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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
生死とは何ぞやと鬼の問う
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死と不死01

 次の日。


「くあ……っ」


 あくびをしたひょうしに目を覚ました水月は、


「あぁ……」


 と大きく息を吸い込んで覚醒した。


 それからここが水月にあてがわれた宿舎の居間のベッドの上であることを認識する。


 その後、時計に目をやる。


 時刻は十二時半。


「…………」


 それからガシガシと後頭部を掻いて、


「何でこんな時間まで寝てたんだ……俺」


 既に太陽は天頂まで上っている。


 ベッドから降りて真っ先に見つけたのは畳まれた布団。


「真理の奴はもう起きてるってことか……」


 そう独りごちつつ水月はもう一度あくびをして、それから、


「喉、渇いたな」


 とやはり独りごちつつ玄関兼キッチンへと向かう。


 閉まっている扉を開け放つと、そこには、


「…………」


「…………あ」


「…………あ」


 全裸の真理とラーラがいた。


 真理は成熟しきった豊満ボディを惜しげもなく晒し、ラーラは真理より若干スマートな裸体のまま真理の胸を揉んでいた。


「…………」


「…………」


「…………」


 沈黙。


「間違えました」


 そう言ってパタンと扉を閉める水月。


「もう一眠りするか……」


 呟く水月を扉で挟んだ反対側では、


「「きゃーっ!」」


 と乙女の悲鳴が響いた。


 閑話休題。


「それで?」


 コタツ机を囲む形で座って、シロップ入りの水出し紅茶を飲みながら水月は問う。


「それで……とは?」


「なんで全裸で絡みあってたの? 百合なの? レズなの?」


「違います! ラーラが私達の宿舎を訪ねてきたので迎え入れたんです。私は寝起きにシャワーを浴びようとして、そしたらラーラが一緒にシャワーを浴びると言いだして……そしてラーラってば私の体のあちこちを触りだして……そこに偶然水月が扉を開けて見てしまっただけなんです!」


 あわあわと言い訳する真理に、


「お見苦しいものを見せてしまいました」


 ラーラが追従する。


「まぁ別に同性愛者を差別するつもりはないが……」


「ちがうんですよ先輩……っ」


「何が?」


「私は敵情視察をしただけです」


「ほう……」


 紅茶を飲む水月。


「だって……先輩は……真理と同棲してるじゃないですか……」


「してるな」


「真理は……可愛いし……日本人だし……胸も大きいし……いい匂いがするし……」


「まぁラーラか真理かで言えば真理だが」


「でしょ?」


「だな。それで?」


「どうやったらそんなに可愛くなれるか子細に観察および考察していた次第で……」


「そのために真理にレズったってのか」


「まぁ誤解を承知で言えば……」


「何故そんなに気にする? お前の想いは断っただろうが。早く見切りをつけて新しい男でも探せば?」


 辛辣な言葉を投げかける水月に、


「水月!」


 真理が憤慨し激昂した。


「どうした?」


「乙女心をもうちょっと察してください! 諦めろと言われて簡単に諦められるなら恋愛はエンターテイメント足りえません!」


「そうだよ。水月先輩のこと……簡単に諦めたりできないよ……」


「なら勝手に想っとけ。それくらいの自由は許してやる」


「だから水月は……!」


 説教しようとした真理を、


「いいの、真理」


 ラーラが制する。


「しかしラーラ……」


「先輩は私のことを思って言ってくれてるの……」


「そんなつもりはないがなぁ……」


 紅茶を飲んでホッと吐息をついて水月。


「先輩はツンデレだから……」


「そうなのですか水月……」


「好きに解釈しろよ。別に何と思おうがお前らの自由だ」


「むぅ……」


 と唸ったのは真理。


「でもね先輩」


「なんだラーラ」


「これで諦めるなんて思わないでくださいね。私は……ラーラ=ヴェルミチェッリは役水月を好きで好きでしょうがないんです」


「さいですか」


 水月はどこまでも淡泊だった。


 それから水月は時計を見る。


 もうすぐ十三時をまたごうとしていた。


「それにしても……」


 水月は紅茶を飲んで言葉を続ける。


「朝から起こされる覚悟をしていたのに、今日は俺の眠るのに任せたんだな……真理」


「午前に出席すべき講義はありませんでしたから」


「じゃ、今日は家でゴロゴロするかぁ」


「駄目です。午後からはトランスセットの講義があります」


「お前一人で行ってこい」


「水月と共にいないと許可が下りないのです!」


「じゃあ家でやれば? それならいいだろ」


「それも一案ではありますが、出るべき講義には出てもらいます」


「既に魔術を使えるのに何の修行をしろと?」


「何にしろ生徒としてイクスカレッジに在籍しているのならば講義に出るのは必然です」


「そんなもんかねぇ?」


「そんなものです」


 きっぱりと頷く真理。

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