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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング27

 決勝戦。


 マイクパフォーマンスが白熱していた。


「まさかまさかの大展開! 決勝に残ったのは何と両方とも女の子! 彼女らは本気で妖精王女ラーラ様と結婚するつもりなのか! かたや伝説の武器ガーヴシリーズ最強の攻撃力を持つレリガーヴの使い手……噂に違わぬ実力者……高レベルソロプレイヤー……その名もセナ! かたや確認したところレベル34という今大会最低でありながら優勝候補であったリベアを相手取りノーダメージで下した最強最弱のサムライガール……水月! 手に持った二刀はカウンターも使わずリベアの高速連撃をいなすという離れ業を見せつけてくれた! 此度もまたその閃光のような斬撃は発せられるのか!」


 あまりに水月を持ち上げるマイクパフォーマンスだった。


「別に特別なことはしてねえんだがな……」


 ガリガリと後頭部を掻きながら水月はぼやく。


「水月……」


 とこれはセナ。


「何でっしゃろ?」


「約束……覚えてる?」


「そりゃまぁ」


「正直あのリベアを倒すなんて想像もしてなかったわよ」


「別に特別なことはしてねえんだがな……」


 ぼやきをセナにもぶつける。


「これでラーラの貞操は守られたね」


「だな」


「後は私が勝ってあなたを婿にすれば全員がハッピーエンドだと思わない?」


「好きでもない奴と結婚するこっちの身にもなれ」


「私じゃ駄目?」


「ああ、お前は可愛いさ。それは認める。だがな……」


 水月は肩をすくめる。


「それでも俺の初恋には届かない」


「初恋……」


「俺の心の中にさくらが残っている間は他の誰をも愛せない……。因果な性格だとは自分でも思ってるさ。しかしな……」


「その先は聞きたくないな」


「すまん」


 素直に謝罪する。


「まぁお前が勝ったら結婚してやるよ。付き合ってわかることもあるだろうしな」


 そして保証する。


「そっか。よかった」


「ただし、負けてもらえるなんて思うなよ?」


「そっちこそ全力できてよね」


 全力を出すに値すればな、と口の中で水月は呟く。


 そんなセナと水月の会話を無視して、


「さぁワクワクの止まらない最高カード。聖杯大会決勝戦……」


 マイクパフォーマーは宣言する。


「開始!」


 同時に水月とセナが駆け出す。


 水月はまだ刀の二振りとも納刀している。


 間合いはすぐに零となる。


 セナはレリガーヴを構えて上段から振り下ろす。


 対して水月は攻撃用の刀を抜刀術の構えから繰り出す。


 二人の接触は一瞬。


 そして二人は交差する。


 セナの斧の切断は空を斬り、水月の抜刀術はセナの胴を切り裂いた。


 本来なら……基準世界でならそれだけで決着だ。


 上半身と下半身を断ち分かたれて生きていられる人間などいない。


 しかしてここはヒットポイント制を採用したゲームの世界。


 水月の斬撃はセナのヒットポイントを1だけ削り取るに過ぎなかった。


 水月のステータスポイントを全て直接攻撃力にまわせばレベル60程度の攻撃力は持つことが出来る。


 それ故にリベアを相手にしても一撃でヒットポイントを10ずつ減らすことが出来たのである。


 しかして此度のセナには1ポイントしか攻撃が利かなかった。


「私が何の対策もしていないとでも?」


 セナは勝ち誇ったように言った。


「ステータスポイントを全て直接防御力にまわしたのよ。攻撃なんてレリガーヴの補正だけで十分」


「そうかい。なら200ポイントを削るならば二百回斬ればいいだけだろ」


 水月は不敵にそう言う。


 そしてセナ目掛けて間合いを詰めると高速の斬撃を放つ。


 セナは防御無視で水月に向かって斧を振る。


 水月は防御用の日本刀でセナの斧をいなし、攻撃用の日本刀でセナを攻撃する。


 しかし、


「っ?」


 削ったセナのヒットポイントが回復した。


 アイテムを使った形跡はない。


 そもそも聖杯大会はアイテムの使用を禁じている。


 つまりそれは、


「スキルか……」


 そういうことだった。


「そ。ヒーリングっていうスキル。カウンターキャンセルに割り振っていたスキルポイントをヒーリングにまわしたの。そのおかげで十秒ごとに20ポイントヒットポイントが回復するのよ」


「……嫌がらせか」


 それが水月の正直な感想だった。


「さすがに十秒間に20ポイント以上のダメージを継続して私に与えるなんて……無理でしょ? つまりあんたに勝ち目はないのよ」


「ま、さっきまでなら無理だな」


 部分的に肯定する水月。


「高速じゃ無理みたいだな。じゃあギアをもう二つ上げるか」


「ギア?」


 セナは不審そうに問う。


「高速の上に超高速があってな……その上に神速ってのがある」


「神速……」


「そ。うちは仙人の家系だから縮地って呼んでいるんだがな。ともあれ十秒間で20ポイントの回復だとわかったのなら話は早い。それ以上の速度で攻撃を加えればいいだけだ」


 至極あっさりと水月は言った。


「さあさあ御立合い……。これより始まるは視界に映らぬ人外の世界。見なけりゃ損だが見えようもない速度の理。なべて全てはこともなし。圧倒的速度から繰り出される時間感覚の矛盾だ。では……始めようか……!」


 そして水月は疾風となった。

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