ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング12
クリスタルドラゴンの鱗をもってアドバイザーの元を訪れた水月とセナは、
「ふむ。受け取った」
とアドバイザーが言うようにクリスタルドラゴンの鱗をアドバイザーに渡した。
「で?」
「ふむ……では言おう。ラーラ=ヴェルミチェッリはまだこの世界にいる」
「そうか……」
複雑な気分で納得する水月。
「ラーラは何処にいる?」
「それは契約外の情報だ。教えられん」
「はぁ?」
「おんしが聞いてきたのは『ラーラがこの世界にまだいるかどうか』だ。それには答えた。それ以上のことは教えられん」
「なぁセナ……」
「何よ?」
「こいつ殺していいか?」
「無理よ」
「戦闘区域まで引っ張っていって殺すことは出来んのか?」
「戦闘区域と非戦闘区域の行き来は当人の許可が無ければ不可能よ」
「……ちっ」
物騒な舌打ちをする水月だった。
そんな水月を放っておいてセナがアドバイザーに問う。
「ではラーラさんの居場所を教えなさい。どこで水月とラーラさんは出会うの?」
「教えるには条件がある」
「いいからクエストを提示しなさいよ」
「ソフ国とオウル国が明日国境で戦争を起こす。ソフ国とオウル国のどちらに所属してもいい故……その戦争に参加して敵の大将の首級を持ってこい。それが条件だ」
そして水月とセナの視界にクエストを受けるかどうかのウィンドウがポップする。
「馬鹿じゃないの!」
セナが激昂した。
「水月を殺すつもり!?」
「そのくらいの覚悟が無ければラーラと会わせる助言は出来ん。なんなら断ってもいいんだ。この広い大陸の中から一人を探し当てるという気概があるのならばな」
もっともなアドバイザーの言葉に、
「っ!」
言葉を返せないセナ。
「ちょっと待て」
これは水月。
「待たん」
「待て。戦争って何だ?」
「一種のイベントよ」
説明してくれたのはアドバイザーではなくセナだった。
「イベント?」
「そ。そしてプレイヤーが多数参加するからお祭りみたいに活気あるものになるわね」
「ハーフヒット制?」
「オールヒット制に決まってるじゃない」
「ちょっと待て」
「待たないわよ」
「待て。敵軍の大将の首級をあげろってことは人を殺せってことだろう? 殺人そのものに抵抗はないがそんな感覚がまかり通るのか?」
「どうせノンプレよ」
「この世界ではプレイヤーとノンプレの区別が薄くなると言ったのはお前じゃないか」
「だから同時に命の価値も薄くなるのよ。どうせ殺してもノンプレだろう。そんな言い訳を盾にしてプレイヤーもノンプレも殺し合いを行なう。あんたのリターンスフィアを狙ったジョージだってその通りだったでしょ?」
「…………」
沈思黙考する水月。
「とりあえずこのクエストは断りましょう。正直戦争イベントに水月を連れていったら殺されるだけだわ。割に合わないにもほどがある。他のアドバイザーを当たってみましょう」
「単純な興味だがな」
「何よ?」
「戦争の大まかな流れを教えてくれないか? 場合によっては単純に済むかもしれん」
「まさかこのクエスト……受けるつもり?」
「それはお前から情報を聞いてから決める」
そんな水月とセナの視界にはクエスト受諾のウィンドウが浮かんだままである。
「戦争の流れ……ね。まぁいいけど。先頭に立つのは巨大な盾で武装したプレイヤーの集団になるわね。で、その盾の壁を縫ってアーチャーやマジシャンが相手の軍勢にスキルを放つ。それが戦争のだいたいの初撃よ。そして生き残った先頭の盾装備のソードマン同士が接触して混戦に入るとカオスって感じ。アーチャーやマジシャンの出番はそこで無くなるわね。まぁ援護くらいはするだろうけどソードマン同士が接触するとそこからは本当に混戦になるから」
「ふむ……」
と呟いた後、
「大将のヒットポイントは?」
水月は問う。
「は?」
「だから大将のヒットポイントはどれくらいだ? ボスモンスター並にヒットポイントがあるのか? レベル80のセナでさえ倒すのに十分くらいかかるとか」
「それは無いわよ。大将もノンプレ……プレイヤーキャラだからヒットポイントは私たちと同じ。どう見積もっても四百を超えることはないわね」
「つまりボスモンスターみたいに膨大なヒットポイントは持っていないと」
「そういうことね」
首肯した後、
「ちょっと水月」
セナは、
「ありえない」
という表情をする。
そんなセナを放っておいて、
「くけ、くけけ、なるほどな」
怪しげに水月は笑う。
最悪の想像がセナを襲う。
「まさかこのクエスト受ける気?」
「ああ、そのまさかだ」
そう言って水月はクエストを受諾するのだった。
「ちょ! ああ……もう! あんた死にたいの!?」
不満をぶちまけるセナに、
「大丈夫だ。勝算はある」
水月は軽々しくそう言った。




