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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
もしも源義経がエクスカリバーを握ったら
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再会の来訪者01

 水月はイクスカレッジでは最優秀に分類される魔術師である。


 基本的に魔術がイメージに依存する以上、多彩な魔術を具現する魔術師は貴重だ。


「魔術師らしい魔術師」


 水月はそう呼ばれている。


 特に一種類の魔術に拘泥せず、先述したが多彩な魔術を繰る者。


 で、そんな水月であるからイクスカレッジでは学生寮では無く宿舎が与えられている。


 さくらと二人暮らし。


 後に一人暮らし。


 そして今は真理と二人暮らしと相成っている。


「あー、疲れた……」


 基本的にアンニュイな水月としては論文を書くことすら手間に思えるのだ。


 今日の分の買い出しを済ませた後、宿舎に帰る。


 鍵を開けて中に入ると、


「お帰りなさいませ水月様。御飯にしますか? お風呂にしますか? それともわ・た・し?」


 色素の薄いショートヘアの美少年が裸エプロンで出迎えた。


「…………」


 パタン。


 中に入らず扉を閉める。


「…………」


「…………」


 水月と真理の間に沈黙が落ちた。


「あー……」


 何とか言葉を探して苦悶し、


「タチの悪い白昼夢を見た気がするな」


 今は夕方だが。


 かぶりを振って妄念を追い払った後、再度水月は宿舎の扉を開ける。


「お帰りなさいませ水月様。御飯にしますか? お風呂にしますか? それともわ・た・し?」


 色素の薄いショートヘアの美少年が裸エプロンで出迎えてくれた。


「…………」


「…………」


「…………」


 再び沈黙。


「あれ? すべりましたでしょうか?」


 裸エプロンの美少年がクネリと愛らしく首を傾げる。


 ほとんど中性的な美少年で女性と間違われても不思議ではないが、水月はその少年を知っている。


「何してんだ?」


 それだけ。


 他に言いようもないのは事実ではあったのだが。


「水月様がお腹をすかせて帰ってくるだろうと思いまして不肖私が夕餉の準備をさせてもらいました」


 美少年は軽やかに言ってのけた。


「どの面さげて現れた?」


「そう言われると返す言葉を持てないのですけど……」


「プライム……」


 プライムは数学では近似を意味する単語だ。


 とある魔術師の類似系であるためそう呼ばれている存在である。


「えと……水月……知り合いですか?」


「敵だ」


「ご冗談を。味方ですよ」


 爽やかにプライムは言った。


「どの口がいけしゃあしゃあと……」


 とはいえ以前ほど嫌悪感は無い。


「で、誰です?」


 そんな真理の問いに、


「とりあえず上がりませんか? まずは食事と行きましょう。水月様の好きなメカブも買っていますから」


「ほう?」


 そんなわけでパソコンを置いているコタツ机を片付けて食事を並べて三人は夕餉とした。


 ちなみに今日のために買った食材は軒並み冷蔵庫行きである。


 夕食は白米とメカブと味噌汁が個々人に出され、大きめの鯛の姿蒸しがテーブルの中央にデンと置かれた。


 めでたい。


 酒蒸しであるため香りが良く、なお鯛の旨みも損なわれていない。


 自然と箸は進んだ。


 全てを食べ終えた後、


「お粗末様でした」


 とプライムが言って食事を片付ける。


「あ、手伝います」


 そんな真理の提案に、


「いいえ」


 とプライムはかぶりを振る。


「私に奉仕なされてください。少なくとも私がいる内は」


「はぁ」


 独特の説得力にぼんやりと頷く真理だった。


 そして皿を回収してプライムは水場でカチャカチャと洗い出す。


「ていうか誰です?」


 コタツ机で食後の茶をふるまわれた真理が同様の水月に問う。


「プライム。正式名称はサクラプライム」


「サクラ……プライム……」


「ああ」


 茶を飲む水月。


「プライムって言うと……」


「数学では近似を指すな」


「さくらの……近似……?」


「意味不明だ」


 と真理は云った。


「無形魔法遺産については説明したな?」


「ええ、まぁ」


 無形魔法遺産。


 主に遺産として受け継ぐべき魔術師を保存するための魔法メジャーによる処置。


 選ばれるのは栄誉と言われているが、その実……無形魔法遺産に選ばれた魔術師は魔術の根幹である脳をえぐり取られて保存されるという非人道的処置を施される。


 そして水月の想い人である葛城さくらもその被害者だ。


 オワレ。


 第十二ブリアレーオ魔術の使い手であり、ソを以てエア仮説を否定した魔術師でもある。


「ちょっと待って……! つまり……!」


 無形魔法遺産の葛城さくら。


 そしてさくらに近似するサクラプライム。


 水月は既に突きつけられた現実だが、真理にとっては新鮮だ。


「そ」


 と水月はプライムの淹れた番茶を飲みながら肯定する。


「魔法メジャーによって保管されている葛城さくらの脳の形相を受け継いだ魔術師。それがサクラプライムって訳だ」


 何事も無いように口にする水月。


「冷静ですね?」


「まぁ色々ありまして」


 正直なところ水月には今更だ。


 特に怒りは湧いてこない。


 水月は既にさくらから遺産を受け継いでいるのだ。


 使用方法さえ現実的ならその他のことはどうでも良い。


 そう割り切れた。

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