メイドさんは突然に07
もう一人の僕は大変反応してらっしゃる様子。
正直なところ恥ずかしいにもほどがある。
けれど白雪さんの言葉には何故か逆らえない何かがあった。
まぁ思春期真っ盛りで猿化しているという側面もあろうけど。
「それでは」
と白雪さん。
「洗わせてもらいますね」
決定的な一言。
そこからの十分間はあえて記さない。
十八禁だからね。
それから湯船につかる。
その間に白雪さんが髪と体を洗い終わって入浴してくる。
うちの両親はよく一緒に風呂に入っていたため浴槽は広く造られている。
三人入ってなお有り余る広さだ。
僕と白雪さんだけで入れば少し物足りなく感じたりもする。
というか白雪さんは当然のように全裸だった。
目を逸らしているため全容は把握できていないけど、胸も大きいらしい。
「らしい」
というのは先述したように目を逸らしているため確実視できないためではあるけど、
「夏さん?」
僕の隣に位置取って入浴している白雪さんが僕の腕に抱き着いて、その豊かな胸を押し付けていることに起因する。
とまれ、
「何?」
と僕は返す。
「夏さんは禁欲主義者ですか?」
「そんなつもりはないけど……」
少なくとも禁欲主義者ならこの状況は有り得ないだろう。
「なにかしらのフェティシズムが?」
「それも違う」
そうなら僕の股間は反応していない。
教師びんびん物語だ。
正直言って、
「何の拷問だ?」
と声を大にしたい。
「男の方が好きということは」
だからそうなら僕の股間は反応してない。
「抱いてくださって良いんですよ?」
甘い誘惑。
悪魔のソレだ。
「何か僕に恨みでもあるの?」
その辺りは明白にしておかねばならなかった。
「まさか」
と白雪さん。
「ただわたくしは夏さんの所有物でありますればある程度を除いて好きに扱ってもらって構わないということです」
「ある程度ってどの程度?」
「わたくしを夏さんから引き離すような命令には従えないということです」
「さっきみたいに?」
「先ほどみたいに」
ムニュウ。
白雪さんの乳房が僕の腕に押し付けられる。
「夏さんに見捨てられたらわたくしはどうすればいいのかわかりません。ですからわたくしは夏さんを必要としているのです」
「白雪さん……」
僕に抱き着いている白雪さんは震えていた。
それは決して喜びではなく、
「うぅ……」
怯えと呼ばれる感情だった。
「僕に見捨てられることが世界の終わりにも等しい」
と言っているように僕には思えた。
「白雪さんはさ」
「何でしょう?」
「何でそこまで僕にしてくれるの?」
「夏さんがご主人様だからですが?」
テンプレありがとう。
「十億円なんて大金を持っているなら自由に暮らせるはずでしょ?」
「それは……」
と言った後、白雪さんは沈黙。
どうやら言葉を選んでいる様子だ。
「もしかして夏さんにわたくしは不要でしょうか?」
予想外の反撃。
「そんなことはないけど……」
目玉焼きを焼くだけでも後片付けに無精になってしまった僕だ。
使用人が家を支えてくれるならこんな好都合なことはない。
そう言うと、
「ほ」
と白雪さんは安心した。
ムニュウ。
白雪さんの大きな胸が腕に押し付けられる。
六根清浄。
六根清浄。
なんとか情欲を捻じ伏せる。
「光栄です夏さん……っ」
にこやかに笑ったのだろうけど、それを確認する術を僕は持たない。
全裸の(それもナイスバディの)白雪さんの体を見た瞬間に猿化することは目に見えているのだ。
「夏さんは純情ですね」
くっくと白雪さんが笑う。
「それとこれとを一緒にしていいかは疑問だけどね」
僕は皮肉気にそう言うのだった。
何だかなぁ。
どうしてこうなったんだろう?




