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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング15

「眠い……くあ……」


 次の日。


 その早朝。


 水月とセナは戦争クエストのために編成されたオウル軍の後方にて進軍の一部と化していた。


「そもそもだな……くあ……なーんで示し合わせたように両国が軍隊引き連れて正々堂々なんだ? 戦なんだからだまし討ちや奸計の類で相手を陥れて混乱したところを皆殺しにした方がコスパ高いと思うんだが」


 そしてまた、


「くあ……」


 と欠伸をする。


「はい。缶コーヒー」


 セナは眠そうに猫背でフラフラと歩く水月に缶コーヒーを手渡した。


「なんでそんなもん持ってんだ」


 胡乱げな水月の視線に、


「こういうこともあろうかと」


 しれっとセナは言った。


「先進都市クルールの自販機か?」


「他にどこがあるのよ」


「どうやって複数買った。あの状況でお前が小銭を複数入れた記憶はないが……」


「自動引き落としに決まってるでしょ」


「小銭入れなくてもボタン押せば手に入ると?」


「そ。だからボタン連打して複数個確保しといたのよ」


「あんがと」


 そういってプルタブを引っ掛けて缶コーヒーを開けて飲む水月。


 飲み終わると同時に缶コーヒーに残された容器……缶は消失して見えなくなるのだった。


 閑話休題。


「戦争のコストパフォーマンスについて水月は触れていたけどね……。ここはゲームの世界よ? 戦争はイベントよ? 正々堂々じゃないと面白くないでしょ?」


「そんなもんかねぇ。まぁおかげで助かってはいるが……」


 水月はボリボリと頭を掻く。


「本当にあの作戦で行くつもり?」


「簡単だろ?」


「簡単すぎるわよ。道化じゃあるまいし」


「世界が舞台なら人間なんて皆道化だ」


「シェイクスピアね」


「アイツは産まれる時代を間違えた。現代に生まれればそれこそ聖書の執筆者すら超える文学者足りえただろうに」


「でもあの時代に生まれたからこそ今の文学がある。そうでしょう?」


「それも真理だな。ま、そもそもアークによって仔細が決まっているこの世界で不満を言ってもしょうがなくはあるんだが……な」


 それからもう一本缶コーヒーをセナからもらって水月は喉に通す。


 カフェインが利くまでもう少しかかった。


 つまりそれまで水月はヒュプノスの恩恵賜ることから逃れられないのだった。


 無心でコーヒーを飲みながら進軍する水月の横でセナが水月に声をかける。


「ねえ水月」


「なんだセナ」


「水月は魔術師よね?」


「何べんやるんだこのやりとり」


「水月もイクスカレッジで魔術を覚えたんでしょ? なのに何で私に魔術が使えないってわかるの?」


「ああ、誤解だ」


「誤解?」


「むしろ因果の逆転だ」


「どういう意味よ?」


「俺はイクスカレッジで魔術師になったんじゃなく魔術師だったからこそイクスカレッジに引き抜かれたんだ」


「自分自身で魔術師になったの?」


「魔術旧家に生まれたんだよ」


「魔術旧家……?」


 ポカンとするセナ。


「わかってるよ」


 と水月は言う。


 缶コーヒーを飲みながら。


「つまり魔術師を輩出する家に生まれついたんだ」


「魔術師を輩出……って魔術って血統で決まるの?」


「ある意味な」


 厳密には違うが水月は否定しなかった。


「役行者って知ってるか?」


「知りません」


「日本の魔術師の中では結構な知名度があるんだが……まぁ魔法検閲官仮説があるから知らなくても当然か。そうでなくともマイナーだしな」


 水月は、


「やれやれ」


 とジェスチャーで表現する。


 そしてクイと缶コーヒーを傾ける。


「その役行者がどうしたの?」


「俺はその直系なんだよ」


「役行者の子孫ってこと?」


「そういうこと」


 眠そうに細めた目で肯定して水月はコーヒーを飲む。


「修験道って言ってわかるか?」


「山伏の……宗教……よね……?」


「正解」


 くつくつと水月は笑う。


「役行者は修験道の開祖だ。山登りオタクだよ。で、神秘的存在でもある。俗世に興味を持ってないから害はないがな」


「その役行者……? その人の子孫だから魔術を使えるってこと?」


「そんなところだな」


 そう言って水月は二本目の缶コーヒーを飲みほした。


「幼いころから魔術を習っていたの?」


「有体に言えばな」


「だから魔術師……」


「そういうこと」


「じゃあ水月の実家に行けば私も魔術覚えられる?」


「止めとけ」


「何でよ?」


「地獄を見るぞ」


「そう……なの?」


「そうなの」


 コクリと水月は頷く。

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