表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/545

転校生は魔法使い09

 ある程度進んで、


「ふぅ」


 と白雪さんが吐息をつくと、


「白雪。茶」


 遠慮もへったくれもなく水月がおかわりを頼んだ。


 ちなみに僕の茶も飲み干されている。


「夏さんもでしょうか?」


「あ」


 と躊躇った後、


「うん」


 素直に頷いた。


 そこで遠慮すれば白雪さんが憂慮すると思って。


「しばしお待ちを」


 そう言って湯を沸かして急須にて緑茶を淹れなおす。


 湯呑は一度洗って、それから緑茶を注ぐ。


 また僕と水月が茶を飲んでいる横で縫製を進める白雪さん。


 ツイツイ。


「ところで」


 とこれは僕。


 白雪さんが燕尾服を形にしている横で水月に尋ねる。


「普段は何してるの?」


「何がだ?」


 言葉が足りなかったのはこっちの責任だ。


「学校に行ってないんでしょ?」


「まぁな」


「でも中学相当の教養を持ってるよね?」


 数学の時間ではあっさりと回答してたし。


「時間は幾らでもあるからな」


「?」


 僕は首を傾げる。


「なんなら後で波動関数について教えてやろうか?」


「はどうかんすう?」


 僕には意味不明だ。


「夏は大学に行くつもりか?」


「中学を卒業したら働くつもりだけど」


 そう言うと、


「いけません」


 思わぬところから反対が出た。


 白雪さんだ。


「夏さんには大学まで出てもらいます」


「でも僕は一刻も早くお金を稼ぎたい」


「わたくしの支度金がありますから心配いりません」


「でもさぁ……」


 それはヒモって言うんじゃない?


「夏さんはわたくしに養われてくだされば……それ以上をわたくしは求めません」


「僕は働きたいの」


「大学を出た後ならば考えなくもありません」


「それが最低ラインなの?」


「ええ」


 肯定されちゃったよ。


「ふは……っ」


 水月はくつくつと笑っていた。


「いいメイドさんだな」


「自慢のソレです」


 仏頂面は勘弁してほしい。


 何せ僕は現時点でヒモだ。


 白雪さんに養われて、白雪さんに面倒をかけている。


 すると、


「それがわたくしのレゾンデートルです」


「愛されてるな」


 二人から皮肉を受け取った。


 なんだかなぁ……。


 無粋の表情で茶を飲む。


 と、


「一応完成ですね」


 白雪さんが、


「ふい」


 とおでこを拭う。


「はやっ」


 水月が驚愕する。


 さもあらん。


 二度目とて僕の衝撃度合いもそんなものだ。


「本当に器用なんだな……」


 水月は感心したように言った。


「では」


 とこれは白雪さん。


 ズズイと水月に燕尾服を突きつける。


「着てください」


「完成したんじゃないのか?」


「一応と注釈をつけました」


「さいか」


 そして水月は白雪さんの縫った燕尾服を纏う。


 白雪さんと立ち並ぶ神懸りの美少年だ。


 スラリとした体に燕尾服の妙がよく似合っていた。


「では失礼して」


 白雪さんがペタペタと燕尾服越しに水月の体を触る。


 それから、


「ふむ……」


 と思案して、


「動かないでくださいね」


 そして細かな裁断と裁縫を水月に服を着せたまま調整していく。


 やはり出来る女子は違うなぁ。


 そんなことを思ってしまう。


「やるもんだな白雪」


「恐縮です」


 特に色もなく簡潔に答える白雪さん。


 そんな折に僕に聞こえないようにボソボソと水月が白雪さんに呟いた。


 すると、


「……っ!」


 仮縫い中の白雪さんがボッと赤面する。


「…………」


 何を言われたのだろう?


 むぅ。


 少し嫉妬してしまう。


 本当に白雪さんは水月をどうも思っていないのだろうか?


 そんな疑念さえ沸いてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ