もしも源義経がエクスカリバーを握ったら02
それから魔女っ子ルックのニュートン姉妹が去って行った後、水月はベッドに寝転んだ。
情報端末が着信を唄う。
馬九李からだった。
「ハロハロ~。アイラビュー」
「用件は?」
「お伝えしたいことがありますにゃー」
「だから用件は?」
「エクスカリバー」
「……っ!」
水月の関心事ド直球だった。
「関心あるでしょ?」
「まぁな」
「死守すること」
「エクスカリバーは湖に返還されている」
「無論オリジナルではないにゃ」
「となると……」
「水月が回収した奴」
「狙ってくる人間がいるのか?」
「そうよん」
「…………」
「水月としても奪われたら困るでしょ?」
「そらまぁそうだが……」
「それを奪おうとする敵と戦うこと。これが面倒事の根幹」
「しかし大英魔導博物館に喧嘩売るってことは相応の剛の者だろ?」
「ま~ね~」
「めんどいなぁ」
「だから面倒事なんでしょ?」
そうだが。
言葉にせず水月は同意した。
「クフフ。面白そうだにゃ~」
「結果は見てるんじゃないのか?」
「んにゃ?」
サックリ否定する馬九李。
「一応状況は知ってるけどこれから起きることは生放送で楽しみたいから遠見の魔眼で確認してるとこ」
なんだかね。
馬九李の相手をすると不遜な水月でさえうんざりさせられる。
馬九李が一枚上手と云うだけではあるのだが。
「今奪われるのは確かに困るな」
「リナちゃんのためにもね」
「そこまで分かってるならお前がどうにかしろよ」
「おぜぜが必要よ?」
「というかやる気が無いだけだろ」
「そうではあるんだけど……ううん……」
「何か?」
「どうしても水月に戦って欲しいのん」
「おい」
さすがに聞き逃せない。
「俺の関係者か?」
「ある意味でね」
「情報は……教えてくれないんだろうな」
「よく分かってるねぇ」
ケラケラと馬九李は笑った。
「ああ、イクスカレッジが懐かしい……」
「まぁそう言わず」
やはりケラケラ。
「良い体験になると思うよ?」
「お前様は俺の目的を知ってるだろうがっ」
「それとは関係ないけどね」
やはりケラケラ。
「まぁいいさ。エクスカリバーを守れば良いんだろ?」
「さいですさいです」
「とは言ってもなぁ」
「それまでは手八丁口八丁で威力使徒をまいてねん」
「そのつもりではあるがな」
嘆息。
面倒事を何より嫌う水月だ。
ましてソレが第五魔王の遺産ともなれば。
そして裏ロンドンに喧嘩を売る敵の存在。
じわじわと綱渡り中の綱を削られているような印象を受ける。
「とりあえず何時起こるかだけはわかるか?」
「今日」
「早いな!」
「まぁあんまり心構えを与えてると面白くないからね~」
「殺してぇ……」
「不可能ではないだろうけど痛い思いはしたくないでしょ?」
「まぁな」
はぁ……。
そう息をつく水月だった。
「相手にしたくないのは事実だ」
「でしょでしょ~? 水月とは別の意味で無敵だからね~」
さもあろうが。
それ一つで憂き世を渡り歩いている猛者である。
故に逆らうことは何人たりとも出来ない。
それが水月であれ……だ。
「よく刺されないな」
「恨み程度なら勘案する必要も無いしね。てへぺろ」
何で俺はこんな奴と繋がってるんだろう?
深刻にそう思う水月。
とはいえ馬九李の有用性までは否定できない。
「なんだかね」
水月は重ねて嘆息する。
「にゃ~。どしたの?」
「九李姉の殺し方を考えてた」
「無理を承知で?」
「無理を承知で」
そうには違いないのだ。
そも、居なくなられて困るのは水月の方である。
「だからって九李姉を敵にするのは勘弁なんだがな」
やはりそうには違いないのだ。




