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転校生はメイドさん09

 放課後。


 文化祭の準備期間。


 僕はボーッと椅子に座って白雪さんを見ていた。


 雑用係ではあるものの僕に雑用を命じれば白雪さんがすっ飛んできて代行してしまうため気楽に僕に雑務を任せる人間は皆無となった。


 僕としても友達がいないため文化祭に興味が無く、


「一緒に盛り上がろう」


 というテンションにはついていけないところがあった。


 青春の敗者にとって学校イベントとは自身の孤独を噛みしめる良い機会と言えよう。


 が、


「ま、それもないか」


 今回に限って言えば例外が当てはまる。


 白雪さんだ。


 雑務係は喫茶店の準備と片づけを割り当てられているため文化祭の開催中は暇を持て余す。


 当然文化祭を見て回ろうとすれば白雪さんもついてくるだろう。


 つまり……その……一種のデート……ができるのでは?


 なぁんて思ったりして。


 少し微笑をほころばせる。


 にやけた笑いに成りそうなのを抑えたのだ。


 今の僕はぼっちじゃない!


 白雪さんが愛想をつかさない限りにおいて。


 そんなわけで、今回に限ってはちょっと期待したい。


 そんな白雪さんはというと、


「神田川さん」


 とクラスメイトの一人に声をかけていた。


 基本的な容姿に順列をつけるなら、


「白雪さん>神懸りの壁>人気アイドル>超えられない壁>クラスの女子」


 と相成る。


 何を食えば、誰から生まれれば、そんな美貌が手に入るというのか。


 本当に日本人には見えないサファイア色の髪と瞳。


 それがいっそう神懸りの美貌に花を添えている。


 一言で言って、


「可憐」


 だ。


 だからクラスの女子たちが白雪さんに話しかけられると当惑するのも無理なからぬことだった。


 今回の女子、神田川さんもそのクチだ。


 神田川さんはあか抜けてはいる。


 おそらく形貌からしてスクールカーストの上位に位置するだろう。


 白雪さんがメイド服を持って話しかける辺りメイド喫茶のウェイトレス役だろうことは想像がつくし、実際人気を集めそうでもある。


 が、それで白雪さんと比較してもしょうがないのだろうけど。


 案の定、


「な、なんでしょう……?」


 と気後れしていた。


 白雪さんは手に持ったメイド服を差し出してみせた。


「一応叩き台を作ってみました。試着してください」


 あっさりと言う。


 クラスの視線を集める。


 当たり前だ。


 特に他の衣装係は目を見開いて驚愕している。


 ハンドメイドのメイド服がクラスの喫茶店の主力だ。


 当然寸法をとってチョークで布に完成図を描き、裁断、裁縫の手順が必要となる。


 それを叩き台とはいえ一日で創り上げてしまったのだからそら驚きもされる。


「もう出来たの!?」


 神田川さんも驚いていた。


 さもあらん。


 昨日寸法を取ったばかりだ。


 僕は家で白雪さんの手際を直で見て感心していたから驚かずに済んでいると……そういうわけ。


「はい。ですから試着を」


「ああ……うん」


 気圧されてメイド服を受け取り教室から消える。


 ロッカールームか手洗いか。


 とりあえずここで予測しても特に意義が無いから止めておくけど。


 神田川さんはメイド服になって教室に戻ってきた。


「おお……!」


 とざわめく一同。


 もはや手芸屋でも食っていけそうなクオリティだった。


 が、あくまで叩き台。


「服の感触を確かめてもよろしいでしょうか?」


「いいけど……」


「では失礼して」


 白雪さんは神田川さんの体をペタペタと触る。


「ふむ」


 一通り触った後、


「動かないでくださいね」


 そう命令する。


「?」


 となるだろう。


 僕もそうだ。


 が白雪さんは答えを待たずに神田川さんの着ているメイド服にチョークを走らせて完成図を描くと、おそらく問題があったのだろう肩と腰の部分の糸をほどいて鋏を入れ、メイド服を神田川さんの体系ぴったりに合わせてみせた。


「すご……!」


「ありえなくね……!?」


「プロだ……!」


「オーマイガッ」


 驚きに終始する愛すべきクラスメイト諸氏。


 僕もだけど。


 器用なのは家事を見てれば分かるけど、それにしたって寸法から一日で服の完成を見てしまえば感嘆とするより他は無い。

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