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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング22

 その日の夜。


 水月とセナはラーラの許可によって城内の部屋を割り当てられ、宿に泊まらなくとも済む状況と相成った。


 百人以上のプレイヤーが妖精郷にはひしめき合っているのだ。


 今更良質な宿屋は客でいっぱいだろうという判断からである。


 水月とセナはありがたく好意を受け入れた。


 そして妖精王と王女ラーラと水月とセナとで食事をした後、当たり前だが一人一人別々に風呂に入った。


 後は寝るだけ……となった状況で、水月は城を出て夜の散歩をすることにした。


「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む……か」


 月が自身で花がさくら。


 そして暗澹たる夜を想って水月は和歌を読む。


 夜だというのに城門は開いていた。


 そもそもここはゲームの世界なので不埒な輩などいないからだろう。


 水月は城から外に出て、妖精郷を目にする。


 そして、


「ほう……」


 と感嘆とした。


 そは絶景であった。


 水月の視界に飛び込んできた情報は光の乱舞だった。


 即ち妖精郷の妖精や花が月夜に光り輝き幻想的な風景を作っているのだ。


 辺りを見回せば男と女が幻想的な風景の中で愛を語り合っていた。


 おそらく恋仲だろうカップルが十と少し。


 セナは言った。


 妖精郷はデートスポットなのだと。


 なるほど、と思わざるを得ない。


 こんなところに一人でいるのはある種のいたたまれなさを感じいる。


 少なくとも水月には。


「やれやれ」


 と呟いた後、


「何の用だ? セナ……」


 そう言った。


「ばれてたの?」


「そりゃまぁあからさまだったからな」


 水月は皮肉る。


 セナは城門の陰から姿を現す。


 そして水月の横に立った。


「いつから気づいてた?」


「最初から」


「それは……ええと……」


「お前が俺と示し合わせるように部屋を出た時から」


「なら声掛けてよぅ……」


「なんで俺がお前に気を使わなきゃならんのだ」


「これを本気で言ってるんだからなぁ」


 ガクリとセナは脱力するのだった。


「で? 話があるんだろう?」


「うん。まぁね。そのね」


「…………」


「明日、聖杯大会でしょ?」


 月の見下ろす世界の下で、暗闇とは言えない微光の氾濫の中で、セナは確認するようにそう言った。


「だな」


 水月も否定はしない。


「それでね。明日の聖杯大会……」


 言い難そうに……しかして確実に言葉にしていくセナ。


「明日の聖杯大会……私がもし優勝したら……水月……私と結婚してくれない?」


 そんな精一杯のプロポーズに、


「はぁ?」


 水月は眉をひそめる。


「お前が優勝したらラーラと結婚だろう?」


「そんなもの破棄すればいいじゃない」


「俺、この大会が終わったら基準世界に戻るつもりなんだが……」


「だから……もし私が優勝したら私とこの世界で生きて」


「何でそげなことせにゃならん」


「水月のことが……好きだから……」


 遠慮がちに……しかしてはっきりと……セナは慕情を口にした。


「いつ惚れた?」


「え?」


「だからいつ俺に惚れたんだ?」


「えと……ジョージ……だっけ……? あんたがソイツに襲われた時……」


「ああ……」


 味方のふりをして自身のリターンスフィアを狙った人間のことを苦労しながら思い出す水月だった。


「惚れた理由は?」


「格好良いから……」


「まぁ美少年であることは否定しないがな」


 何処までも遠慮のない言葉だった。


「所謂……一目惚れ……。私は……セナは……水月が……好き……!」


 顔を真っ赤にしてセナは告白する。


 水月はクシャッとセナの髪を撫でて……それからセナの頭部を掴むと自身の胸に引き寄せた。


「好意は嬉しい。ありがとな」


 そして水月は言葉を紡ぐ。


「約束してやるよ。もしお前が聖杯大会で優勝したら俺はお前と結婚してやる」


「本当……?」


「お前から言いだしたことだろ」


「それは……そうだけど……」


 困惑するセナ。


「水月は向こうの世界に帰りたいの?」


「まぁそりゃな」


「私ね……二十歳なの」


「まぁ美少女と美女の間くらいの年齢だろうなとは思っていたが……」


「ツウィンズに来たのは二年前……」


「十八歳の頃か?」


「うん……」


 セナは頷く。

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