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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング26

 こうして四つのブロックの勝者が決まった。


 予選が終わった後は準決勝戦に入る。


 セナは真っ当な戦い方をして決勝へと上がった。


 そしてCブロックの勝者と水月とが準決勝戦を行なうことになった。


 Cブロックの勝者の名はリベア。


 その名を水月はセナから聞いたことがある。


 曰く、最強ギルドたるマーチラビットの団長。


 曰く、最高レベルプレイヤー。


 曰く、伝説の武器ガーヴシリーズの一つ……最強の槍リリガーヴを持つ男。


 準決勝の戦いで決闘場に現れたその男……リベアを見て水月は、


「なるほど」


 と感嘆した。


 金髪の髪は獅子のように逆立って見る者に威圧感を与える。


 ヒットポイントは450。


 レベル90を超えるプレイヤーならではのヒットポイントである。


 与えるべきダメージは225。


 ちなみに水月はステータスの全てを直接攻撃力にだけまわしているから一発でもリベアの攻撃を喰らえば失格となるだろう。


 しかして水月に緊張感は無かった。


 水月の刀に対してリベアの槍は圧倒的に相性が良い。


 つまりレベルにおいても武器においても水月はリベアに劣っているのである。


 それでも気後れなど水月は感じようもなかった。


「勝つのは自分だ」


 という自負が水月をリラックスに導いているのだ。


 そしてどこからかお馴染みのマイクパフォーマンスが響いてきて、準決勝第二試合の開始がはつらつと発せられた。


 決闘場に立っているのは水月とリベアだけ。


 そして観客の誰もがリベアの勝利を信じて疑ってなかった。


 ただ二人……ラーラとセナを除いては。


 伝説の槍リリガーヴを構えてリベアは水月目掛けて間合いを潰す。


 そして槍を放つと同時に、


「スピアーズブレイク!」


 とボイススキップを行なう。


 戦闘スキルが放たれる。


 それは破壊力を伴った槍の一撃である。


 今の水月には安穏とした槍さばきにしか映らなかった。


 最短距離を最大効率で。


 それが槍の特性だ。


 即ち《刺突》こそが槍の本質であり、何よりのアドバンテージなのだ。


 しかしてリベアの槍の突きは、


「……っ!」


 水月の刀の突きと拮抗するのだった。


 リベアが絶句するのは無理もない。


 突きに対して突きで返す。


 それも拮抗させる。


 そんな離れ業がいったいどれほどの技量を持てば可能なのか……まったくもって想像の埒外なのだから。


 突きを引いてリベアはさらにスキルを放つ。


「ファイブスピア!」


 高速の五連撃だ。


 全て刺突である。


 しかして、


「…………」


 水月は無言でその全ての刺突を日本刀でいなす。


「……っ」


 全ての刺突をいなされたリベアが驚愕している隙をついて水月は斬撃を放つ。


 高速の五連撃。


 それはリベアのヒットポイントを50だけ減らした。


 一撃につき10ポイント。


 それが水月の攻撃力とリベアの防御力の差だった。


「なんだ」


 水月はあっさりと言う。


「大したことないな」


 その言葉がリベアにとって屈辱以外になろうはずもない。


「……っ!」


 歯ぎしりをしたリベアは、


「ライトニングスレイヤー!」


 とさらに戦闘スキルを放つ。


 それは高速の十連撃を放つはずだった。


 刺突だけでなく斬撃も含めた十連撃。


 しかしてその全ては徒労に終わった。


 水月が一瞬にしてリベアの懐に飛び込んだからだ。


 槍の攻撃判定は短い刃の部分のみである。


 つまり密着するほど間合いを詰めれば槍は無用の長物となる。


 そこからは水月の独壇場だった。


 あっという間にガリガリとリベアのヒットポイントを削る。


 間合いを取ろうとリベアは引くが、


「甘い」


 水月はそれに追従する。


 決して槍の届かぬ範囲。


 密着状態を維持するのだ。


 そして無数の斬撃がリベアを襲う。


 それだけでリベアは圧倒的にヒットポイントを減らすのだった。


 一発でもダメージを与えれば水月の敗北が決まる。


 しかしてその一発が果てしなく遠い。


 少なくとも京八流を極めた水月にとって素人の槍さばきや戦闘スキルは問題にならなかった。


 そうこうして水月はリベアと決着をつけるのだった。


 リベアのヒットポイントの半分を削って勝利する水月。


 待っていたのは、


「「「「「…………」」」」」


 呆然とした観客の沈黙。


 当然だろう。


 ヒットポイントから割り出せる水月のレベルで最高レベルプレイヤーのリベアを下すなど誰が想像しえようか。


「やれやれ」


 水月はそう呟く。


 そして水月は決勝戦に進むのだった。


 そに待っているのはセナとの一騎打ち。


 しかして水月は気後れなど微塵も感じなかった。

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