炎と檻のカーニバル07
とまれ、
「はふはふ」
水月は、雑炊を楽しんでいた。
真理のダシの取り方は完璧であるし、米の固さも丁度良い。
厚揚げ。
ネギ。
根菜。
鶏肉。
それぞれがそれぞれに、ダシとは別のファクターで、味に色を添えている。
「ていうか良かったんですか?」
とはラーラの言。
「何がだ?」
水月は、
「心底わからない」
という。
事実その通りではあるのだが。
「炎術師……」
「はふ」
とラーラ。
「クーパー先生ですよ」
「警察に怒られれば理性的にも為るだろ」
――そういう問題か?
かしまし娘は、そう思うが、水月は別に厭わなかった。
気にすることでもないのだ。
喧嘩を売られたことは数えるほどある。
別段、気にする一件でもない。
水月は、そう思う。
雑炊はふはふ。
「そーだけどー」
ラーラとしては看過出来ぬらしい。
「知らん」
が水月の結論だが。
「とりあえず炎術師については気にすることでもないだろ」
「?」
と忍。
「何ゆえ」
と表情で語っている。
「クーパー先生はイクスカレッジの財産だ」
サクリという。
「特に一現においてはな」
一現。
現代魔術に敷衍する、一種の頭角だ。
「俺の前例もあるし、特に酷いことにはならないってワケさ」
雑炊はふはふ。
「前例?」
首を傾げる忍に、
「あー」
「うー」
ラーラと真理が、苦い顔をした。
元よりイクスカレッジで大暴れしたのは、春のこと。
忍が知らないのは、無理もない。
一応、魔術師にとっての脅威……とも言える事件ではあったが、
「はあ」
と説明を受けて忍。
「特に気にする事でもない」
雑炊を食べながら、そんな感想。
基本的に、古典魔術師と現代魔術師では、ファウルラインにズレがある。
ソレを指摘した形だが、
「む」
「う」
と、ラーラと真理は、納得しなかった。
「が」
と忍。
「ここで金剛夜叉を使えばどうなる?」
と究極的な質問を忍がすると、
「あう……」
「うう……」
口を閉ざさざるを得ない二人だった。
雑炊はふはふ。
「兄貴は最強だから」
根拠のない盲信ではない。
根拠のある盲信だ。
盲目的ではあるが、
「ウォーターカッターを使えば瞬殺出来た」
というのも必然だ。
少なくとも、そこに異論は挟めない。
水月自身、
「その通り」
であるのは十全に認識するところだから。
「結論としてどうなるの?」
とはラーラ。
「反省文書かされる程度では?」
水月が答えた。
「魔術師は何かと得ですね」
真理が苦笑する。
「特に炎術師と氷の女王はな」
「他学の双璧……ですか」
有名と云えば、この上なく有名。
水月。
役先生にも劣らぬ、四方山話の話題である。
そして、その一角が、ぐだぐだを示したのだ。
どうなるかは、
「考えるだけ無駄だよな」
とは水月の言。
雑炊はふはふ。
ダシを味わって、野菜を食べる。
それで温まるのだから、是非もなかった。
料理も、出来次第では『魔術』と成り得る。
その証明でもあるのだ。




