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転校生はメイドさん02

 登校中。


 色々と興味のフィルターのかかった視線を受けたけど気づかないふり。


 下駄箱で上履きに履き替えて教室へ。


 室内に入ると同時に、


「――――」


 クラスメイトたちがざわついた。


 これも知らないふり。


 自身の席に着く。


 付属中学は一クラス三十人。


 縦に五列。


 横に六つ。


 そういう風に机が並んでいる。


 僕の席は教卓の前。


 縦五列の中心で横六つの最前線。


 いわゆる外れの席。


 うちのクラスは一か月ごとに席替えを行うんだけど、抽選ではなく希望に沿って更新される。


 例えばヨーロッパで日本人や黒人が気取ったレストランに行くと弱者の指定席(手洗いに最も近い席)に案内されるという。


 僕の席もそんな弱者の指定席だった。


 教卓真ん前の最前列。


 暗黙の了解で僕は入学からこっち、この席を他人に譲ったことが無い。


 友達もいないためお喋りに精を出す労力もないためいつも通り読書に励むのだった。


 ちなみに今日読んでいるのはとあるラノベ。


 頭を使わずに読めて、なお時間潰しになる。


 そうこうして朝のホームルーム。


 担任が教卓に着くと、


「あー……」


 と唸った後、


「転校生を紹介する」


 とのたまった。


「タイミングがずれてやしませんかね?」


 そう思ったのは僕だけでは無かろう。


 転校生を紹介するなら一昨日の始業式にすべきだ。


 まぁ何かしらの事情があったのだろうと勝手に想像する。


「入りなさい」


 と担任。


「――――!」


 教室がどよめいた。


 転校生を一目見て。


 僕?


 一人構わず脱力していた。


 転校生は蒼い髪に蒼い双眸を持った神懸りの美少女だった。


 当然そんな美少女が二人も三人もいるはずがなく、


「転校生の瀬川白雪さんだ。よろしくしてやってくれ」


 担任のそんな言葉。


 ワッとクラスメイトは熱に沸いた。


 そりゃそうだろう。


 僕も初見では圧倒されました。


 アイドルよりも可愛い美貌。


 セーラー服のトップを押し上げるきょぬ~。


 スカートは腰からお尻にかけてのラインを綺麗な曲線で表現していた。


 親父くさい言い方をすれば、


「ええ体しとんのう」


 というもの。


 その上で美少女と来れば男女問わず瀬川白雪と云う名の結界に引きずり込まれるだろう。


 僕は嘆息する他ない。


 大学の教養まで修了しているということだから何だかな。


 いまさら中学生の教養を受けてどうしようというのだろう。


 いや。


 本当はわかっている。


 きっと白雪さんは僕を追ってきたのだろう。


 それくらいのことはやってのける御仁だ。


「みな仲良くするように」


「「「「「はい!」」」」」


 元気良いね君たち。


 落ちぶれ三郎の僕には見向きもしないくせに。


 見向いてほしいわけでもないけど。


「とりあえず席は窓側最後方のもう一つ後ろに即席で作ったからそこに座ってくれ」


 と担任。


「はいな」


 と言って白雪さんは教卓から降りると、


「すみません」


 と僕の右隣の生徒に声をかけた。


 男子生徒だ。


 クラスメイトに興味が無いため名前と人間性は知らないけど。


 その生徒は白雪さんに話しかけられてポーッと茹だった。


「席を交換してくれませんか?」


「は、はい!」


 コクコクと頷いて荷物を抱え窓際最後方の席へ。


 そして白雪さんはまんまと僕の隣に腰かけた。


「よろしくお願いしますね夏さん」


「…………よろしく」


 虚無感を覚えるのは容易かった。


 そして担任が二、三ほど報告をした後、ホームルームは終わった。


 担任が教室から出ていくと、クラスメイトたちは猫まっしぐら。


 主に女子。


「ねえねえ!」


「可愛いね!」


「綺麗!」


「うちらのグループ入らない!?」


 そんなこんなの波状攻撃。


 男子はそれを羨まし気に遠巻きに見ていた。


 ある種の冒しがたい雰囲気の美少女だ。


 二の足踏むのも頷ける。


 白雪さんはにこやかに女生徒と言葉を交わし、時に提案をスルリと却下し、一線引いた付き合い方をしていた。


 そのパーソナルラインに気づいているのは皮肉にも僕だけだったようだけど。


 ウェストミンスターの鐘の音。


 一限目の始まりだ。


「夏さん?」


 そこで僕に話しかけるかな普通。


「教科書が無いので見せてもらえますか?」


「いいですけど」


 そして机同士を接着させる。


 殺気と悪寒を感じた。


 きょぬ~美少女がスクールカースト最底辺に頼ればそら面白くないわな。


 キリキリと胃が痛む僕だった。

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