バイオレンスカウンター03
芋焼酎をあおってたこわさを食べる。
となりで真理がチョコレートを食べている。
「ハオマの分析……出来たか?」
そう聞く水月に、
「ま、一応はね」
ボブは答える。
そしてブランデーをあおって飲み干すと、
「マスター、アブサンを」
そう注文する。
「…………」
無言でマスターは頷き、アブサンを準備する。
「そんなモノまであるのか此処は……」
驚愕する水月に、
「だからあたしのお気に入りなの」
ボブはウィンクしながらそう言った。
「…………」
水月は無言で芋焼酎を呑む。
コトンと置かれたアブサンのグラスを持ち上げてボブがそれをキュッと呑む。
「くはぁ。いいわねこの刺激。役先生も呑む?」
「お前と間接キスなんて死んでも御免だ」
「じゃあ頼みましょうか?」
「そもそもお前みたいにガバガバ高アルコールを呑める体質じゃないんだよ……日本人っていうのは」
「あら、それは人種差別だわ」
「オカマに言われてもな……」
「オカマの何が悪いのよ」
「性別蹂躙だろ」
「ま! これだからイエローモンキーは……」
「それこそ人種差別だろ」
うんざりしながら水月は芋焼酎を呑み干す。
それから、
「マスター。パーフェクトレディ」
そう注文する。
「で? 話が大いに逸れたがどうだった? ハオマは」
「覚醒剤の亜種ね」
「アッパー系か?」
「そういうこと」
アブサンをクイと呑んでボブは続ける。
「成分そのものは覚醒剤とは別物だけど幻覚性が高くて肉体的依存症も洒落にならないレベルよ」
「…………」
水月はボブの言葉に無言で耳を傾けながらマスターからパーフェクトレディを受け取る。
クイと呑むと桃とレモンとジンの香りが口内に広がった。
ボブが言葉を続ける。
「つまり覚醒剤に薬効は似ているわね……。ただし先日も言ったけど薬毒の方がハンパじゃない……」
「皮膚が腐る……か」
水月がポツリとこぼすと、
「そう」
ボブが同意する。
「ただし幻覚性が高いのは本当よ」
「つまり……」
水月は確認する。
「魔術を覚えるには適していると?」
「本音を言えばね」
ボブは肩をすくめた。
「…………」
思うところがあるのか水月は無言でパーフェクトレディを呑む。
「これは噂だけど……」
とボブは前置きをして言う。
「この麻薬……ハオマを使って魔術を覚えた人間もいるって話」
「マジ?」
「噂よ。あくまで」
「いや、仮に噂でもマーケティング効果は半端じゃないだろう?」
「なのよねぇ」
困ったような表情を作ってボブはアブサンを呑む。
「魔術を覚えることのできない劣等生はいいカモだな」
「イクスカレッジは明日には注意を勧告するつもりらしいけど……」
「逆効果になりかねないな」
「あたしのソーマを使っても魔術を使えない劣等生がイクスカレッジにはいっぱいいるからね……」
「…………」
「きっと天にも祈る気持ちで望んでいるんでしょう」
「…………」
水月は無言でパーフェクトレディを呑んで、たこわさを食べる。
「水月……」
とこれは真理。
「なんだ?」
と水月。
「そんな悪行を放置していいんですか?」
「そんなのはスーパーヒーローの役目だろう?」
そんな水月の皮肉に、
「…………」
沈黙するより他ない真理。
「ま、真理ちゃんの言うことももっともだとは思うけどね」
ボブが言葉を紡ぐ。
「それでも相手はカモッラを背景に持つ組織よ。生半な覚悟では相手に出来ない」
「別に喧嘩売ってもいいんだがな。そうする理由が見つからないってだけで」
水月は至極あっさりと言った。
「相手は無法者よ? 相手できるの?」
「むしろ無法者程度で俺の相手が出来ると本気で思ってるのか?」
「それは……そうだけど……」
口ごもるボブだった。
「少なくとも俺たちには関係の無い案件だ。イクスカレッジが注意を勧告するならこれ以上は無いさ」
そう結論付けて水月はパーフェクトレディを呑む。
「水月がそう言うのなら私に否やはありませんが……」
真理がそう言葉を紡いで、
「んもう。淡泊なイエローモンキーだこと……!」
ボブがそう言葉を紡いだ。




