみに本家筋の血統は大広間でどんちゃん騒ぎ。


 水月には慣れないため避難したのだが。


「水月!」


「言いたいことは分かるが何だ」


「私を抱きなさい」


「唾棄なら……してもいいが?」


「水月にとって私は唾棄すべきもの?」


「そこまでは言わんが」


「責任取らなくて良いから」


「そんな後味の悪いこと出来るか」


 水月は目を細める。


 即ち疲労だ。


「俺なんかの何が良いんだろうな?」


 ヒロインに対する侮辱の言葉ではあるが水月の本心でもあった。


 あっちょんぶりけ。


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