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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
冬のある日の唄
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サンタが街にやってくる11


 二番目。


 只野真理。


 心臓に病を持っていた薄幸の美少女だったが、アンデッドになることで死を克服した。


 アンデッド。


 不老不死の体現者。


 そのオルフィレウスエンジンは無尽蔵に魔力を生み出す第一種永久機関だ。


 ことこれは戦闘に於いて有利ともなり不利ともなる。


 ここでは多くを語らないが。


「神乃マリちゃーん!」


 観客の一部が真理に声援を送る。


 神乃マリ。


 只野真理のブログでのハンドルネーム。


 所謂ところのネットアイドル。


 人気は上々。


 実も水月もファンだった。


 にわかだが。


 結果として同宿することになったが、これについては今更。


 茶髪をリボンで括っている日本美少女。


 殆ど教授の不本意な形で研究室に所属することになったが、魔術のセンスそのものはあながち悪くなく、アンデッドのエンジンによって魔力の入力の呪文が要らないというのも強みの一つではある。


 覚えた魔術は水月に沿うが、それ故に強力であることの証明だ。


「さぁてな~」


 水月としても頭の痛い案件ではある。


 コンスタン研究室は魔術が使えなければ入れない。


 そのために魔術を教えたは良いが、


「物覚えが良すぎる」


 これも事実だ。


 もっとも良心には期待できるため、突拍子もないことはしない。


 水月のように、


「面倒な奴は皆殺し」


 だとか、あるいは、


「魔術は人殺しの最上級」


 と魔術に酔っている人間とは一線を画す。


 人間では無いが。


「どうしたもんかね?」


 とは思うが気負いとはまた違う。


 殺しても死なない辺り甘えは生まれるが油断に直結しないのが水月の精神構造でもある。


 殺し殺されに慣れすぎているとも云える。


 司会進行が真理の状況を語り、それから、


「試合開始!」


 と始まりの合図を告げる。


「っ!」


 真理は手を水月に差し出した。


 水月も対称的に。


「――迦楼羅焔――」


 二人が呪文を唱える。


 炎弾と炎弾がぶつかって爆発を呼ぶ。


 閃光。


 衝撃。


 熱波。


 爆音。


 それぞれに規格外の爆発だった。


 その爆発を見ながら水月は次の呪文を考えていると、


「――前鬼戦斧――」


 案外近くから呪文が聞こえてきた。


 二つの迦楼羅焔……二つの熱球……二つの爆発……その中をツッコんできて真理が唱えた呪文……マジックトリガーだ。


 風が圧縮されて大気が局所的に斬撃を生む。


 水月は思考より早く金色夜叉を展開した。


 コンマ単位でオーラが風の斬撃を防ぐ。


 ギリギリだ。


「殺す気か!」


 憤懣やるかたない水月に、


「死なないでしょうに」


 真理も平然としたもの。


 どうやらある程度水月の突拍子の無さにも慣れているらしい。


 一年一緒にいればさもあろうが。


「――前鬼戦斧――」


 今度は水月が放つ。


 真理は……防御をしなかった。


 右腕を肩から持って行かれ、それでも気にせず次の呪文を唱える。


「――前鬼戦斧――」


 風の斬撃第二弾。


 が、金色夜叉に弾かれる。


 爆煙が観衆から真理を隠してはいるが、それも時間の問題。


 水月は、


「――木花開耶――」


 と結界を張る。


 濃密な桜の花吹雪。


 視覚的には問題ない。


 そしてグチャグチャと腫瘍の起こりを高速再生したように真理の右肩から肉が盛り上がると、それは綺麗な肌の右腕を完璧に再現してのける。


 とはいえ既に真理は水月を見失ったのだが。


 千切られて再生した腕でグーパーしていると、


「どっちを見てる?」


 背後から水月の言葉。


「っ!」


 そっちへ振り向くより早く、水月の寸勁が真理を襲った。


 水月の零距離の切り札。


 寸勁の魔術……金波羅華。


 木花開耶で観客の目が無いため出来た必殺だ。


 パァンと音がして真理はコロシアムの壁まで吹っ飛ばされた。


「南無」


 手を合わせる水月だった。


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