ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング19
「もしかしてそのラーラさんもあんたみたいに化け物じみた剣の使い手なの?」
「まさか」
水月は肩をすくめる。
「どこにでもいる平凡な女の子だぞ? 魔術を使える以上、多少頭の中はヤワクチャになっちゃいるがな」
そしてくつくつと笑う。
「ふーん」
セナは興味無さ気に……しかして感情を押し殺してそう呟くのだった。
そんなこんなで二人は妖精王オベロンの住まう城へと足を運ぶのだった。
途中水月が疑問を掲げる。
「だいたいこういうイベントは何人くらい出るのが普通なんだ?」
「ステータスもスキルも装備もレベル無制限だから出るのは主にレベル50以上でしょうね。ハーフヒット制だから死なないことがわかっている故に冷やかしがいたとしても……まぁせいぜい百人ね」
「となれば一ブロック二十五人か……」
「そういうことになる」
水月の呟きにセナが頷く。
水月はふよふよと自身の周りを飛びまわる妖精たちをキャッチアンドリリースしながらさらに疑問を呈す。
「妖精って殺せるか?」
「戦闘区域ならね」
「付きまとって鬱陶しいんだが」
「そういう国だと諦めなさい。そもそもここは例外的に聖杯大会なんてイベントが開かれてるけど本質は………………その……デートスポット……だから……」
語気も弱々しくセナは言う。
「なるほどね」
水月にしてみれば困難な感情ゆえに返事は一言に留めた。
そして荘厳な城門を抜けて庭を横切り城内に入る。
城門に比べれば小さな玄関から城に入ると、
「そこまで」
と声が聞こえてきて、水月とセナの喉元にハルバートの刃が突きつけられた。
鎧を着こんで兜をかぶった人間の兵士である。
「え? 戦闘区域なのかここは?」
水月は不安というより不満を乗せてセナに確認する。
「非戦闘区域よ」
セナはキッパリと断じた。
「じゃあこの突きつけられたハルバートは?」
「ただの威嚇でしょ」
「なるほどな」
そう言うと水月はハルバートの刃の部分を握って、グイと持ち上げる。
「っ!」
それだけで兵士は強く握っていたハルバートともに中空へと身を置くことになった。
「またそういう無茶を……」
セナは呆れたらしい。
兵士はハルバートから手を離し自由落下。
そして尻もちをついてうずくまった。
「貴様!」
セナの喉元にハルバートを突きつけていたもう一人の兵士が水月にハルバートを向ける。
しかして水月は肩をすくめるのみだ。
「客あしらいはもう少し丁寧にやれ」
そんな皮肉の後に、
「それに用事があってきたんだよ俺たちは」
率直に言う。
ちなみに城の玄関には他にもプレイヤーがいて水月の行動に目を見開いていた。
「何用だ」
兵士が問う。
「妖精の王女の祝福を」
水月が答える。
兵士は、
「む……」
と呟いた後、
「通れ」
と言った。
それから水月とセナは兵士に連れられて長い廊下や豪奢な階段を上って玉座の間に辿り着いた。
ここで妖精王と王女に拝謁できるのだという。
そして王女に祝福を受ければ晴れて聖杯大会に参加できるとのことだった。
「どちらから先に祝福を受ける?」
兵士が問うと、
「二人一緒にってのは駄目なのか?」
水月が提案する。
「まぁ可能ではあろうが……くれぐれも礼を失するなよ」
「相手が礼を失しない限りな」
水月は平然と皮肉を口にする。
それについて兵士は何も口にせず、玉座の間へと続く扉を開いた。
待っていたのは人間大の妖精だった。
真っ白い髪に蓄えた白い髭の老人だ。
先にも云ったが人間大の大きさの妖精である。
その証拠に老人の背中には羽が生えている。
つまりその翁こそが妖精王オベロンだと思って間違いないのだろう。
水月とセナは玉座の間を歩いて横切り、オベロンの御前に立つと膝と拳を床につけて礼をした。
オベロンが問う。
「そちら……聖杯大会にて武を示すか?」
「然りです陛下」
「同じく」
さらにオベロンが問う。
「そは最強たらんや?」
「最強です」
「同じく」
水月とセナの言葉におくれは無い。
「そうか。では我が娘にその祝福を授かり聖杯大会に臨め」
「了解しました」
「等しく」
そう言って水月とセナが礼を終えると同時に、ギィと玉座の後方に備えられている扉が開く音がした。
おそらく祝福を授けるために王女が現れたのだろう。
膝を屈し拳を床につけたまま水月は王女の姿を確認しようと頭をあげた。
そして妖精王オベロンの娘……妖精郷の王女の姿を見て、
「っ!」
見事なまでにずっこけた。




