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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング10

 そうこうして水月とセナの二人は宝石洞窟の入り口を視界に捉えた。


 そこで、


「なんじゃありゃ?」


 水月が疑問を呈す。


 明らかに「ダンジョンの入り口ですよ」と言わんばかりのゴツゴツした岩の空洞にて、縦隊をくんで多数のプレイヤーが並んでいるのだった。


「なぁセナ……」


「何よ」


「あいつら何してんだ?」


 水月は宝石洞窟の入り口に並んでいるプレイヤーたちを指差すのだった。


 ちなみに宝石洞窟の入り口に向かって一歩一歩と水月たちは近づいていく。


「狩り待ちね」


「狩り待ち?」


「そ。宝石洞窟にポップするモンスターや宝箱は中確率で何かしらの宝石が手に入るの。だからレベル20から30くらいのプレイヤーにとって宝石洞窟での狩りや攻略は資金源になるって寸法」


「それで縦隊くんで並ぶこととどう繋がるんだよ?」


「要するに時間を区切ってモンスター狩りに順番をつけてるのよ。そうでもしないとダンジョン内がカオスになるでしょ? 喧嘩で済むならそれもいいけどここでは……ツウィンズでは実際に人が死ぬんだし」


「ちなみに宝石ってどれくらいで売れるんだ?」


「十万から五十万ってところね」


「お前と行動してるとはした金に聞こえるんだが気のせいか?」


「実際はした金よ。一日で一億稼ぐダンジョンを私は知ってるしね。まぁレベル80を超えないと中々厳しいダンジョンなんだけど……」


 閑話休題。


「で? 俺たちもあの縦隊に並ばんといかんのか?」


「大丈夫でしょ」


 あっさりと言うセナに胡乱げな瞳で見つめる水月。


 そんな会話をしている間にも水月とセナは宝石洞窟の入り口に着いた。


 同時に、


「レリガーヴのセナ様だ……」


「なんでこんなところに……」


「もう一人の和服美少女は誰だ……?」


「着物に日本刀って……可愛くね?」


 そんな呟きが水月とセナにふりまかれる。


 女装しているだけの水月が素直に美少女とられることに対して水月自身は大いに不本意だったが否定してまわるのも面倒くさく、日本刀の柄頭を指でチョンチョンといらだたしげに叩くことで気を静める。


 その間にもセナが縦隊の先頭のプレイヤーに二、三言葉をかけて、それから、


「いくわよ水月」


 遠慮なく言って宝石洞窟に入っていく。


 水月は邪な男どもの視線から逃れるようにセナの後を追う。


 宝石洞窟の内部は当然といえば当然だが……洞窟というには理路整然としたダンジョンだった。


 道とフロアとがあってフロアではモンスターや宝箱がポップする。


 ダンジョンゲームを実際に作ったならこうなるだろうと云う構造なのだった。


 ただし天井や側面の壁には水晶のような宝石が針のように突き出しており、まさに宝石洞窟の名の通りのダンジョンと言えた。


 そして水月とセナは武器も構えずに歩く。


 理由は簡単である。


 先に宝石洞窟内に入っていたプレイヤーが駆逐してくれるからである。


「それでセナ……」


「何よ?」


「何で俺たちはあっさりと洞窟に入れたんだ? てっきり何時間も待つものだとばかり思ってたところだったんだが……」


「私たちの目的がこのダンジョンのボス……クリスタルドラゴンだからよ」


「?」


「クリスタルドラゴンのレベルは?」


「50だな」


「さっきまで入り口に並んでいたプレイヤー……あるいはこのダンジョン内で遭遇するプレイヤーがレベル50のクリスタルドラゴンに喧嘩を売ると思う?」


「無茶だな。なるほど。つまり俺たちがボスに用がある以上、雑魚モンスターに興味が無いから通してもらえたってことか」


「そういうこと」


 セナは悪戯っぽく笑う。


 水月とセナはダンジョン内を踏破していく。


 邪魔する雑魚モンスターは別プレイヤーに譲るか、間に合わなければ切り捨てながら奥へ奥へと歩を進める。


 ちなみにポップするモンスターはクリスタルゴーレムやクリスタルボーンといった水晶で出来たゴーレムやスケルトンの群れだった。


「間に合わねぇなぁ」


 と水月は思うと、鞘に納めている日本刀を居合の要領で抜き放つ。


 それはクリスタルボーンを一撃で消失せしめた。


 つまり倒したのだ。


「しかしモンスターの平均レベルが30ってのは本当か? その割には俺のレベルでも一撃だぞ……」


「そりゃあんたのステータスは攻撃に特化してるからね。攻撃力だけならレベル60にも匹敵するわよ」


「すごいのか?」


「まぁ、ね。普通なら命の危険を先に心配して直接防御力や魔法防御力にステータスポイントを割くものなのよ。なのにあんたときたら防御無視の攻撃特化。まさにアホとしか言いようがないわね」


「そういう言い方はねーと思うぞ」


「事実よ」


「さいですか」


 水月は肩をすくめる。


 奥に進めば進むほどプレイヤーの数は減っていって、代わりとばかりにモンスターの数が増えていく。


 もっとも、その襲い掛かる全てのモンスターはセナの手にかかって葬られ続けていったのだが……。


 たまに水月とセナの背後にモンスターがポップすることもあったが、水月の結界の前には不意打ちのしようがない。


 結局水月の居合で消滅するのだった。


 道を歩きフロアを制覇し、最下のフロアに到達する。


 そして、


「へえ……」


 と水月が言葉を漏らした。


 ダンジョンではお馴染みの……しかして洞窟にはあり得ない……重々しい金属の扉が水月たちを出迎えてくれたからだ。

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