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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
もしも源義経がエクスカリバーを握ったら
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もしも源義経がエクスカリバーを握ったら08

 スッと右手を死者に向けて、


「――迦楼羅焔――」


 とマジックトリガーを引く。


 迦楼羅焔。


 インドのガルーダを模した炎塊は翼で風を打ち、風より速く死者に襲いかかった。


 が、


「甘い」


 と死者は宙を翔けた。


 目標を見失った迦楼羅焔は建築物にぶつかりコレを粉砕。


 欠片も残さず灰へと還した。


 建物にいた裏ロンドンの人間にしてみれば迷惑この上ないのだが死者は口を開かない。


 宙に身を置いた死者へ、


「――前鬼戦斧――」


 水月は腕を振って魔術を放つ。


 振られた腕の延長線上に超気圧の斬撃が発生する。


 それすらも避けられる。


 宙にいながら宙を蹴って難を逃れる死者。


「天翔……!」


「博識だの」


 死者は飄々としていった。


 ちなみに先の迦楼羅焔による灼熱で死者を固める数人が焼殺されたが水月も死者も異を唱えなかった。


「俺が覚えようとして覚えられなかった能力だからな」


「天狗の家系かや?」


「ある意味でな」


 それから水月は、


「巻き込まれたくない奴は今すぐ逃げろ。こっちは手加減する暇はねぇぞ?」


 一応のところ警告を発した。


 迦楼羅焔による建築物の爆砕。


 および前鬼戦斧による巨大な爪痕。


 戦意を保てる人間はそうはいなかった。


 例外もあったが。


「――ManifestationCase――」


 宝石魔術の権威。


 プロミスリル教授である。


 教授はルビーとサファイアとエメラルドとトパーズの四種の宝石を握りしめる。


 呪文の詠唱は同時だ。


「――FourElementsAttack――」


 教授が生み出したのは四種類四色の力線。


 赤色の熱気と青色の冷気と緑色の気圧と黄色の斥力の四属性を同時に放つ複合属性の魔術だった。


 ルビーとサファイアとエメラルドとトパーズを同時に失うのは惜しいとしても、その宝石魔術の威力は誰が見ても、


「強力」


 の一言に尽きた。


 もっとも通じるか否かはこの際勘案されないが。


 螺旋を描くように四つの力線が襲いかかるが宙を翔けてサクリと死者は避ける。


 そしてプロミスリル教授へと間合いを詰める。


 教授の反応も早い。


「――ManifestationCase――」


 マジックトリガーを引いて、


「――DiamondEqualVallation――」


 ダイヤを消費して防御障壁を生み出した。


 それは確かに死者の刀を防いだが、死者の回り込みまでは防げなかった。


 神速。


 目に映らない速度をこう呼ぶ。


 日本の剣の道における究極だ。


 ハンマースペースから取り出された槍がプロミスリル教授の首を貫いた。


 続いて取り出された刀が心臓を貫いた。


「――っ!」


 即死である。


「あーあ」


 水月は哀悼の意を捧げなかった。


 元より殺す気で魔術を放った教授である。


 殺し返されても文句を言う立場にはない。


「宝石魔術の知識が衰退するな」


 字面ほど水月の言葉に落胆はなかった。


 元々否定したのが水月である。


「どうでもいい」


 そう思う。


 正直なところ自分以外の人間が全滅したところで意に介さない水月である。


 一度は争ったプロミスリル教授といえど水月のソロバンには弾かれない。


「――後鬼霊水、秋水――」


 ウォーターカッターを生み出す水月。


「ほう」


 易々と避けられる。


「先の老人に比べれば中々どうして堂々とした魔術であるな」


 死者は感服したらしい。


 水月にしてみれば、


「褒められて嬉しい技術でも無い」


 のだが。


「さて、意識はこっちに向いたか?」


 水月は腕を振って意識を高揚させる。


「最大の障害が貴様だな」


「そりゃ重畳」


 睨み付ける死者を見やりながら水月は接近した。


 死者はハンマースペースから刀を取り出して振るった。


 気。


 意。


 識。


 全てが揃った剣戟だ。


 まさに一流。


 しかして水月はソレを更に上回った。


 振り下ろされる死者の刀を軽やかに受け流し、


「シッ――!」


 打撃を放つ。


 かろうじて避ける死者。


 刀剣バーサス素手。


 しかして水月は一歩も引かなかった。


 むしろ押しているほどだ。

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