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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
生死とは何ぞやと鬼の問う
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アンデッド07

「はふ、食べた食べた……」


 自らの宿舎に帰るなり、そう呟いて水月は自室のベッドに倒れこんだ。


 ひんやりとした布団が水月の身体からじんわりと熱を奪う。


「もう食べれんなり~」


「何の物まねですか……」


「いや、別にそういう意図はない」


「……お茶でもつくりましょうか」


「ああ、茶葉は……」


 立ち上がるのも面倒くさいとばかりにベッドから指差しだけで指示する水月。


「了解しました」


 端的にそう言ってキッチンに向かう真理。


 真理はやかんに浄水を注いで火にかける。


 それからキッチンの棚から茶葉と急須を見つける。


 ついでに湯呑みも水月の指示した場所から取り出し、お湯が沸くのを待つ。


 お湯が沸くと急須に注いで茶を煎じ出す。


 それから急須と湯呑みを盆に乗せて自室へと持っていき、自室の中央に置いてあるコタツ机に置く。


「水月、お茶が入りましたよ」


「うーん……注いで」


「はいな」


 どこまでもだらけきった水月に、どこか嬉しそうに茶を注ぐ真理。


 そして、


「はい、どうぞ」


 真理は緑茶の注がれた湯呑みをコトリと机に置く。


「うーん、うー……」


 唸りながら水月が起き上がると、ベッドに腰掛けたままで机から湯呑みをとりズズズと茶をすする。


 真理が自分の分の茶を湯呑みに注ぎながら聞いてくる。


「どうでしょう?」


「茶に詳しいわけじゃないからわからんけど、正直な感想を言えば旨い」


 そう言ってズズーと茶をすする。


 真理もまた自分の分の茶をすすって、


「うん、まぁまぁですね」


 そう自己評価した後、思い出したように指を鳴らした。


「?」


 そんな奇行に首を傾げる水月を無視して、真理は引っ越しの時に運び込まれた鞄からデジカメを取り出した。


 電源を入れると、茶をすすっている水月をパシャリと撮る。


「ちょ、撮んな。魂ぬけるだろうが」


「いつの時代の人ですか」


「肖像権とか何とかで訴えんぞ」


「いいじゃないですか。写真くらい」


「写真好きなのか?」


「はい。もう日課です」


 そう言ってさらにパシャリ。


「俺なんか撮って楽しいか?」


「写真に罪はありませんから」


「遠まわしに失礼なこと言ってないか?」


「気のせいですよ」


 真理はさらりと流す。


「…………」


 無言で茶をすすることに専念しだした水月に、真理はデジカメを渡して、それから右手のブイサインを横に九十度倒して右目につけた所謂可愛らしいポーズをして、


「はい、お願いします」


 そんなことを言い出した。


 持ったデジカメを不思議そうに見つめながら、


「何がお願いなんだ? なんだそのキモいポーズは?」


 問う水月。


「キモいって……その……私を撮ってください」


「俺が?」


「水月が」


 何故、とまでは聞かなかった。


 とりあえず、と心の整理をつけて水月はシャッターボタンを押す。


 横ピース(造語)で写真に撮られる真理。


「こんなの撮ってどうすんだ?」


「ブログに乗せるんです。神乃マリ復帰第一号ですね」


 そう言って引っ越しの際に以下略からノートパソコンを取り出す真理。


「水月、ここはネット繋がりますか?」


「ん」


 茶をすすりながら水月は簡潔に頷く。


「では借りますね~」


 可愛らしくそう言って真理はパソコンを立ち上げる。


 コタツ机には二つのノートパソコンが。


 一つは水月が常時乗せているものだ。


 そして新たに真理のノートパソコンが加わった。


 真理はルータにケーブルを繋げると嬉々としてインターネットブラウザを立ち上げる。


 ブログの管理画面に入ると、華麗にキーボードを叩いて日記をつける。


 最後に先ほど水月が撮った写真を載せて終了。


 文面としては「騒動申し訳ありませんでした。回復しましたのでアイドル活動を再開しようと思います。これからも何卒応援よろしくお願いします」と言ったものだったが、そこには絵文字や顔文字やギャル語等々が混ざって先のような丁寧な文章とはとても言えないものだった。


 水月はというと神乃マリのブログにアクセスしてコメント欄にタイピングをしていた。


「死ぬ死ぬ詐欺乙……と」


 そんなことを書く水月。


 それを見咎めた真理が怒る。


「あー、もう! 何やってるんです水月!」


「何って神乃マリブログを追いかけてる身としてはコメントせねばと思って……」


「へ?」


「だからコメントせねばと……」


「その前です……」


「神乃マリブログを追いかける身としては……」


「水月……! 私のファンだったんですか!」


「まぁ……な」


 鼻先を掻きながら水月。


「なんで言ってくれなかったんですか! やだもう! そうだったんだ! ねえねえ、私のどこに惹かれたんです!」


 こいつ、パソコン持ちだしてからキャラ変わったなぁ、などと思いつつ水月は素直に答える。


「まぁ外見だよな。可愛いってのが一個あった」


「ふんふん。えへへー」


 照れてだらしなく真理は笑う。


「で、何の因果か同じ日本人で同じイクスカレッジ生」


「ふんふん」


「まぁ興味本位で追いかけはじめたのが一週間前ってところなんだがな」


「…………」


 そこで真理のテンションが下がったのは仕方のないことだったろう。


「一週間前って……にわかじゃないですか……」


「だってしょうがねえじゃん。一週間前までは俺は初恋の真っ最中だったんだから。たかがネットアイドルに浸ってられる時間がなかったんだよ」


「たかがって……そんなこと言わないでも」


「で、失恋したし、なにかないかなぁと思ったらお前を見つけた次第」


「むー、ということは追っかけてる割に私にゾッコンではないんですね……」


「ゾッコンだったら危ういぞ、二人暮らしなんて」


「私のショーツを使って自慰行為とか……!」


「お前のショーツをネットオークションで捌くとか」


「むむ、そうきますか~」


 唸る真理。


 水月はというと、


「このやろ! 死ぬ死ぬ詐欺に間違いないだろうが。何噛みついてきてんの? 馬鹿なの? 死ぬの?」


 前述のコメントに噛みついてきた顔のない第三者のコメントに噛みつき返していた。

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