ヴァンパイアカプリッチオ13
というわけで実力を示したことで水月もレギオンの間引きに参加することになった。
ついでに真理とプライムもご同行。
ザナドゥーは戦力にならないのでお留守番である。
そして四人は裏ロンドンのそこかしこに立っているオベリスクの一つに向かった。
尖塔が天に向かって伸びており、オベリスクを中心に地面には魔法陣が刻まれている。
ここからレギオンに跳ぶのだ。
その前に、
「――リンクスタート――」
威力使徒……リリィがマジックトリガーを引いた。
「?」
と真理。
「――神鍵認識――」
更にマジックトリガーを引く。
リリィの手に金色のナイフ程度の大きさの鍵が出現する。
そこそこのサイズだ。
どんな錠前とも規格が違いすぎる。
当たり前だ。
握りがあって、鍵の部分は大きめのナイフの刀身と同程度の大きさを持つのだから。
その鍵……神鍵をリリィは空間に突き刺した。
まるで鍵穴の中に消えて見えなくなるように、神鍵は空間に突き刺さって深く潜り鍵の部分が虚空で見えなくなった。
「――奇跡倉庫、解錠――」
更にマジックトリガー。
空間が歪んで視覚に可視光線がグニャリと歪んだことを訴え、その空間の歪みは大きくなる。
「――アスカロン……被貸与申請――」
すると空間の歪み……虚空から剣の柄が現れた。
「っ!」
一気に引き抜くリリィ。
現れたのは五メートルを超える刀身を持つ冗談のような大剣。
「なるほどな」
水月はだいたい察したらしい。
持ち前の身体能力強化とアスカロンの加護によって莫大な質量を持つ大剣を軽々と扱うリリィ。
「――奇跡倉庫、施錠――」
その一言で空間の歪みは神鍵を飲み込んで消え失せた。
残ったのはアスカロンのみ。
「何ですソレ?」
真理が聞いた。
リリィが肩にかけている刀身五メートルの馬鹿でかい剣についてだ。
「聖人……聖ジョージが竜殺しに使った聖遺物。アスカロンですわ」
「聖遺物……」
ポカンとする真理。
「まさか奇跡倉庫リンカーだったとはな」
奇跡倉庫。
伝説上の聖遺物やその他のマジックアイテムを「封印の必要あり」と見なして貯蔵する異世界である。
一部の威力使徒が干渉し異世界たる奇跡倉庫にリンク、封印されたマジックアイテムを一時的に借り受けることが出来る。
威力使徒にとっての切り札であり、教会協会の至宝と言えるシステムでもある。
「裏ロンドンの監視とレギオンの間引きが使命である以上必然でしょう」
「確かにな」
「でも今回戦うのは吸血鬼でしょ? 竜殺しの剣が役に立つんですか?」
もっともな意見だが杞憂でもある。
プライムが言った。
「第三真祖とその眷属はドラゴンの概念を持っているんですよ。ドラキュラ公は生前には小竜公と呼ばれていましたから。ですからアスカロンは大敵なのです」
「なるほど……」
「では跳びましょうか」
リリィが何気なく言う。
「四人で挑むの?」
「時間を合わせて別のオベリスクから複数の戦力が跳びますよ。そのために複数のオベリスクを建てて裏ロンドンのあちこちにレギオンとのリンクを繋いでいるんですから」
「リンクで繋ぐって……そんなことしたら向こうから吸血鬼がこっちに雪崩れ込んでくる可能性もあるんじゃ……」
「それはありませんわ」
「何故です?」
「オベリスクは元々太陽神への崇拝のために建てられた建造物です。つまり太陽の属性を持っているため太陽を大敵とする第三真祖には利用できないんですよ」
「そなの?」
真理は視線を水月にやった。
「ああ」
肯定して、
「ていうか知らなかったのな」
「初めてなのに知るわけないよ」
「そういや威力使徒についても知らなかったな」
「だよだよ」
「では跳びますよ?」
「オーライ」
「はぁ」
「ええ」
三人の許諾を得られてリリィはオベリスクに触れてマジックトリガーを引く。
「――光あれ――」
次の瞬間、世界が反転した。
異世界転移。
ロンドンの裏の裏ロンドン。
さらにその裏のレギオン。
オベリスクは正しく魔法陣の中に立っていた四人をレギオンへと跳ばしせしめた。
昼間の時間ではあったがレギオンは夜であった。
赤い月が闇夜を照らしている。
そこかしこに吸血鬼が溢れ、不気味なカラスの鳴き声が聞こえ、墓が掘られていた。
「食料だぁ」
「食料だぁ」
「食料だぁ」
オベリスクならびにオベリスクを中心にして範囲がリリィの魔力の入力によって太陽の属性を持ち安全地帯となっているが、すぐ傍には複数の吸血鬼がいた。
「ひっ……」
と怯える真理。
「大丈夫だ」
水月が安心させるように言う。




