スノーマジックファンタジー12
「氷の女王……!」
「カレイド先生……!」
ラーラと真理は、驚いたらしい。
モールの喫茶店で、茶をしばきながら、水月たち。
水月は、奢りと云うことで、遠慮無くジャンボパフェを頼んだ。
先ほどの釜揚げうどんの後だが、
「…………」
中々、表情はほころんでいる。
美味しいらしい。
「で、そのカレイド先生が何ゆえ?」
至極当然の質問だろう。
「えーと……」
氷の女王は、しばし言葉を選んだ。
「~ん……」
水月は、はむはむとパフェを食べる。
「役先生に護衛を頼みたいのです」
「護衛?」
ラーラと真理が、首を傾げる。
というのも、炎術師と並び称される氷の女王の言葉だ。
魔力の入力の呪文を聞く限り、銃のトリガーには速度的に負けるだろうが、それでも発現すれば、驚異的な猛威を振るうのは、難しい想像でもなかった。
攻撃魔術という点において、炎術師と互角を演じる以上、氷の女王も、相応の実力有って当然の処である。
「何ゆえ?」
これは忍。
「自分の身くらい守れるだろう」
とは言外に。
「このままじゃクリスタルちゃんが殺されちゃうんです」
「クリスタルちゃん?」
ラーラと真理と忍は、目を見合わせる。
渦中にいる水月だったが、話全てをスルーして、パフェをはむはむ。
時折ホットコーヒーを飲んで口直し。
「クリスタルちゃんって誰です?」
真理のもっともな誰何。
「まぁそうなるよな」
忍にも異論は無い。
「雪の妖精です」
「あー……」
昨夜の事を、思い出す真理だった。
「雪の妖精って云えば……」
「今イクスカレッジに結界張ってる奴?」
「です」
ミルクティーを飲む氷の女王。
「クリスタルって名前なの?」
「はい」
「何故知ってる?」
「恋人ですから」
「「「…………」」」
かしまし娘が、沈黙した。
水月は、一人取り残されている。
話を聞いていないわけではないが、
「聞けば関わってしまうだろうな」
という漠然とした不安もあった。
概ねその通りだが。
「雪の妖精……クリスタルさんがカレイド先生の恋人?」
「はい」
「百合?」
「ですね」
「ふわわぁ」
「…………」
そんな感じ。
「雪の妖精と恋愛……ってことでいいの?」
「はい」
かしまし娘は、興味深げに、根掘り葉掘り。
その間に、水月はジャンボパフェを食べ尽くし、次はコーヒーを飲むのに終始した。
「そのクリスタルが誰に狙われてるって?」
「炎術師です」
「クーパー先生ね」
「猛吹雪の結界……ええと……スノーグラウンドだっけ? そこで凍死……というか凍殺出来ないの?」
「無理です」
茶を飲む。
「クーパー先生は『パウダーフィールド』という魔術領域を構築出来ますので」
「パウダーフィールド?」
「一定領域内を炎の海に変える一種の結界です。ほとんどスノーグラウンドに対するアンチテーゼなのですけど」
「にゃるほど」
かしまし娘は、沈黙した。
水月は、我関せず、とコーヒーを飲んでいた。
「兄貴はどう思う?」
「候補は三つだな」
「?」
「一つ。クーパー先生を殺す」
「別に殺さずとも……」
「一つ。カレイド先生を殺す」
「ああうぅ……」
「一つ。クリスタルを殺す」
「…………」
淡々と、水月は言った。
「好きな候補を選べ」
云われて選べられるのなら、問題は起こらないはずではあるが。




