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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ブレンドブレードブレイカー
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四鬼襲来03

 その夜は食い倒れたアンネの事情を慮って名古屋のホテルに泊まることになった。


 二人部屋を二つ。


 片方は水月とアンネ。


 もう片方に真理と忍である。


 普通なら男女で別れるところだが、こと戦力となるのが水月と忍なもので分散せざるをえないという事情だ。


 水月と忍については、その戦力は破格だ。


 真理は役には立たないが足手纏いにもならないと言った程度。


 アンネはポンコツだ。


 マリーが出てきてくれれば別の話ではあるが。


 そして敵として鬼に忍が狙われ、アンネマリーは仮想敵である魔法メジャーに狙われる。


 魔法に関連する流通を一手に引き受ける魔法メジャーの手は長い。


 場合によっては仮想的ではなく実質的な敵になる可能性も考慮する必要がある。


 結果としてアンネの護衛に水月がつき、アンデッドの真理なら忍の戦いの邪魔にはなるまいということで、こういう部屋割りになったのだ。


「みーづきー!」


 水着姿で水月と一緒に風呂に入るアンネであった。


 スウィートルームであるため豪奢な造りで、二人で入って尚広い。


 アンネは水月を想っているが、水月はアンネをポンコツだと思っている。


 この隔絶はある種、千引之岩にも匹敵する。


「マリーはどうしてる?」


「知らないよー」


「だろうな」


 最後の言は心中だ。


 ことマリーと交渉し足並みを揃えておかねばならない水月だった。


 だいたいのところでマリーとの交渉が第一義だ。


「マリーよりアンネを見てよー」


「善処する」


「それはする気が無いときの言い訳だよー」


「よくわかってらっしゃる」


「ううー」


 唸るアンネ。


「魔術の一つでも使えるようになれ」


「アンネマリーにソレが出来ると思う?」


 人格は違えど根っこは同じ。


 桜の樹……その枝分かれに紅葉が彩ることはない。


 根っこが脳なら花は人格だ。


 水によって色が変わっても薔薇が百合に為りはしない。


 というより水月にしてみれば、


「アンネはセーフティじゃなかろうか」


 というのが仮説だ。


 根本的に魔術と禁術では演算の仕方が違い、その上で反量子を運用する必要があるのだ。


 こういうところでは魔術否定仮説が強力に効いてくるが、別段量子燃料仮説が否定できるわけでもない。


 それなりの仮説は立つ。


 そもそも過程はともあれイメージ通りに世界を変革することには相違なく、その上で殆どの演算がアークによってなし得る以上、マリーの性質は損なわれることはない。


「であれば宇宙を滅ぼせるマリーにアンネというセーフティがつくのはアークの悪戯ではなかろうか?」


 ふとそんなことを思う。


 もっとも脳の欠損具合でいえば水月……というか魔術師とて五十歩百歩ではあるが。


 誘惑するアンネを適当にあしらい、風呂を出てエアコン全開。


 ホテルのサービスで頼んだビールを呷る水月だった。


「うー」


 とアンネ。


「この魅惑のボディに靡かないなんてー」


「すげー自信だな」


 アンネの幼女的体型に興奮するには水月は少し枯れている。


 少し……というより盛大に枯れているのだが。


 水月にしてみれば女性とは葛城さくらが第一義でそれ以外は十把一絡げの混戦模様だ。


 一絡げにされるヒロインたちこそ良い面の皮だが、元より水月がそう云う物だという通念は共有されていた。


 水月はパンツ一丁でエアコンの風に当たりながらビールを楽しむ。


「私も飲むー」


「駄目だ」


「何でー?」


「気分じゃないから」


 そういう水月。


「んー?」


 首を傾げるアンネだったが水月はそれ以上を説明する気は無いらしかった。


「抱いて良いんだよー?」


「もちっと乳房が大きくなったらもう一回言ってくれ。考慮しよう」


「おっぱい星人ー?」


「いや、どちらかと云えば手の平で包み込める程度の大きさが好ましい」


「リアルだよー」


「巨乳も嫌いではないがな」


「じゃあもっと大きくするー」


「頑張れ」


 何の感情も含まれていない声援だった。


「水月はブレないねー」


「今更だろ」


 アンネマリーとてそれは理解しているはずだ。


 アンネもそうだが主人格のマリーはアンネの体験を共有している。


 情報差はこの際マリーに有利だ。


「次は何処行くのー?」


 アンネが問う。


「とりあえず大阪かね」


「大阪ー!」


 ぴょんぴょんはしゃぐアンネだった。


「たこ焼きとか串カツとか食べたいー!」


「たこ食べられるのか?」


 ヨーロッパでは忌避される食材だ。


「美味しいよ?」


「お前が良いなら良いが」


 案外胃の懐の広い欧人だった。


「ソースにつけるのもいいけど出し汁につけて食べる奴が私は好きだなー」


「わかってるな」


 ビールを飲みながら水月は苦笑した。


 そんなこんなでたこ焼き談義をしていると、部屋の扉がノックされる。


 アンネが招待すると忍が現れた。


 シャツにジャケット。


 デニムの短パン。


 外出用の出で立ちだ。

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