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転校生は魔法使い02

 さて学校。


 朝のホームルーム。


「あー……」


 と話し辛そうに溜めを打った後、


「転校生を紹介する」


 と担任は切り出した。


 ざわめくクラス。


 元より白雪さんがうちのクラスに転入してきたばかりだ。


 時期も多少逸脱している。


 そもそも転校生を受け入れるとして、二人ともに同じクラスというのがありえない。


 担任は、


「入りなさい」


 と手招きをして廊下に待機しているのだろう転校生に指示。


「あいあい」


 ひょうきんな言葉を発して転校生が現れる。


 クラスのざわめきが沈黙停滞に変わった。


 結果を先に言えば転校生は男子だ。


 そを見た女子が絶句して男子が気圧される。


 総じて言葉を封じ込める異界を、


「ただ存在する」


 というだけで再現してのける。


 それほど転校生は規格外だった。


 白いシャツに黒いパンツ。


 それだけならパッと見の当校制服に似る。


 が、黒いネクタイを締めているため喪服として完成されている。


 担任は黒板に、


「役水月」


 と書いて、


「転校生の役水月くんだ」


 そんな紹介。


 連動するように役水月さんが言葉を紡ぐ。


「お控えなすってぃ。姓は役。名は水月。趣味はさくら観賞。特技は魔法。よろしく」


 爽やかに言ってのけた。


 同時にワッと(主に女子が)騒ぎ出した。


 さきまでの絶句は嵐の前の静けさだったのだろう。


「すっごーい!」


「格好良い!」


「ふわー!」


「なんという……!」


「滅茶イケメン!」


 姦しく騒ぎ出した。


 無理もない。


 男子の方は沈黙していたけど、僕もその一人だ。


 とにかく役水月さんは美しかった。


 基本的に、


「健康な日本男児」


 と云う印象の少年だけど顔の印刷が有り得ない。


 美貌と云ってまだ足りない。


 絶世。


 不世出。


 空前絶後。


 摩訶不思議。


 日本人的な少年の雰囲気を保ったまま神懸りな美貌を並列させているのだ。


 女子が騒ぐのも必然。


 おそらくだけど三分の一から半数近くが役水月さんに一目惚れしたんじゃなかろうか?


 こればっかりは統計できないけど。


 同じく神懸りの美貌を持つ白雪さんをチラリと見やると平静としていた。


 少しホッとする。


 白雪さんが儚げな美貌なら役水月さんは快活な美貌だ。


 神懸りと言って言いすぎることのない美少年美少女の二人ではあるけど、静と動の相反する印象を受けた。


 無論だからとて優劣がつけられるわけもなく、白雪さんが男子にとっての高嶺の花だとすれば、役水月さんは女子にとっての理想の男性像だろう。


 平凡な僕でさえ男と分かっていても気圧されてしまうイケメンオーラが役水月さんから感じ取れるのだ。


 女子の衝撃たるや想像を絶する。


「静かに」


 担任が告げて混乱は一応終息をみる。


「役くんは家庭の事情で臨時的転校生として迎えられる立場だ。一週間から二週間程度しか当校に籍を置かない。それを承知していてほしい」


「短い間だがよろしくな」


 特に興味と胡乱の混じり合ったクラスの視線は気にならないのか。


 さほどでもなく気楽に役水月さん。


「さて」


 と呟くと、


「蝉川夏ってのはどれだ?」


「ふぇ?」


 僕が奇声を上げてしまう。


 まさか転校生から名指しで指名されるとは思ってみなかったからだ。


 クラスの視線は必然僕に集まる。


 プ、プレッシャーが……。


「ふむ」


 と呟きクラスを眺め、視線の集まる先を理解する。


 僕と目が合った。


「お前が蝉川……ってのも面倒だな。夏か」


「そう……ですけど……?」


「俺は役水月。よろしくな」


「はあ」


 ポカンとする。


 それから僕の右隣に座っている白雪さんを見やって、


「で、お前が今回の渦中か。名は?」


 不遜にもそう言ってのけた。


 どうやら相当に面の皮の厚い御仁らしい。


「瀬川白雪と申します」


「白雪な」


 遠慮もへったくれもなくいきなり呼び捨てる辺り擦れているのだろう。


 喪服と相まって、とても同年代と言える雰囲気ではなかった。


 外見は神懸りの美少年とはいえ中学生のソレだが、態度や言葉遣いや立ち居振る舞いからは積み重ねた年月の重みが汲み取れる。


 感覚的なものだから、


「何がどう」


 とは説明できないんだけど。

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