ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング13
そして商都ヤマト。
その武器屋にてコスト20の日本刀の抗魔剣を買う水月。
それから防具屋でコスト2の鎧を買う。
水月は装備を整理する。
コスト10とコスト20の日本刀の抗魔剣を二刀流で装備して、コスト2の鎧を身につけるのだった。
無論、装飾装備によって着物姿であることには変わりないのだが。
「どういうつもりよ?」
団子屋のテラス席にて抹茶を飲みながらセナが問う。
「どういう……とは?」
水月も抹茶を飲みながら問い返す。
「戦争イベントなんて命を消費するだけよ。私みたいに高レベルプレイヤーならともかく……あんたみたいな低レベルプレイヤーには死亡フラグだってことくらいわからないなんて言わないわよね?」
「だから装備を防御にまわしているじゃないか」
「コスト32程度を防御にまわしてなんとかなると思ってんの?」
セナの皮肉に、
「まぁステータスも防御にまわすし」
水月は淡々と告げた。
そして水月はメニューを呼び出して……現れたイメージコンソールを指でタクトの様に振りながら操作する。
「ステータスを防御にまわすの?」
「俺の現在のレベルは32。ステータスポイントは160。うち直接防御力を80……魔法防御力を80にまわせばなんとかなるだろう?」
「もしかして特攻する気?」
セナの言は当然であった。
ステータスや装備を防御にまわすということは……つまり敵軍のアーチャーやマジシャンの攻撃に対処する他に無いからだ。
さらに言えば、敵軍の大将首を得るには混戦になる前に決着をつけねばならないという原則がある。
「たしかに……それだけ防御にまわせば死ぬ確率は減るわね」
納得するセナに、
「だろう?」
水月はニヤリと笑う。
「でも攻撃力を疎かにするなら大将首はとれないわよ?」
「ああ、大丈夫。大将首をとるのはセナ……お前だから」
「ちょっと待って。いくら私でも戦争イベントで傍若無人に振る舞うのは不可能よ?」
「それについてはこっちに作戦があるから大丈夫だ」
確固たる意志を以て言う水月だった。
「何よ作戦って?」
「――――」
水月は作戦の概要を説明する。
セナは驚愕するばかりである。
「そんなこと……可能なの?」
「女の子、羽より塵より、軽井沢……ってな」
「そんな川柳聞いたことないわよ」
「とまれ、それが可能なんだから乗らないのは損だろう?」
「そりゃそうだけど……」
不満そうにセナ。
「それで?」
と水月が話題を転換する。
「ソフ国とオウル国って何だ?」
「大陸マップ、水月と共有」
セナはそうボイススキップを行なって水月と大陸のマップを共有する。
四国に似た四国の広さを持ったツウィンズの大陸が目に入る。
そしてセナが言う。
「この大陸を長方形と捉えたとして……三つの勢力……つまり国家が互いに争い合っているのよ」
そしてセナはマップのウィンドウに指で操作をする。
「東からアイン国、ソフ国、オウル国の三つの国が互いに争い合ってるの」
トリコロールに区分される大陸の三つの国々。
長方形の大陸を縦に三分割する形で三分の一ずつ三国が面積を取っていた。
「アイン・ソフ・オウル……無限光か」
「まぇネーミングはソレが元ネタでしょうね」
セナは肩をすくめる。
「で、ソフ国とオウル国の戦争イベントに出ろと」
「そういう事ね」
「どっちの国が有利だ?」
「オウル国ね」
断言された。
「ソフ国はアイン国とオウル国の両方を相手取らないといけないから兵力を分散させなきゃいけないのよ」
「ふうん」
水月は納得とは言い難い納得をする。
「じゃあオウル国に加担するか」
そんな水月の言に、
「本当にその作戦でやるつもり?」
セナは反論してみせた。
「……ふむ」
と呟いた後、
「不満か?」
と水月は問うた。
「そりゃそうよ」
セナは不安を隠さない。
「そもそも作戦というには大雑把すぎるわよ」
そう言って抹茶を飲むセナに、水月はケラケラと笑う。
そしてみたらし団子を食べながら、
「まぁ何とかなるだろうさ」
楽観的に言うのだった。
「あんたが何を考えているのか……時折わかんなくなるわね……」
「単純に大将の首級をとるならこれが一番だろ?」
「本当に可能なの?」
「余裕だ」
水月は簡単に請け負う。
「問題は……お前が大将首をとれるかどうかだな」
「本当にその作戦が成功するなら可能よ」
「なら何の問題もないじゃないか」
「そう割り切ることが出来ればいいんだけどね……」
セナは疲れたように言った。




