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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
現代における魔法の定義
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劣等生への講義13

 水月もまたウィスキーを呑んでチェイサーで口直しをする。


 ボブはブランデー。


「さっきあたしに……ええと……」


 困惑するボブに、


「真理だ。只野真理」


「真理ちゃんを紹介するって言ってたわね? それっていったいどういう意味よ……。役先生?」


「こいつ……」


 と言って水月はクシャクシャと真理の髪を撫でる。


「アンデッドなんだ」


「っ!」


 ボブが絶句する。


「マジで?」


「マジで」


 水月はどこまでも率直だ。


「だからお前の薬も薬効を確かめる意味では役に立つんじゃないか? 薬害の方に関しては意味を為さないが」


「つまりどんな薬でも薬効だけを抽出して適応させ……薬害は無かったことにできる存在ってこと?」


「そう捉えてもらって構わんな」


「なんでアンデッドがイクスカレッジにいるのよ。どころか役先生と行動を共にしているのよ。妬ましい」


「最後の一言が余計だ」


 とは水月は言わなかった。


「色々あってな」


 そう答える水月。


 そして、


「言ったろ? コイツの御守りを頼まれているって」


 フォローと侮辱を半々に言葉を紡ぐのだった。


 ウィスキーを呑む水月。


「真理ちゃんが暴走したら役先生がそれを止める役ってこと?」


「そういうこと」


 そして水月はチェイサーを呷る。


「アンデッドって生きた人間の脳を食べるんでしょ? 大丈夫なの?」


「だから俺が抑止力として選ばれたんだろ?」


「…………」


 無言でボブは納得する。


「それで? なんで俺を呼んだ?」


 最初の議題を盛り返す水月。


「試してもらいたい薬があるのよ」


 ボブはそう言った。


「新しい薬が出来たのか?」


 ドラッグデザイナーのボブは麻薬の研究を切磋琢磨するように行なっている。


 より薬効を強烈に。


 そしてより薬毒を無害に。


 そんな麻薬を究極的にイクスカレッジのドラッグデザイナーは目指している。


 故に新しい薬の話は水月にとっても目新しい話題でも無かった。


 水月はウィスキーを呑んでチェイサーを飲む。


 ボブもまたブランデーを呷る。


 真理はパインジュースを飲むのだった。


「あたしの作ったカクテルじゃないわよ。別の人間の作ったカクテル」


 そんなボブの言葉に、


「はぁ?」


 と水月は呆ける。


「最近イクスカレッジの裏でとある麻薬が流行してるの」


「そんなもんイクスカレッジの最南端……裏街じゃよくある話だろ」


「あたしもドラッグデザイナーだからとやかく言える筋合いじゃないんだけど……ともあれこの新薬はちょっとヤバいのよ」


「どういう風に?」


 問う水月に、


「ん」


 とボブは情報端末を取り出して水月に画面を見せた。


 そこには皮膚が腐った常習者の画像が載っていた。


「なんだ……これ……?」


 常習者の画像を見て水月が問う。


「最近出回っている麻薬に手を出した人間の末路」


 端的にボブは言った。


「こんな薬が出回ってるってのか……」


「そ」


「で、どうしろと?」


「役先生にこの薬の回収してもらいたいのよ。裏街に顔が広いでしょ?」


「不本意だがな」


 水月はウィスキーを呑む。


「で、この薬を回収してどうするんだ?」


「もちろん薬効を試すに決まってるでしょ?」


「タチ悪いなお前……」


「ドラッグデザイナーなんてそんなもんよ。これでも魔術師志望者を助けてあげてるんだから感謝してほしいくらい」


「ドラッグの名前はわかってるのか?」


「ハオマ」


 それは神話の中で神酒と呼ばれる名前である。


「ハオマ……ね。お前のソーマと対抗して造られたのか?」


「知らないわよそんなの」


 ボブはムスッとする。


 ちなみに今一番イクスカレッジに浸透している魔術補助麻薬……ソーマをデザインしたのはボブなのである。


「まぁ薬を持ってこいってんならそうするがな」


 そう言って水月はウィスキーを呑む。


「お願いね」


 ボブもブランデーを呑む。


「そんなことできるんですか水月?」


 パインジュースを飲みながら真理が問う。


「ちょっとしたクラブと繋がりがあってな。まぁしがらみなんだが……この際利用しない手はないだろう?」


 そう言って水月はウィスキーの口直しにチョコレートを食べる。


「で? 報酬は?」


 問うた水月に、


「ここの席を奢る。それでどう?」


 ボブはあっさりと答える。


「ま、そんなもんか」


 水月は不機嫌になることもなく報酬を受け入れた。

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