怪物と呼ばれる者よ08
水月は、シャッターを切った。
ブランド服を着こなしている真理を、撮るためだ。
二十枚ほど取った後、真理がパソコンにデータを吸い出す。
ブログに、複数枚、画像をアップして更新。
タイトル。
「にゃは~」
本文。
「ボーイガールの秋服買っちゃった。可愛い割に結構安くて云々かんぬん……」
そんな感じ。
瞬く間に、コメントが寄せられる。
ただ、それだけで、数十万の広告料が得られるのだから、濡れ手に粟だ。
ましてアンデッド。
何時までも若いままでいられる。
永遠を手に入れたアイドルである。
水月はエロゲをしていた。
研究室の生徒部屋。
ラーラの技術によって、常に最新のパソコンが常備されている。
メモリ。
SSD。
素早くエロシーンに辿り着く。
無論一番の要因は、水月の熱情だが。
「エロゲするくらいなら、私としましょうよう」
ラーラが言った。
「兄貴! エロゲするくらいなら、俺を抱いてくれ!」
忍も言った。
「お風呂以外でも、仲良くなりたいな」
椿も言った。
「…………」
真理は、アイドル活動中。
ブログのコメントに対処しながら、カタカタと打鍵する。
水月は、それに茶々を入れるのだった。
エロゲと並行して。
「なら三人で襲おうよ!」
「ふむ」
「一理あるね」
ラーラと忍と椿は、猛禽類の目をしていた。
「先輩!」
「何だ?」
「兄貴!」
「何だ?」
「水月!」
「何だ?」
「「「お覚悟!」」」
「お前らがな……」
水月は、平然と金色夜叉を展開する。
弾き飛ばされる三人。
正に「アホ」としか言いようがなかった。
「何でよう!」
ラーラが吠える。
不満は、泥濘となって、ラーラを浸す。
「ビッチに興味はない」
「でもアクションを起こさないと、リアクションは帰ってこないし」
「一理あるな」
「いいことしよ?」
「風呂でも聞いたな」
水月がそう云うと、
「「「……っ!」」」
かしまし娘が、椿を睨みやる。
「困ったね」
苦笑い。
「水月。それは僕たちだけの秘密じゃ……ないかな?」
「自業自得だ」
「水月?」
真理が、打鍵しながら問う。
「ヤったの?」
「ご想像にお任せする」
無論これは牽制だ。
「ゲイだ」
と思われた方が、かしまし娘を抑えられる。
代わりに、とんでもない十字架を背負うが。
「まさか裏ロンドンでも!」
このラーラの疑問は、杞憂だ。
基本的に、水月は、プライムを邪険にする。
その上で行動しているため、間違いの起こりようはずも無い。
が、ソレを理解してないラーラにとって、プライムはれっきとした恋敵だ。
水月の知ったこっちゃないが。
というより、
「不名誉を超えて侮辱の域にある」
とさえ思う。
面倒くさいので、言わない水月だった。
「でも」
とは真理。
「なんだかんだで、プライムには優しかったですよね?」
「節穴だな」
さっくり。
「兄貴?」
「何だよ」
「ゲイなのか?」
「不名誉だ……」
「僕の事は?」
「路傍の小石」
心底から、水月は言った。
真理だ。
神之真理。
「ウガー!」
「ガルル!」
「キシャー!」
「フシュー!」
それぞれに、威嚇する四人であった。
水月にとっては、十把一絡げだ。
「はぁ……」
嘆息するのも致し方なし……ではあろう。
あくまで、水月の側面で見れば、だが。




