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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
現代における魔法の定義
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バイオレンスカウンター13

 三日後。


 時間は深夜。


 草木も眠る丑三つ時。


 水月と真理は二人だけでコンスタン研究室にいた。


 真理はカタカタとキーボードを叩きタイピングをしている。


 コンスタン教授に任された講義の資料作成である。


 そして真理と行動を共にするように厳命されている水月は付き合ってコンスタン研究室にいるのだった。


「よくやるよ。お前も」


 そんな言葉は既に言っている。


「しょうがないじゃないですか」


 そんな返答も既に聞いている。


 昼型の水月はそれ故にコーヒーを飲んで何とか睡魔と闘っているのだった。


「しかし考えれば良く出来てるよな」


「アシュレイのことですか? いつも通りだったじゃないですか」


「いやいや、お前のこと」


「私の? 何が良く出来ていると?」


「だって老けないアイドルだぜ? ある意味で一級品だと思わないか?」


「でもまぁ魔法検閲官仮説があるから長々とテレビに出ることはできないでしょうね」


「芸名変えればいけるんじゃないか?」


「ですかね……」


 肯定と否定を半々に言って、真理は話題を変える。


「アシュレイについてはどう思います?」


「才能無いな。やっぱ入力から演算の壁でぶつかるらしい。ま、珍しい事じゃないが」


「でもこの短期間で魔力の入力ができたことは誇っていいと思いますが……」


「まぁその壁を体験してない奴は軽くそう言えるよな」


「水月もその壁にぶつかったことがあるんですか?」


「うんにゃ?」


「なら一緒じゃないですか」


「まーなー。とまれ、トランス状態を維持したまま入力のイメージから演算のイメージに移行するのは一般人には生半なことじゃない。そういう意味でアシュレイには才能が無いと言えるんだよ」


「この身なば、覚え足らぬは、憂世故……ですか」


「だな」


 水月は肯定してコーヒーを一口。


「麻薬使って脳の機能を破壊して理性を綺麗さっぱり消した後に強いイメージを持つという矛盾。これをどうにかしないと……な」


「どうするんです?」


「ともあれ壁については無視する。魔力の入力が出来たんだ。魔力の演算もやろうと思えばできるはずだ」


「?」


「つまり今度は魔力の演算を中心に覚えようって話だな」


「入力無しにですか?」


「入力無しにですよ?」


「可能ですか?」


「そのためにお前がいるんじゃないか」


「もしかして私のオルフィレウスエンジンから魔力を供給してアシュレイの演算に当てるつもりですか?」


「よくわかったな」


「わからいで……ていうか壁についてはいいんですか?」


「それは演算を覚えた後の話だな。入力についても、もうちょっと融通が利いてくれればいいんだが」


「考えてないわけじゃないんですね」


「まぁ初めて俺が持つ生徒だし。俺の看板に泥を塗りたくられるのは困るってだけだ」


「アシュレイ、可愛いですもんね」


「なんだ? 嫉妬か?」


「べっつにぃ?」


「お前は事情を知ってるだろうが」


「ですけど」


 タイピングを止めないまま、


「うう」


 と真理は呻く。


 と、水月の情報端末が連絡音を鳴らした。


 何だと思う水月は情報端末を見て、


「シアン?」


 と首を傾げた。


 連絡を受諾する。


「夜遅くに申し訳ありません役先生」


「いや、気にすんな。暇を持て余していたところだから」


「今はどちらに?」


「コンスタン研究室」


「お嬢様はいらっしゃいますか?」


「いるわけねえだろ」


「ですか」


「どうした?」


「わたくしが寝ている隙にお嬢様が深夜徘徊をしたようなので」


「GPSでわからんの?」


「電源を切られているご様子」


「ってことはシアンに行く場所を知られたくないっていうことだろ。ほっとけば?」


「そういうわけにはまいりません。侍女であるわたくしにはお嬢様を守り支える使命があります。ですので役先生……お嬢様の行くところに心当たりなどありませんか?」


「心当たりはない」


「ですか」


「知ろうと思えば知れるがな」


「そうなんですか?」


「九李姉に頼めば何とか出来はするだろ」


「九李姉とは?」


「馬九李っていう魔術師のことだ」


「魔術でお嬢様の居場所を探し当てることが出来るんですか?」


「まぁダウジングよろしく魔術による探索方法はいくらかあるが……九李姉ぇの場合はその持つ聖術によるものだな」


「ともあれ今すぐコンスタン研究室に向かいます! その間に役先生にお嬢様の居場所を確認してもらってもよろしいでしょうか?」


「わーったよ。何とかしてみる」


 そして水月は通話を切った。


「厄介事ですか?」


 真理が目をキラキラさせてそう尋ねるのだった。


「不本意だがな」


 水月は肩をすくめる。

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