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175/545

メイドさんは突然に09

 そんなわけで寝ることになった。


 ピッと電子音が鳴って照明が落ちる。


 リモコンの電子音だ。


 設定は常夜灯。


 一応まっさらな闇ではない。


 そして僕と白雪さんはベッドにゴロン。


「夏さん」


 暗がりの中。


 白雪さんが僕に問うてきた。


「腕に抱き着いてもよろしいでしょうか……?」


 性的干渉をタブーとした後のことだ。


 拒絶を恐れるように憂いに満ちた言葉だった。


 この口調に僕は弱い。


「それくらいなら……」


 ついそう言ってしまう。


「光栄です。夏さん」


 憂いの声が喜色の声に変わる。


 ムニュウ。


 僕の腕に抱き着いたのだろう。


 白雪さんの豊満なソレが押し付けられた。


 誰かーっ!


 六根清浄注入棒持ってきてーっ!


「ではお休みなさいませ夏さん」


 白雪さんは目を閉じる。


「それから御用がありましたら何時でも起こしてくださって構いませんから」


 そんな風に申し添えて。


 普通メイドさんは主人より早く寝るものじゃないだろうけど、ツッコミは野暮だろう。


 良くしてもらっているのだから文句を言う筋合いでもない。


 ただ、


「…………」


 スースーと寝ている白雪さんには悪いけど、


「…………」


 寝られるわけがないだろうがっ!


 女の子と同衾だけでも致命的だ。


 思春期男子の性欲をなめるなよ!


 パンチラでさえ興奮するお年頃なんだぞ!


 そこにきょぬ~を押し付けてくる美少女とかどんな拷問だ!


「実は嫌がらせを受けているのだろうか?」


 そう疑わずにはいられない。


 もちろん違うとわかっていても、


「善意から生まれる悪行」


 というものも存在するのだ。


 白雪さんはその証明といえた。


 何といっても美少女。


「白雪」


 の名のとおりに儚げな印象の美少女だ。


 蒼い髪に蒼い瞳は、


「生まれた時の業です」


 と聞かされた。


 そんな美少女が僕のメイドになるという。


 パイオツが大きい。


 純真無垢。


 料理が上手い。


 掃除も。


 その上で僕に十億円を提供して一緒に住んでくれると云う。


 意味不明にもほどがあった。


 先述したが本来は、


「僕が白雪さんに給料を払うべき立場」


 である。


 なんでこんな不条理を白雪さんが飲み込んで、なおかつ喜悦を覚えているのかが僕にはさっぱりわからない。


 今のところ本人には言えないけども。


 その上でこの状況だ。


 ムニュウ。


 白雪さんの豊かな胸が僕の腕に押し付けられている。


 無間地獄だ。


 阿修羅道だ。


 餓鬼道にも通ずるかもしれない。


 触りたくても触れない。


 白雪さんのパイオツに。


 当人は、


「ウェルカム」


 と言ってくれてるけど、さすがにこの年で責任ある立場になるのは有り得ない。


「ではどうするか?」


 と言われて返す言葉は持っていないのだが。


 性欲の高ぶりを抑えることは出来なかった。


 しょうがないのでトイレに。


 何をしたかって?


 聞かなくてもわかるでしょ。


 それからキッチンの照明をつけて湯をわかす。


 うちはIHヒーターだ。


 電子レンジの要領で湯が沸く。


 僕はコーヒーカップにインスタントを入れて湯を注ぐ。


 クイとコーヒーを飲んで、


「はぁ」


 と溜め息。


 どうしてこんなことになったのか。


 自問するも自答は得られない。


 というか白雪さんが謎だ。


 何故そこまで僕に尽くせるのか。


 別に僕はどこぞの御曹司でも何でもない。


 両親ともにサラリーマンの中流家庭な一般人だ。


 その両親は亡くなったけど。


「同情かな?」


 そう思うけど、


「それだけであれほど奉仕できるか?」


 と反論が来る。


 どっちも僕なんだけどね。


 それにしても夜という時間が長いと僕は今更ながらに実感していた。


 これからその時間が平たく伸ばされることを思って、


「はぁ」


 と溜め息。


 コーヒーを飲む。


 カフェインでも摂取しなければやってられない。


 どうせ眠れないんだからこれくらいは許容範囲だろうと決めつけた。


 部屋に戻るのが億劫だった。


 童貞には厳しい環境だ。


 白雪さんが売女でないのは見てれば分かる。


 きっと僕だけしか見てないのだろう。


 コーヒーを一口。


「ま、後は僕次第……か」


 グイとコーヒーを飲み干してカップを洗い、僕は寝室に戻るのだった。

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