スノーマジックファンタジー02
次の日の朝食。
「なるほど。結界ですか」
と、ラーラ。
「私は何も感じませんが」
と、真理。
「それで意識共有して、一緒に反転した……と」
と、ラーラ。
「で、流れで添い寝……」
と、真理。
水月は、納豆を練っていた。
眠気に、うつらうつらしながら、ラーラと真理の皮肉を聞き流す。
「いいだろ別に」
忍は不敵だった。
元より「ズルい」と申すのなら……自身より長く、カレッジで傍に居たラーラと真理の方が、ソレに相当する。
「それはまぁ」
「そうですが」
言い含められる二人。
水月は、納豆をもむもむ。
「で、また何に巻き込まれたんです?」
ラーラが問う。
「何で俺が巻き込まれた前提で話すんだよ?」
「違うんですか?」
「…………………」
ラーラは、いっそ無邪気だった。
言葉を失う水月。
過去が未来を保証しないのは自明だが、過去の実績が未来への根拠になるのもまた理ではある。
「ま、今のところシンメトリカルツイントライアングルは何も言ってこないしな」
水月が厄介事に関わる際……その原因の一端は、コレにある。
ラーラや真理で、実証済みだ。
「何だかねぇ……」
精神的に老けている水月であるから、虎の尾は短い。
踏まれれば襲いかかるが、そうでない場合は事なかれ主義とも言える。
それにしては……良く踏まれる尻尾でもあるが。
無念。
「先輩」
「水月」
「んー?」
水月は、納豆をもむもむ。
足は、コタツの温もりで、どうにかこうにか温まっている。
しかし上半身は、胃に温かい物をくべて、熱を発するより他に無い。
そんなわけで、わかめの味噌汁を、ズズズと飲むのだった。
「今度私とも添い寝してください」
「私もです」
「お祈り申し上げます」
目の前の厄介事を、一蹴する。
別段、添い寝に意義が有るわけではないが、こと面倒事は、水月の嫌う人類悪の一つだ。
朝飯を食べ終えると、真理が玉露を淹れた。
コタツでぬくぬくと、お茶を飲む。
「ただコレだけで過ごせるならば冬も悪くは無いんだが……」
は枕詞だ。
続いて、
「どうせ厄介事が云々かんぬん」
という流れになる。
不満ごと玉露を飲むが。
「じゃあ行ってくるぜ」
と、忍は学生鞄(学校指定ではない。念のため)を持って防、寒対策をすると、宿舎を飛び出していった。
講義のためだ。
一応コンスタン研究室に配属している必然、魔術師として畏敬されているらしいが、
「肩がこるな」
と忍は言う。
実際に、実力の程は知られているのだ。
遠慮も要らない身分ではあるが、御山の大将を気取るほど、愉快な感性は持ち合わせていない。
それ自体は希少な資質である。
そんなスタンスに、
「いい子いい子」
と、水月は、頭を撫でて、あやしたこともあった。
「いってら~」
そんな忍を見送って、玉露を飲む。
「じゃあ私たちも行動しますか」
真理が言う。
「え~……」
と水月。
ほとんど夫婦漫才の領域だ。
「寒い日は外に出たくない」
と水月は言う。
もっとも、きっちり反論されて、結局しぶしぶ外行きに着替えさせられるのだが。
一般的な冬装備にレザーコート。
手袋マフラー完備である。
「うん。寒い」
そんな結論。
とはいえ、未だ感知している結界に比べれば、幾らかマシではあろうが。
歩いて講義に向かう。
暖房の効いている講義室で、水月は健やかに寝た。
隣で、ラーラと真理が、講義に臨む。
器用な二人でもあるから、十全に理解もしているのだが。
こと魔術に於いては、一般学生より先んじている三人だ。
というか魔術の講義をしている講師すら、届いていない領域だろう。
実際に、『他校の双璧』として名を馳せている炎術師を、あしらう辺り、ラーラですらが準一流と呼べる。
水月にしてみれば、
「そこまでのことか?」
と言わざるを得ない到達点ではあるが、故にこそ、そこに至っているのも事実。
ブリアレーオの法則。
魔術の軽視。
即ち魔術師であった。




