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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
もしも源義経がエクスカリバーを握ったら
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いざ、裏ロンドン06

 それから裏ロンドンの五つ星ホテルにチェックインして部屋を取り、それぞれの個室で安んずると、


「あー……疲れた……」


 水月はこった肩をほぐすように回した。


 とりあえず夕食を終えて情報端末を手にする。


 ちなみに裏ロンドンはロンドンの鏡像世界だが、電波は通じるし衛星とのリンクも可能であるし電気も水道もガスも通っている。


 その辺の細かい理屈は理解できないが、


「隙間の神効果」


 の一端と云うことで水月は了承していた。


 元々『とある魔術師』が構築した鏡像世界である。


 その辺りに抜かりは無い。


 さも平然と水月は情報端末を操作する。


「で?」


 と履歴に電話するのだった。


「何か用か?」


「先輩! 無事についたんですね」


 相手はラーラだった。


 基準世界と準拠世界。


 しかして裏ロンドンに限っては例外だ。


「まぁ別段誰と敵対してるわけでも無いしな」


 これは水月の本音だ。


「何か不安があるんですが……」


「気のせいだろ」


 サクリと水月は言ってのけた。


「ならいいんですけど……」


「じゃあな」


 無情に通話を切るのだった。


 しばしフカフカのベッドに酔いしれていると、


「水月!」


「水月様!」


「役先生!」


 三人の声が聞こえた。


 順に、真理、プライム、ザナドゥーである。


「何だ?」


 面倒くさげに扉を開いて招き入れる水月。


 三人は三人とも着替えを持っていた。


 その理由を察せないほど水月は鈍感では無い。


「さもあろう」


 そんな境地である。


「水月!」


「水月様!」


「役先生!」


「だから何だ?」


「「「一緒にお風呂に入りましょう!」」」


「水着着用ならな」


 元よりその手のことには淡泊な水月だ。


 性欲の昂ぶりも既に鳴りを潜めている。


 個室にはそれぞれロンドンを一望できる露天風呂が設置されていた。


 最上室に泊まっている水月たちは羨望の的。


 つまり、


「お前らに恥じらいは無いのか」


 という結論になる。


 水月はこと色恋においては純情ではあっても愚鈍では無い。


 当然、三人共に水月に慕情を寄せていることは察しているのだ。


 では何故応えないのかというと、


「感傷」


 の一言で済んだ。


「葛城さくら」


 そを思うが故のままならない感情。


 さくらから遺産は貰った。


 その使い方もある程度把握している。


 ただ二つの難題があった。


 物理的に一つ。


 精神的に一つ。


 そうであるため机上の空論に終わるのだが。


「で?」


 淡泊に紡ぐ。


「そんなにお前ら俺が好きなの?」


「はい!」


「ええ」


「ですね」


 三者一様に応えられた。


「…………」


 口をへの字に歪める水月。


 が、弾きはしなかった。


「好きにしろよ」


「「「わーい」」」


 そんなわけでそんなことになった。


「ふい」


 と体を洗った水月が風呂に浸かる。


 それは他三人も同じだった。


「水月様?」


「何だ?」


「不肖私を好きにしてくださって構いませんよ?」


「私も!」


「私もです先生!」


 三人ともに挙手した。


「俺にはさくらがいるし」


「水月様はまた……」


 悲痛の声を上げたのはプライム。


 自身への自罰的感情と折り合いがつけられないのだろう。


 その程度は水月とて汲み取れる。


「ま、それについてお前を責めるつもりはねえよ」


 ポンポンとプライムの頭を叩く水月だった。


「死者を蘇生させるつもりですか?」


「可能か不可能かで云えば可能だが……そんなことは考えてないな」


 事実ではある。


 真実ではないが。


 そもそも梵我誤差のある葛城さくらを具現したところで水月に旨みは無い。


 それはプライムとて十全に理解してるのだ。


 であるから話はここまで。


「水月……!」


「水月様……!」


「役先生……!」


 そんな三人の性的難関が水月には定義された。


 その方程式の解決法は単純にして簡潔。


 拒絶。


 そうには違いないのだが。

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