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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
もしも源義経がエクスカリバーを握ったら
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いざ、裏ロンドン07

 裏ロンドンはロンドンの鏡像世界である。


 そして新古典魔術の総本山とも呼ばれる。


 現代魔術の総本山であるイクスカレッジと違い未だに旧弊な考えで魔術を振るう御手が多い。


 水月辺りに言わせれば、


「魔術は理論より実践だから姿勢としては間違ってないだろ」


 ということになる。


 閑話休題。


 鏡像世界は異世界の一種で、世界を構築するに辺り実際にモデルとする土地を『鏡に映したよう』に再現する魔術を指す。


 異世界には違いないのだが、基本的に再現した文明に通念が固定されるため文明的な魔術と言えないこともない。


 事実として類感呪術や感染呪術の思考が平気の平左で通っている辺りに業の深さを感じ入る水月である。


 対照的な例を出せば水月とさくらの実家がソレに当たるだろう。


 日本は葛城山から通ずる異空間。


 その山の天辺からリンクが張られ基準世界と繋がっている。


 山中には違いないのだが、時の止まった場所だ。


 なお季節に関わらず何時でも山桜が咲いており、水月の祖父である役小角と鞍馬山の主である護法魔王尊が山桜を肴に酒を飲み合う場でもある。


「基本的に爺も御大も俗世に興味が無いからな」


 とは水月の言。


 桜か桃かの違いなだけで実質的には中国の桃源郷と似たような造りであり、俗世と隔絶された空間は鏡像世界とは異なる神秘である。


 時に山伏の霊験灼然さに目をつけて、難病を治して貰おうと、あるいは不幸を解消して貰おうと、葛城山の異空間に紛れ込む人間もいるが、それはまた別の話。


 再度閑話休題。


 裏ロンドンはロンドンの鏡像世界であるため、世界もソレに順ずる。


 一応、水月が裏ロンドンに来たのは馬九李にせっつかれたのとは別に魔法メジャーに無形魔法遺産登録を建前ともしている。


 そのためにもっとも適した人材に会うべきなのだが、スケジュールの都合上幾ばくかの時間が必要となった。


 というわけで数日は暇を持て余すこととなる。


 水月と真理は観光を提案した。


 プライムとザナドゥーにも異論は無かった。


 そんなわけで四人は裏ロンドンを満喫した。


 大英魔導図書館。


 大英魔導博物館。


 搾取と略奪の総称だ。


 古今東西の魔導書を収めた大英魔導図書館。


 古今東西の魔導器を収めた大英魔導博物館。


 新古典魔術とは要するに古典魔術の否定だ。


 ケルト神話にインド神話の概念を混ぜたり陰陽道にルーンを組み込んだりすることを平気でやってしまう節操の無さである。


 そのため魔術における全ての知識と技術の総括が裏ロンドンにはあった。


 そんなことを語りながら大英魔導博物館を見て回る水月一行。


「そういえば」


 とはザナドゥーの言。


「役先生は博物館への寄贈者でもありましたね」


「まぁ……な」


 苦々しく肯定する水月。


 嫌な思い出を想起させられるのだ。


「そうなんですか?」


 さすがに事情を知るはずもない真理が食いつく。


「ええ、それも最大級に尊いモノを」


「堕落の象徴だ」


 水月は鼻を鳴らす。


「一体何を?」


 特に悪意も無く尋ねる真理。


 水月は疲れたように口を閉ざした。


 視線でやりとり。


 代わりにザナドゥーが答えた。


「エクスカリバーです」


「エクスカリバー……?」


「おや? ご存じでない?」


 ザナドゥーは意外だと言うが、


「知ってはいます」


 さすがにそこまで無知でも無かった。


 少なくとも知識欲の旺盛な人間ならば誰もが一度は聞いたことのある概念だろう。


 エクスカリバー。


 不朽無敵のアーサー王が手に持った相棒。


 松明三十本分の輝きを放ち、鉄すら容易く切り裂く伝説の剣。


 こと光という概念において右に出るモノのない聖剣だった。


 なおエクスカリバーの本質は剣では無い。


 鞘こそが本命だ。


 その鞘を身につけたモノは不老不死を約束されるという。


 あまりと言えばあまりの規格外さ。


 アーサー王が無敵だった理由はコレに起因する。


「でもエクスカリバーは湖の乙女に返還されたはずですよね?」


「オリジナルはな」


「?」


「役先生が大英魔導博物館に寄贈したエクスカリバーはレプリカなんです」


「レプリカ……というと……」


「贋作と言うことですね。そう珍しい話でも無いでしょう。エクスカリバーほどの聖剣ともなれば魔術師やアークティアが再現するのは造作も無いことでしょうから」


「言われてみればそうですね」


 一応真理も納得したらしい。


「二度と関わり合いたくないがな」


 水月は口をへの字に歪めて吐き捨てた。

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