表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ブレンドブレードブレイカー
308/545

四鬼襲来05

 京都の鞍馬寺に向かう最中。


 色々と妥協した結果、大阪で一端降りることになった。


 アンネの提案でたこ焼きを食べるという行事が追加されたためだ。


 別段何処にいても結果は変わらないため、


「まぁいいか」


 が水月と真理と忍の見解だ。


 そして、たこ焼きの店に入って畳に座る。


 丁重に焼かれたたこ焼きと、店独自の出し汁。


 水月は日本酒を飲みながら。


 真理は丁寧に。


 忍は豪快に。


 アンネは尚豪快に。


 それぞれたこ焼きを楽しむ。


 一番楽しんでいるのがアンネだろう。


 基本的にポンコツであるため、日本のまったりした空気は過ごしやすいに違いない。


 実際、何時魔法メジャーの追っ手が掛かるか分からない現状に於いても理解しているとは言い難い。


 ポンコツであるためしょうがなくはあるのだが。


 とりあえず腹をくちくした後、腹ごなしに大阪観光をする一行。


 カニの看板や串カツの屋台。


 大阪城にも赴く。


「テセウスの船だな」


 大阪城の経緯を学んで水月の最初の一言がソレだった。


 色々と歴史の中で焼け落ちた業を背負っている。


 感傷と言うほど感じ入る物でも無いが。


 とりあえず電車とタクシーを使って大阪を巡っているうちに日暮れの時刻。


 ホテルを探す段になって、


「逢魔時か」


 そこら中にいた大阪府民が消え失せた。


 人の理である昼。


 鬼の理である夜。


 その邂逅する時間を指してそう云う。


 人と鬼とがすれ違う時間だ。


 結界の中でも日暮れは赤く世界を照らし、そして轟く。


「布都御魂だぁ」


「憎き神の子だぁ」


「殺せぇ。殺せぇ」


 雑魚と呼んで差し支えない鬼たちが地面から生え出てくる。


 恨み辛みは鬼の根幹。


 そして恨み辛みとは他者にぶつける物。


 鬼に対しての布都家の嫡子がそうだったのだろう。


 もっともだからといって、


「そうですか」


 と納得できるはずもないが。


「そっちは任せた」


 水月は忍に背中を預ける。


「へへっ! 兄貴に頼られるのは悪かねぇ!」


「――千引之岩――」


 水月は自身と忍の背の間に魔術障壁を張る。


 そうでもしなければブレンドブレードは水月と真理とアンネも鬼諸共斬り殺す羽目になるからだ。


 刀身十メートルを超える大剣。


 その威力を知ってるが故の処置だった。


「――御機嫌だぜ! 零戦!――」


 巨大な単分子ブレードを生みだして鬼たちを切り滅ぼしていく。


 それは水月も同様だ。


 水月たちを囲むように円形で現れた鬼の半分は水月によって滅ばされた。


 一言、


「――前鬼戦斧――」


 と魔法の言葉を唱えるだけで次々と鬼たちが風の斬撃で滅ぼされていく。


「四鬼は来ないのか?」


「多分来ると思うぞ」


 楽観論で動く水月にしては慎重な言葉だった。


 と言うより単なる事実だが。


 忍の返答より先に攻撃が来た。


 津波だ。


「水鬼か!」


 忍の言葉は正解である。


 全てを押し流す大質量が水となって襲いかかる。


 が、相手が相手ならこちらもこちらだ。


 水月は焦る様子も無く、


「――千引之岩――」


 と呪文を唱える。


 限定的に津波が押し留められるが、元が流動体だ。


 壁一枚でどうにかなる問題でも無い。


「後は任せた」


 水月が言うと、


「――委細承知!――」


 忍が応える。


 零戦がブレンドされて次なる刃へ。


「――大和!――」


 ブレンドブレードの一形態。


「海を断つ剣」


 と称される大剣。


 名を大和。


「ふえ?」


 とは上空から地面を眺めやるアンネの言。


 水月は真理とアンネの首根っこを引っ掴んで千引之岩を展開。


 階段状に作った魔術障壁を上って三人ともに天に身を置いたのだ。


「水は低きに流れる」


 諺ではあるが物理的な常識でもある。


 似たような例に、


「良薬口に苦し」


 という言葉もある。


 文字通りの意味ではないが文字通りの意味としても使われるという悪文化。


 である以上、津波を使って全てを押し流す災害の象徴である水鬼の御業は天には届かない。


 水月の水を操る魔術たる、


「後鬼霊水」


 ならまだ融通も利くが、こと水鬼の伝承は大量の水で全てを押し流す洪水を神格化したソレである。


 一定以上の高みには影響しない。


 一人地上に残った忍を洪水が襲ったが、


「はぁっ!」


 忍は迫り来る洪水にブレンドブレードをぶつけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ