再会の来訪者11
「――――っ!」
どよめく大衆。
いきなり何の脈絡も無く発生した水月を包む金色のオーラに息を呑む。
光。
熱。
風。
電気。
斥力。
エネルギーの相としては単純なソレだ。
スーパーヤサイ人のように纏った金色のオーラの内約である。
金色の光がオーラのように水月を纏う。
熱と風が熱風を女生徒に伝える。
オーラの周辺でバチバチと電気による火花が舞い散る。
そして発生した斥力が女生徒のガラスの剣を弾いたのだ。
トランスがリアリティを汚染した際に起こる根源魔術。
水月がプライムと殺し合ったときに決定打となった魔術だった。
光と熱風と電気が金色のオーラを作っているが、本質的には斥力の発生が主となる。
それは同じ斥力の結界であるプライムの、
「――カコメ――」
を打ち破った事からも見て取れる。
不可視のカコメと違い水月の魔術は金色のオーラを展開してわかりやすく目に見えるが本質はさほど変わらない。
絶対的な斥力の壁。
ほぼ全ての害性をシャットアウトする結界。
そうには違いないのだ。
問題は、
「役先生は……」
「マジックトリガーを引いたか……?」
水月が金色のオーラを展開するに辺り、何かしらのマジックトリガーを引かなかったことが衆人環視にとって唾を飲み込む大事変であった。
「な……!」
と驚愕したのは女生徒も同じだ。
「何ですのソレは!」
「魔術だが?」
特に誇ることでも無かった。
少なくとも水月にとっては。
「くっ……!」
と呻き、
「――AlefTav!――」
魔力の入力、
「――TheTower!――」
魔力の演算、
「即ち――!」
魔術という名の出力。
ガラスの剣が生まれて水月に向かって射出さるる。
結果は等しい。
金色のオーラがガラスの剣を弾いた。
「聞いてませんわ!」
女生徒はわめいた。
「言ってないしな」
水月は平常運転。
「何ですソレは!」
「俺は『金色夜叉』って呼んでるがな」
金色夜叉。
それが水月の金色オーラの正体だ。
葛城さくらのカコメと等しく斥力で自身を守る異界を作り上げる魔術。
ただし、
『マジックトリガーを引いていない』
というオマケ付き。
「何を……っ!」
あまりの暴挙に声を失う女生徒だった。
不条理。
そう呼んで差し支えない。
「マジックトリガーを引かずに魔術を行使する」
その一事だけでも万事なのに、
「強力な斥力の壁」
などという開いた口が塞がらない類の効果。
「……っ!」
一体この状況をどうしろというのか?
わかる方がどうかしている。
観客席のプライムだけがその原理を理解していた。
自身が一度敗れ去った魔術でもある。
寒気が背中を駆け抜けるのも必然と言えるだろう。
「さて……」
水月はここで漸く一歩動いた。
「降参しないか?」
「何を……っ!」
女生徒にはあり得ない結論だろう。
「――AlefTav!――」
構わず女生徒は呪文を唱える。
「――TheTower!――」
ガラスの剣が射出される。
結果は等しく。
かつ虚しく。
金色夜叉のオーラに弾かれた。
「他の魔術は使えんのか?」
水月としては単純な疑問だが、
「――ッ!」
女生徒にとっては侮辱だった。
「だったらどうだって言うんですか!」
「そらまぁ色々と都合がな」
飄々と水月。
金色夜叉を展開したまま女生徒へ間合いを詰める。
その間にも、
「――AlefTav!――」
魔力の入力、
「――TheTower!――」
および魔力の演算を行使する女生徒。
その全てが弾かれて金色夜叉は女生徒を追い詰めていった。
最後には金色夜叉の斥力とコロシアムの壁とに板挟みにされた女生徒が負けを宣言。
無難に勝利を得る水月であった。
とっぴんぱらりのぷう。




