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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ブレンドブレードブレイカー
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四鬼襲来09

 朝飯を食べて旅館をチェックアウトした後、水月たちは京都に向かった。


 鞍馬山まで鉄道とタクシー。


 山を登って鞍馬寺に着く。


「やぁ水月くん」


「ども」


 寺の住職と挨拶をする。


「こっちに酒を届けたはずなんだが」


「月花酒だね。保管してあるよ」


 頷いて住職は酒瓶を渡してきた。


「どうも」


 水月は受け取ると真理に渡す。


「何故?」


「お前が持っているのが一番効率いいから」


「?」


 首を傾げる真理だった。


「御本尊にお会いに?」


 問う住職に、


「でなけりゃ手土産なんて用意しねぇよ」


「然りですな」


 カラカラと住職は笑った。


「じゃ、山登りと行きますか」


 水月が道連れにそう云った。


 忍は理解している。


 真理とアンネは理解していない。


 が、説明する気にもならなかった。


 水月としては基本的に自分本位であるためしばしばこういうことがある。


 閑話休題。


 鞍馬山は暗い魔の山とも呼ばれる。


 護法魔王尊。


 鞍馬天狗。


 鬼一法眼。


 呼び名は数あれど、奇っ怪な妖術を使役して京八流という全ての日本剣術の源流を促した剛の者。


 そう認識されている。


 護法魔王尊としては金星からやってきて十六歳の美少年のまま歳を取らない存在とされている。


 一種の不滅の存在。


 それは鞍馬天狗としての天狗道でも似たようなことが言える。


 アークティアではあるが、禁じ手を持たず、桜や紅葉を愛でて、酒をかっくらう。


 基本的に俗物である。


 水月にとっては剣の師匠だが、それもこれも修験道と天狗の関係性から役一族と鞍馬天狗が親しいことに由来する。


 ともあれ、


「ひ、ふぅ」


 一人アンネを放っておき、水月と真理と忍はサクサクと山登り。


 そこに、


「たれぞや?」


 まるで風に吹かれた木々がざわめくように小さな声が聞こえた。


「…………」


 真理とアンネが体を固くする。


「たれぞや?」


「たれぞや?」


「たれぞや?」


 ザワザワと木々の鳴き声に合わせて誰何の声が聞こえてくる。


「お控えなすって。手前生国は日本が山生まれ。姓は役、名は水月と発す」


「何用だ?」


「何用だ?」


「何用だ?」


 ザワザワと姦しく木々の枝葉の鳴りと同調した問答。


「鞍馬の御大に挨拶に来た。目通り願う」


「試すぞ」


「試すぞ」


「試すぞ」


「是非も無し」


 水月がそう云った瞬間、


「っ!」


 水月目掛けて符が飛んだ。


 斬符と呼ばれるソレだ。


 一瞬だけ金色夜叉を展開してソレを弾く。


 同時に山の声の主が現れる。


 天狗だ。


 鴉天狗と呼ばれる黒いカラスの頭部を持つ修験者である。


「カラス?」


 事情を知らない真理とアンネはポカンとする。


 さもあろう。


 鞍馬山は暗い魔の山。


 鴉天狗程度はむしろ必然だ。


 鞍馬天狗は凄まじい神通力を持つ。


 信心深い家に育てば鞍馬天狗の伝承くらいは耳にする。


 その神通力に預かろうとする輩もいるため、篩いをかけるのが修行中である鴉天狗の役目だ。


「いいからかかってこい」


 水月は体を解して挑発する。


「しゃぁ!」


 天狗の一人が襲いかかる。


 背の翼で風を打ち高速で迫る。


 が、


「甘い」


 水月は天狗の独鈷をあっさりと受け流して掌底を放つ。


「ぐぇえ……」


 呼気を逆流させる天狗。


 そこに踵落としを決めて健全に意識を奪う。


「――斬符――」


 金属製の符が飛んでくる。


「――千引之岩――」


 水月は障壁を張った。


 弾かれる斬符。


「――後鬼霊水、秋水――」


 更にウォーターカッター。


 一人の天狗の足を射貫く。


 水の糸は時にダイヤさえ削るほどだ。

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