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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
現代における魔法の定義
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バイオレンスカウンター08

「というわけで……」


 水月は装飾剣……ジュワユーズを手に持ってコンスタン研究室に顔を出した。


 無論、コンスタン教授から受け取った物である。


「今日はこれを使って講義を行なう」


 そう言って片手でヒュンヒュンとジュワユーズを振るう水月。


「その装飾剣は何ですの?」


 アシュレイのあまりに当然たる質問だ。


「よくぞ聞いた」


 と水月はニヤリと笑う。


「これはマジックアイテムだ」


「マジックアイテム……」


「そ」


「何のマジックアイテムですか?」


 問うたのはラーラ。


「分類か? それとも固有名詞か?」


「固有名詞です」


「ジュワユーズ」


 あっさりと言った水月の言葉に、


「……っ!」


 ラーラが絶句し、


「?」


 真理が首を傾げ、


「何ですの? そのジュワユーズというのは」


 アシュレイが問いかけ、


「…………」


 シアンは黙ったままである。


「ななな……! 何でそんな物騒なモノが!」


 狼狽すること限りないラーラが問う。


「コンスタン教授に口利きしてもらって借りてきた」


 あっさりと水月が言う。


「ああ……そうですか……」


 不承不承と納得するラーラ。


「コンスタン教授……可哀想ですね……」


 実際レプリカといえどジュワユーズは貴重だ。


 右から左にとはいかない。


 つまり水月の手にジュワユーズが握られているのは、コンスタン教授の根気と努力の為した賜物なのである。


「ジュワユーズって何ですの?」


 アシュレイが問う。


「わからない」


 と。


「イギリスの魔術の家系に生まれたならカーテナくらいは知ってるだろ」


 確認する水月に、


「それはまぁ……」


 ぼんやりとアシュレイは答える。


「ジュワユーズはカーテナと同じ製法で作られたフランスの王剣だ。つまりいわゆる一つの伝説の剣だな」


 やはりあっさりと水月。


 しかしてその言葉は、


「カーテナと……同義……!」


 アシュレイに衝撃をもたらした。


「何故そんな伝説の剣がイクスカレッジに?」


 これは真理だ。


「ああ、これレプリカだから」


「レプリカ?」


「つまり贋作ってことだな」


 そう言う水月に、


「それくらいはわかりますが……」


 真理はおろおろとした。


「本物の……真作のジュワユーズがどういったマジックアイテムかは知らんが……少なくともこのレプリカのジュワユーズはチャーマーズアクチュエータだ」


「チャーマーズアクチュエータって何ですの?」


 これはアシュレイ。


「マジックアイテムには分類があるんだよ。チャーマーズアクチュエータってのは構成不変の原則を元に魔術を行なう思考回路を持ったマジックアイテムの総称だ」


「構成不変の原則……」


「つまり複雑緻密な回路を持っていればどんなモノにも意識は宿る……そんな理論だ」


「よくわかりませんの……」


「ううむ……」


 と水月は悩み、


「つまり」


 と結論付けた。


「要するに魔力を与えて起動させるマジックアイテムのことだな」


「魔力を与える……ですの?」


「そ」


 水月は簡潔に頷く。


 そして補足する。


「ほら、よくあるだろ。魔力を与えて力に変えるマジックアイテムって奴が」


「ありますの」


「その典型的な特徴を持つのがチャーマーズアクチュエータってことだな」


「…………」


「基礎だぞこんなの」


 ジト目でアシュレイを睨みつける水月に、


「わたくしの家では教えてもらえませんでしたの」


 アシュレイは言い訳をした。


「まぁそんなところだとは思っていたけどな」


 水月はもはやつっこむ気も起きなかった。


 アシュレイは魔術について狭義な教育しか受けていない。


 ソロモン七十二柱。


 それがアシュレイの全てだ。


 そしてそれがアシュレイの足を引っ張っている。


「ま、だから何?」


 というのが水月の感想だったが。


 アシュレイが無知に等しいのは今に始まったことではない。


 故にアシュレイに期待しない。


 チャーマーズアクチュエータについて知らなくとも問題はない。


 それは後々教えていけばいい事なのだから。


「と……いうわけで」


 水月は言葉を紡ぐ。


「つまり複数あるマジックアイテムの分類の一つとしてチャーマーズアクチュエータが存在して、ジュワユーズがそれに該当するんだな」

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