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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング16

「スパルタってこと?」


「生温いな。生き地獄ってことだ」


 それからセナは水月に水月の実家について根掘り葉掘り聞くのだった。


 その間にも二人の所属するオウル軍は目的地に向かって進軍する。


 太陽が天頂に昇る頃。


 軍の先頭は障害の無い平地に出た。


「じゃあ鞍馬の御大っていう人が……」


 と言葉を紡いでいたセナに、


「しっ」


 と水月は口元に人差し指を立てて黙らせる。


 水月の結界が敵軍を捉えたのだ。


「戦争が始まるな」


 そう言う水月に、


「ふーん」


 と軽くセナ。


 そして軍の大将同士が声を張り上げて……正確には拡声器を使って互いに宣戦布告をするのだった。


 次の瞬間、


「「「「「わっ!」」」」」


 と無数の声が沸き起こり、巨大な盾を壁とした先頭の騎士たちが敵軍目掛けて突っ込む。


 それも両軍同時に、だ。


 時を同じくして盾の壁の隙間からアーチャーやマジシャンがスキルを放つ。


 敵軍目掛けて強化された矢や属性様々な魔法が放たれる。


 それらは先陣をきった兵士たちを確実に殺していくのだった。


「よくやるよ」


 それが水月の率直な感想だった。


 命を捨てて特攻する。


 そんなことに水月はロマンの欠片も感じようが無かった。


 セナが補足する。


「自分の命が軽いのに他人の命が重いわけないじゃない」


「もっともだ」


 ある意味真理だ。


 水月も首肯するより他なかった。


 かくして先陣をきった兵士たちは死んだり傷ついたりして……痛みはシステム的に感じていないだろうが……進軍を止めない。


 後は混戦だった。


 剣や槍や斧を持った近接戦闘用の兵士たちが入り交じり、敵兵を切り倒さんと……刺し貫かんと……断ち切らんと……殺意をぶつける。


 矢や魔法の出番はここで無くなり、ワーワーと声を張り上げながら隣人の敵を滅ぼさんと敵を殺していく両軍の兵士。


「地獄絵図だな」


 そんな水月の皮肉は正しいだろう。


「ま、所詮イベントだからね」


 セナはあっさりとしている。


 なんとなく水月はコーヒー牛乳を思い出していた。


 片側が黒いコーヒー。


 もう片側が白い牛乳。


 白と黒とが殺意をぶつけて混じり合い、命を賭して混戦の模様を作っていき、誰かが誰かを打倒すたびに命が混在していく。


 そんな感傷すら覚えるのだった。


「さて……」


 と水月は展開している結界の中で状況を把握し、水月たちの方であるオウル軍の優勢を確認した後、


「そろそろ始めるか」


 と言った。


「本気でやる気?」


 セナは不安を隠しきれていない。


「俺自身は死ぬつもりはないから気楽なもんだ」


 サラリと水月。


「それにコスト四十の鎧を装備してるんだろ? ならお前も恐れることは何もないじゃないか」


「そうだけど……」


 納得いかないとセナは呟く。


 水月はニカッと笑って、


「ま、ともあれ目の前のことに集中しようぜ。どっちにしろ敵の大将の首級を持ち帰らなきゃいけないんだからな」


 そして水月はセナを持ち上げる。


 まるで米俵を担ぐように肩に引っ掛けるのだった。


 それからが神業だ。


 水月はセナを抱えると高く高く跳躍した。


 そして兵士たちの頭や肩を蹴って跳躍に跳躍を重ねて敵の大将へと肉薄する。


「なんだ!」


 と叫んだのはどの兵士だろうか。


 まるで木と木の間を駆け巡る猿のように……そして京八流の基礎である天翔の要領で水月は敵味方の関係なく兵士たちを足場にして跳躍を繰りかえすのだった。


 あっと言う間に水月とセナは敵の大将の元へと辿り着く。


 青空高く跳躍して重力に引かれて落下した先は敵の大将の頭上だった。


「すご……!」


 とセナは驚く。


 これが水月の作戦だったのだ。


 混戦となってカオス状態の兵士たちを足場にして一直線に敵の大将へと間合いを詰める。


 木々の間を駆け抜ける京八流の仕手にとっては兵士を足場にして一気に翔けることなど造作もない。


 高い跳躍から落下する水月とセナに向かって敵軍のアーチャーやマジシャンが攻撃を仕掛ける。


 しかしてそれは徒労に終わった。


 全ては水月の抗魔剣の日本刀によって弾かれたからだ。


 そして水月とセナは敵軍の大将に肉薄して、セナが、


「パワーインパクト!」


 とボイススキップで最強の斧レリガーヴによるスキルを発動させる。


 カウンターもへったくれもない。


 最強装備のセナの攻撃力の前に敵の大将のヒットポイントは簡単に枯渇した。


 つまり死んだのだ。


 そしてセナのアイテム欄に敵軍の首級が手に入る。


 大将を失った敵軍は敗北を受け入れる他なかった。


 こうしてソフ国軍はオウル国軍に敗北を喫するのだった。


 無論だからと云って国境が変わることはなかったのだが。


 そしてそれを成した水月とセナは歓待をもって受け入れられた。


 エースとして祭り上げられたのだ。


 水月にとっては感動を呼ぶものではなかったがセナは悪い気はしなかったらしい。


 戦争クエストが終わり……勝利の宴にて水月とセナは引っ張りだこだった。

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