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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
冬のある日の唄
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サンタが街にやってくる05


 そんなわけで決闘と相成った。


 ルールは簡単。


 水月に負けを認めさせること。


 殺害はルール違反。


 これは水月にも適応される。


 もっとも水月が相手を殺しても、形而上か形而下かの違いなだけで、かしまし娘のダンスパートナーが諦めることと同義なのであまり意味のあるルールではない。


 そして何より魔術が御法度だった。


 そもそもに於いて水月に挑戦する上で魔術を手放しに使われれば距離を詰めることなく滅ぼされる。


 殺されはしないとしても重傷の類は覚悟する必要がある。


 迦楼羅焔で焼かれる。


 後鬼霊水で打たれる。


 前鬼戦斧で裂かれる。


 仮にそんな事態に陥ればダンスパーティーがどうこうという次元外となるのはある種当然の理屈だ。


 で、


「こうなるわけな」


 水月は広く取られたコロシアムで歓声を浴びながら決闘場に立っていた。


 曰く、


「役先生に勝てばかしまし娘がダンスパーティーの相手になる」


 そんな流言飛語が飛び交った。


 なお、


「魔術禁止」


 の効果も大きいだろう。


 水月に、


「魔術的には勝てない」


 と思うのはカレッジの通念だが、


「物理的に勝てない」


 はまだ証明されていない。


 知っているのはケイオスやケイオスによって水月を訓練に宛がわれた警察官くらいのものである。


 そんなわけで、


「魔術無し」


 かつ、


「武器有り(火器は除く)」


 が決闘のルールだった。


 水月は素手だ。


 元より史実最古の剣術……京八流を仕込まれた存在。


 剣術を極めた末に無刀へと至った剛の者。


 基本的に武術にしろ魔術にしろ、


「人を傷つけ殺す」


 ことに特化した存在である。


 完全に二足のわらじではあるが、子は生まれる家を選べない。


 水月とて不満を持っているわけでも無いが。


 とまれ、降誕祭が始まっているわけでもないのに、円形決闘場は興奮のるつぼだった。


 マイクパフォーマンスが飛び交い、トトカルチョが行なわれ、他人事な観客は声援と罵声を水月に浴びせる。


「勝手にしろよ」


 と言いたい気分だ。


 元より一挙手一投足が注目に値する水月であるため必然ではあったが。


 そんなわけでセルゲームである。


 水月が降誕祭を楽しみにしているカレッジ生を一人一人相手取り消化していく形。


 基本的に一対一だが、疲労や油断を突くという意味では順番的に後になった方が有利でもある。


 参加者は三十人を越えたくらいだ。


 くじ引きで順番が決められ一人目が現れる。


「…………」


 水月は嘆息した。


 あまり良い意味では無い。


 武具や防具の類はルール違反では無い。


 これは水月にも通ずるが、水月自身は、


「別に必要ない」


 と素手で無防備だ。


 対する決闘の一人目は重武装だった。


 フルアーマー。


 そう呼ぶべきか。


 甲冑で身を纏って両手剣を持っている。


「動けるのか?」


 と水月は思案したが、これは別に危機感によるものではない。


 むしろ案じる方向だ。


 魔術および火器は禁止されている。


 そうである以上フルアーマー化は勝つための策としては間違ってはいない。


「相手が水月でなければ」


 と注釈は付くが。


「では始めよう! 降誕祭のパートナーを賭けた決闘! その第一試合!」


 湧く観衆。


「始め!」


 意気高らかと試合開始の合図があった。


 挑戦者が剣を構える。


 水月はレザーコートを纏ってそのまま突っ立っている。


「…………」


「…………」


 ヒュルリと冬の風が二人から体温を奪った。


 水月は厚着をしているためそうでもない。


 もっとも当人としては、


「コタツに籠もりたい」


 も本音ではあるが。


 対する挑戦者は甲冑が冷えてじわじわと寒さを痛感する。


「…………」


「…………」


 二人揃って突っ立ったまま。


「…………!」


 観衆がブーイングを飛ばす。


 気持ちはわかる。


 が、応える義理もない。


 それも水月の必然だ。


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