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転校生はメイドさん08

「夏さん。あーん」


「あーん」


 教室でのこと。


 文化祭の準備期間もあって授業は午前中のみ。


 昼食を取り終えたら文化祭の準備。


 うちのクラスならメイド喫茶を盛り上げるための下準備をせねばならない。


 で、肝心の昼食が先の通り。


「夏さん。あーん」


「あーん」


 白雪に食べさせてもらっていた。


 僕自身も箸を持って自覚的に食べてはいるんだけど、白雪さんは僕に「あーん」をするのがお好みらしかった。


 憎しみで人が殺せるなら僕はとうに死んでいるだろう。


 イチャイチャラブラブ。


「瀬川さん」


 白雪さんを呼ぶ声。


 男子生徒だ。


 校則ギリギリの魔改造をしている制服の子。


「何でしょう?」


「昼食なら俺らと食わね? ああ、女子もいるし。蝉川なんか見限ってさ」


「謹んでごめんなさい」


 その間コンマ単位。


 即答だった。


「でもさぁ」


 男の子はめげなかった。


「ぶっちゃけ浮いてるぜ? 女子の友達作った方がいいって。紹介するからさぁ」


「必要ないでしょう」


 白雪さんはそっけない。


「とりあえず電話番号教えてくれない? 色々と口利きできるから」


「お断りします」


 けんもほろろ。


 無念。


 男子生徒。


「ああ、そう」


 とか何とか云いながら潰走する。


 僕は白雪さんの卵焼きを食べながら、


「人間の輪を広げなくていいの?」


 と問うてみる。


「夏さんさえ生き残ってくれるのならば仮にハルマゲドンが起きても全く問題ありませんが……」


 僕以外全員死ねと?


 空恐ろしいね。


 この子。


「はい。夏さん。あーん」


「あーん」


 タコさんウィンナーを口にねじ込まれる。


 美味し。


「でもなぁ」


「何か憂慮すべきことが?」


「僕に付き合わせるのも何だかな」


「わたくしは夏さん以外を必要としないのですけど……」


「何でそんなことになっちゃったの?」


「わたくしはアークティアですから」


 前にもそんなこと言ってたね。


 意味不明な単語だ。


「どゆこと」


「失言です。忘れてください」


 と言われても。


「はい。あーん」


「あーん」


 レンコンを口内に押し込まれる。


 さてさて、


「夏さんはわたくしが他の男の子と仲良くしていいんですか?」


「ダメ」


 即答。


「ふえ……!」


 と赤面した後、


「えへへぇ……」


 と破顔。


 白雪さんの可愛さ急上昇。


 当然それは僕以外には受け入れられることもない。


「何であんな奴と……」


「ありえなくね……」


 その通りです。


 僕自身、僕に価値を置いていない。


「夏さん。あーん」


「あーん」


 卵焼きが放り込まれる。


 美味しいんだけどさ。


 でも、どうにかしなくちゃなぁ。


 そんなことを思う。


 少なくとも白雪さんまで僕に付き合って身を落とす必要はない。


 言えば白雪さんは、


「夏さんがいれば他に要りません」


 と言ってくれるだろうけど。


 それはあまりよろしくない。


 とはいえカースト最底辺の僕にできることもない。


 結局時間の解決を待つしかないのだろうか?


 それとも僕が消えるべきか。


 まぁ八割がた冗談だけど。


「白雪さんは僕が好きだね」


「はい。えへへ。大好きです」


 ズキューン。


 と胸を射貫かれた。


 可愛いなぁ可愛いなぁ。


 蒼髪蒼目の美貌もさることながら僕に尽くしてくれる精神性も。


 白雪さんは言った。


「蝉川夏の何処が好きかと?」


 という質問に、


「外見と感性と精神性が」


 と。


 僕も同じだ。


 何より白雪さんの外見と精神性が好きで好きでしょうがない。


 感性については少し疑問だけど。


 だって……ねえ?


 こんな僕を好きでいてくれるなんて蓼食う虫も好き好きだ。


 言わないけどさ。

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