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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ブレンドブレードブレイカー
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四鬼襲来12

「とまれ、まずは世話になったな」


「?」


 自覚の無い水月。


「牛若の事じゃ」


「ああ」


 ロンドンで死合った京八流の兄弟子である。


「あれに命を与えてくれて感謝しておる」


「それは俺の功績じゃねえよ」


「聞き及んではおるがな。それでも感謝せずにはいられんのじゃ」


「全てはあいつの人徳という事だろ」


「あれが功に焦って朝敵となった際に助けに行ってやれなかった。小生は師匠失格じゃ」


「それ、あいつには言うなよ」


「もう言うた」


「反応は?」


「頭上にチョップされた」


「その程度で済んで良かったな」


「うむ……まぁ……」


 酒気とは違い形で頬を桜色に染め、クイと月花酒を飲む鞍馬。


「この無間地獄で再会できるとは思わなかった。きさんが一杯くわせたのじゃろ?」


「ま、な」


「どちらを立てれば良いのやら……」


「藍より青が出てから言え」


「とはいえこれであやつもアンデッド……か」


「特に凶暴な方じゃ無いからいいんじゃないか? ある種……理性の効いたアンデッドはへっぽこ魔術師より有用だしな」


「うーむ。しかしあれがエクスカリバーを持てば一般的な方法じゃ滅ぼせんぞ?」


「さすがにそこまでは責任持てんな。喧嘩を売られたら買うが」


「きさんならば容易いじゃろう」


「御大にもな」


「然りじゃ」


 寂しげに笑う。


「ま、この浮世に源義経が記録されたことは結果論だ。これからあいつが何をするかはあいつの徳であって俺には関係ない」


「弟弟子じゃろう」


「師匠が言うか?」


「一々憎たらしいの……」


「おかげさまで」


 飄々と水月は言った。


 月花酒を飲む。


「ネットワークに記録された以上、安らかに眠らせるのは論外だ。愛と徳で迎合させるのが正しい社会の在り方……だろ?」


「ぐうの音も出ぬの」


 とはいえ鞍馬も他に方法を知らないのだが。


「お茶、美味しいですね」


 真理が縁側で使用人にもてなされながらそう云った。


 とりあえず話題を変えたいらしい。


 鞍馬の双眸の光を見て憂えたのは真理本来の優しさの表れだ。


「可愛い嬢ちゃんじゃな。名は?」


「只野真理と申します」


「水月とはどんな関係じゃ?」


「単純にこっちの片想いです」


「そうかそうか」


 ケラケラと鞍馬が笑う。


「ちなみにアンデッドだ」


「ほほう。ビレッジワンかや?」


「チルドレンです」


「アンデッドってー?」


 こんなことを言うのはアンネしかいない。


「第五魔王の置き土産じゃ」


 月花酒を呷りながら鞍馬が面白げに言う。


「第五魔王ー?」


「そげなことも知らんか」


「水月ー?」


「魔王って言うのは一種の称号だ」


「魔族の王様だよねー?」


「まぁファンタジーではそんな感じだな」


「水月も十分ファンタジーだと思うんだけど」


「否定はしない」


 クイと月花酒を飲む。


「ただ近代魔術に於いて魔導師ナツァカが定義した魔王は別の存在だ」


「んー?」


 クネリと首を傾げるアンネ。


 さもあろう。


 気にせず水月は言葉を続けた。


「人類やその文明に禍根を残す……あるいは残すはずだった魔術師に与えられる称号だ。要するに噛み砕けば……」


「世界に喧嘩を売った魔術師の称号じゃよ」


「その通り」


「ははー……」


 玉露を飲んで納得するアンネ。


「要するにテロリストー?」


「そんな感じじゃな」


 あえて訂正はしない。


 この際誤解を正すこともないとの判断だ。


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