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メイドさんは突然に04

「では」


 と茶を飲んでいたところ、


「昼食の準備をさせてもらってもよろしいでしょうか?」


「構わないよ」


 白雪さんに邪気が無いせいだろうか。


 なんとなく、


「もういいや」


 と受け入れている自分がいた。


 認識と受容がズレているとでもいうべきか。


「夏さんは苦手な食べ物はありますか?」


 うーん。


「すぐに思いつくものは無いね」


「チンジャオロースはどうでしょう?」


「好物」


「わかりました。しばしお待ちを。米を炊きますので」


 いくらでも待つよ。


 茶を飲みながらそう思った。


 そして十二時四十五分。


 ダイニングテーブルには白御飯とチンジャオロースとサラダとスープが置かれた。


「一緒に食べてほしいな」


 なんて僕の懇願を聞いて席を同じくする白雪さん。


「いただきます」


 と合掌。


 昼食と相成る。


 なんなんだろうね?


 この状況……。


 チラとダイニングからリビングを見る。


 ざっくばらんに置かれているアタッシュケース。


 その中の十億円。


 契約金と白雪さんは言った。


 ここに住み着くための代物だ、と。


 僕にしてみれば意味不明だが白雪さんは心底本音らしい。


 少なくとも贅沢さえしなければ一生食っていける金額だ。


 それをポンと僕に預ける辺り常軌を逸していると云える。


 そんな思考迷路に彷徨っている僕に、


「夏さん……」


 白雪さんが声をかけてきた。


「何?」


「昼食はどうでしょう? 不首尾があれば指摘していただきたいのですが」


「美味しいよ」


 本音だ。


 両親が作ったものより断然美味い。


 完成度がまず違う。


 その上で味付けが僕好み。


 ケチのつけようがない。


 蒼い髪が揺れる。


 蒼い瞳も揺れる。


「光栄です……!」


 どうやら本気で僕に奉仕するのが嬉しいらしい。


 改めてそう認識する。


「同い年……なんだよね?」


「ええ。そうですけど」


「なんでメイドを選んだの?」


「そういう風に生まれたからです」


「?」


 意味がわからなかった。


 そういう風に生まれた?


「あえて言うならば」


 食事の手を止めてまっすぐに僕を見つめる。


「夏さんの補助をするためにわたくしはいます」


「その根源がわからないんだけど……」


「それについては不毛な議論となるためここでは黙してもいいでしょうか?」


「別にいいんだけどね」


 僕はスープを飲んでそう答えた。

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