表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
冬のある日の唄
453/545

サンタが街にやってくる12


 三番目。


 布都忍。


 フツを意味する布都の家系に産まれた古典魔術師……のはずが若気の至りで現代魔術師となった姿。


 水月曰く、


「坊やだからさ」


 とのことだが、あまり生産的な意味合いを持つ言葉でも無い。


 元々水月は忍の兄貴分だったが夏に色々あって関係が瓦解および再構築された。


 日本人らしい黒髪黒眼。


 髪はつやつやしている。


 黒い瞳は切れるように細められている。


 一目見た瞬間は切れ目の美少年だが、そのじつ美少女である。


 あまり胸に栄養が行かないのかペッタンコ。


 元より水月としては忍を性的に見ることはあまり無いが。


 忍の方はそれがコンプレックスである。


 宝塚的男装の麗人。


 習慣的に、


「兄貴」


 と水月を呼び慕っているが、その心中は乙女色。


「兄貴とあんなことやこんなことや……えへへぇ……」


 と妄想することもある。


 あくまで自家発電時の傾向であって、対外的には少年っぽい元気いっぱいな美少女といった趣ではあった。


「さて……どうするか?」


 コレは水月と忍の共通見解。


 どちらともに……おそらく魔術師としては完成に近い二人だ。


 ある種の頂上決戦とも云える。


 殆どノリはカタストロフ。


 であれば一喜一憂もするのだった。


「夏に彗星の如く現れて! 数々の少女たちの憧れの……!」


 マイクパフォーマンスが忍を絶賛する。


 実際に綺麗な顔をしている。


 男子学生もそうだが女子学生まで虜にする美貌の持ち主だ。


「布都先生」


 と、


「布都お姉様」


 が半々と云ったところか。


 忍が好きなのが水月としても。


「それでは両者ようござんすね?」


 司会がそう言って、


「試合開始!」


 と叫んだ。


「――御機嫌だぜ――」


 魔力の入力の呪文。


「――大和――」


 三角柱の巨剣が具現される。


 刀身の背にはブースターが着いており、


「海すら断つ」


 とされる脅威の剣。


 対する水月は、


「――迦楼羅焔――」


 と炎弾を撃った。


「しゃらくせえ!」


 興奮して大和を振るう。


 上から下に。


 迦楼羅焔を斬撃で霧散させて、地面を炸裂させる。


 土埃が上がり地面に亀裂が入る。


 元々が海上都市であるため、地面の一層下が金属で出来ているものの、こと高度な魔術の前には意味をなさない。


 それは水月にも云えることだ。


「射ァッ!」


 さらにブースターを点火して大和を水平に薙ぐ忍。


「――千引之岩――」


 水月は端的に魔術障壁を張った。


「……っ!」


 止まる剣撃。


 これが忍の魔術……ブレンドブレードの弱点である。


「大振りすぎるため障害物を設置する類の魔術に弱い」


 ラーラの大気の固定……アトモスフィアジェイル程度なら超威力で粉砕も出来ようが、水月の千引之岩はそもそも空間を隔絶させる神技。


 空間を伝う現象は悉く封じられる。


 ブレンドブレードとて例外では無い。


「――後鬼霊水――」


 水の弾丸を放つ水月。


 こういうところは優しいと言えるのかもしれなかった。


 元々攻撃に特化した忍である。


 防御に関しては多少お粗末。


 そもそも攻撃ごと粉砕する攻撃を主眼に置いているため、千引之岩さえ無ければ水月とて押しやられている可能性もあった。


 考慮に値しない……たらればの話ではあるが。


「――委細承知――」


 自己暗示。


「――轟天――」


 今度は巨大なドリルを生み出す。


 水の弾丸を粉砕して高速回転するドリルが水月を襲う。


 しかしてやはり、


「――千引之岩――」


 ソによって止められるのだが。


 そして水月が間合いを詰める。


「なにくそ!」


 ブレンドブレードを振るおうとして、千引之岩に阻止される。


 先ほどの水月の呪文は轟天を防ぐ一枚では無く、複数の障壁を空間に適確に配置するソレだった。


 そのことに漸く合点がいった忍のすぐ傍で、


「おやすみ」


 水月は手刀を首筋に撃ち込む。


 結果、やはり誰も水月には勝てなかった。


 とはいえコンスタン研究室の実力の程が目の前で形として見せられ、観客は大いに盛り上がったが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ