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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
現代における魔法の定義
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劣等生への講義03

 その言葉をラーラや真理に聞かせるわけにはいかない。


 ラーラは出来上がったパソコンを空いている机に置いて、配線を全て繋げてアシュレイの席を作り上げた。


 インベーダーによって浸食される気分を味わう水月。


 そんな気持ちを振り払って、


「…………」


 無言でイヤホンを装着する水月。


 そして水月はエロゲを起動させる。


「お兄ちゃん。このゲームは十八禁だよ。なお犯罪に……」


 とアニメ声で水月に忠告するキャラクターのソレをクリックでスキップして、水月はエロゲを開始した。


「あー!」


 とラーラが見咎める。


「またそんなことして!」


 ラーラは憤慨する。


「エロゲするくらいなら私を抱いてくださいよ!」


 見当違いの憤慨だった。


「お前にリリーちゃんの魅力が超えられるとも思えん」


 微妙に辛辣のようなそうでないような反論をする水月。


「私じゃ駄目ですか?」


 しおらしく言うラーラに、


「駄目だな」


 水月はバッサリと切り捨てる。


「でも……ツウィンズの世界では私にキスしてくれたじゃないですか!」


「アレはイベントの進行上しょうがない事だったろう」


 ピクリと真理が震える。


 それを見逃さない水月。


 心眼による結界がそれを可能とした。


「水月……」


 と真理が言う。


「私にもキスして?」


「い・や・だ」


「私じゃ駄目かな?」


「駄目だな」


 何処までもばっさりと水月は断ち切るのだった。


「それで?」


 これはラーラ。


「アシュレイはモノになりそうですか?」


「うーん……」


 水月はエロゲをオートモードにして腕を組む。


 自動で流れる文章を読みながら、


「ちょっち無理くさい」


 本音を吐露する。


「先輩をもってしても?」


「誰だろうとキツイと思うがな……」


「でも先輩は過去に二人だけ魔術師を生み出していますよ?」


「…………」


 その二人が誰なのかは言うまでもなかった。


「ラーラは素質があったし真理は自身の意識を自身で弄れるしなぁ……」


 つまりそういうことである。


「アシュレイは素質が無いと?」


「魔術に関して素質の有無は強力な壁になることはお前もわかってるだろ?」


「そうですけど……」


 他に言い様もなくラーラは言う。


「水月は難しいと思ってるの?」


 これは真理。


「そりゃそうだ」


 はっ、と水月は鼻で笑う。


「類感呪術や感染呪術を信じてる人間の固定観念を叩き潰して新しい理論を植え込めってことだからな」


 真理は怯んだ様だった。


「それは……そうね……」


 困惑しながら納得するという器用な真似を見せる。


 代わりにラーラが問うた。


「でも結局水月先輩に頼ったってことは魔術を覚えるために門を叩いたとみて間違いないんですよね?」


 水月は、


「知るかよ」


 バッサリと断ち切る。


「そもそもにしてだな……」


 水月が言う。


「俺が古典魔術師なのに現代魔術を教えろと言う方が無理難題だろう?」


「「…………」」


 ラーラと真理が沈黙する。


 水月のイヤホンからはアニメ声が聞こえてくる。


 エロゲの音声だ。


「本来古典魔術師ってのは独自の法則に則って動く。それを現代魔術にアレンジして教えろっていうんだから傲慢ここに極まれりってところだな」


「でも先輩は私や真理を導けました……」


 そんなラーラの言に、


「そのせいでコンスタン研究室の敷居を高くしたがな」


 皮肉で水月は返す。


「結局出来るんですか? それとも出来ないんですか?」


「知るかよ。当人次第だろ」


 肩をすくめる水月。


「でも講義はするんでしょう?」


「あー、それはそうだ。資料作りは……止めとくか……。面倒だし」


 水月はうんざりと言った。


「なんなら私が作りましょうか?」


 そんなラーラの提案に、


「別にいらない。その辺にある教科書で充分だろ」


 水月は却下する。


 ラーラが言った。


「私……まだアシュレイを見切ってないんですけど……」


「その内わかるさ。急ぐ必要なぞ無いだろ」


 水月は言葉だけは気楽そうに言うのだった。


 そして金髪金眼の少女を思い出す。


「あいつを一人前の魔術師に……か」


 それはうんざりとする未来だった。


 もちろんそんな面倒くささを面には出さない水月だったが。

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