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転校生は魔法使い05

 さて。


 生徒に対して下校放送が為された。


 文化祭の今日の準備はここまで。


 で、当然ながら、


「役くん! 一緒に帰ろ!」


「あたいとも!」


「自分とも!」


「以下略!」


 そんなわけで水月は大人気だったけど、


「あ~、わり。俺は夏と帰るから」


 ボーッと茶を飲んでいた僕を指さして水月はさらりと言ってのけた。


 茶を噴き出さなかったのは奇跡だ。


「そういえば朝のホームルームで名指ししてたね?」


「もしかしてモーホー?」


「禁断の関係?」


「薔薇の散る趣味ですか?」


 そうなるよね。


 やはし。


「好きに解釈してくれ」


 特に誤解を解くわけでもなく。


 かといって肯定もせず。


 水月は僕の方に寄ってきた。


「一緒に帰ろうぜ」


「僕にそっちの趣味は無いんだけど……」


「ああ。俺もない」


 本当かなぁ。


「だいたいお前には白雪がいるだろ?」


「…………」


 納得。


 理解していないわけではないらしい。


 かと云って妬み嫉みの感情も見受けられない。


 何と形容すべきか。


「全てを理解してなお飄々としている様な印象」


 それが僕の見る水月の雰囲気だった。


「白雪も良いよな?」


「好ましくはありませんが」


 どうやら白雪さんは水月に抵抗を覚えているようだった。


 何に起因するかはわからないけども。


「余計なことは喋んないから。仲良くしようぜ」


「約束ですよ?」


「ああ」


 そんなわけで三人で帰ることになった。


 白雪さんは男子に誘われていたけどけんもほろろ。


 水月は女子に黄色い声をかけられながら泰然として帰路についた。


「寄り道していこうぜ」


 水月が提案する。


「奢るから」


 とも。


 夕餉の食材を買い込むことも兼ねてモールへ。


 喫茶店に入って僕たちはお茶の時間とした。


 水月はコーヒー。


 僕と白雪さんは紅茶。


「それで?」


 とこれは僕。


 四方山話の最中だ。


「水月と僕は初対面だよね?」


「だな」


 至極あっさりと水月は認めた。


「なんか距離感近くないかな?」


「ま、色々あってな」


 すっ呆ける水月だった。


 それがまた様になる美少年だ。


 妬ましい。


「それで? 要件は?」


「一週間くらいで良い。お前の家に泊めてくれ」


「は?」


 さすがに予想外。


「なして? 家庭の事情で転校してきたなら住居くらい構えてるでしょ?」


「いや。あれは方便でな」


 嘘もって奴だ。


「だいたい家庭の事情で一週間から二週間しか籍を置かないとか言ってる時点で疑問に思えよ」


「…………」


 そりはそうだけど。


「それとこれとがどう繋がるのさ」


「白雪に牽制されてるから深いことは言えない」


「言える範囲で」


「あえて言うならお前の護衛」


「?」


 さも僕は面白い顔をしていたことだろう。


「言っている意味がわかんないんだけど」


「だから狙われてるんだよ。お前」


 言葉には緊張感や誠意は見られない。


「面倒くさい」


 と目で語りながら平然と水月はコーヒーを飲んでいた。


「誰に狙われているのです?」


 これは白雪さん。


 どうやら危機感を覚えているようだった。


 僕には陰謀論にしか聞こえないんだけど。


「だいたい何の意味があってその犯人Aは僕を狙うの?」


「後でな」


「…………」


 話が見えないなぁ。


 そして紅茶を飲む僕だった。

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